トピックス 「特別試験研究費税額控除制度の改正ガイドライン説明会」を開催

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2021年9月10日、製薬協産業政策委員会税制部会の主催により、会員会社の税務・法務および研究開発の実務担当者を対象とした「特別試験研究費税額控除制度の改正ガイドライン説明会」(オンライン形式)を開催しました。今回の説明会は、2021年度の税制改正の内容確認と特別試験研究費税額控除制度(オープンイノベーション型/以下、OI型)の活用促進のための情報共有を目的としたもので、32社、95名が参加しました。

はじめに

説明会では、製薬協産業政策委員会の赤名正臣委員長からの開会挨拶の後、厚生労働省医政局経済課課長補佐の宗得貴之氏より、2021年度税制改正の概要についての説明および「医薬品産業ビジョン2021(案)」の概要について紹介がありました。また、経済産業省産業技術環境局技術振興・大学連携推進課課長補佐の梶本裕城氏からは「特別試験研究費税額控除制度 改正ガイドライン(案)」について、改正ポイントの解説がありました。その後、参加各社より事前に寄せられた質問について、税制部会委員より回答および事例、意見等が紹介されました。

2021年度研究開発税制改正の解説

宗得氏からは、以下の項目に沿って2021年度税制改正の要点について解説があり、最近のOI型税制の活用状況にも触れました。また、8年ぶりの改定となる「医薬品産業ビジョン2021(案)」の概要について紹介がありました。

2021年度税制改正の要点

(1) コロナ禍において積極的に研究開発投資を維持・拡大する企業の後押し
全体の控除上限を法人税額の45%から最大50%まで引き上げ〔一般型(旧総額型)を25%→30%へ引き上げ〕
総額型を一般型に改称のうえ、特にコロナ禍の厳しい経営環境の中、売り上げを減らしながらも研究開発投資を増やしイノベーションを起こす努力を奨励する形に改定する。
(2) 研究開発費を維持・増加させるインセンティブの強化(税額控除率の見直し)
税額控除率は、研究開発費用の増加に応じてより控除を多く受けられる仕組みに改定する。
(3) 経済のデジタル化への対応
クラウドを通じてサービスを提供するソフトウェアの研究開発費を税制控除の対象とする。
(4) 試験研究費の対象拡大
技術開発が業務改善につながるものでも、その技術に係る試験研究が工学または自然科学に関する研究に該当するときは、その費用を研究開発税制の対象とする。

まとめとして、特にOI型税制の活用状況に関しては、適用金額全体では伸びているものの直近の適用企業数の伸びが鈍化傾向にあり、改めて本会の参加企業に対してさらなる活用促進をお願いしたい旨の発言がありました。

医薬品産業ビジョン2021(案)について

「医薬品産業ビジョン2021(案)」の概要について一部紹介があり、特に医薬品産業が目指すビジョンの中で「ビジョンの実現のためには、企業における投資に見合った適切な対価の回収の見込みが重要」とされていることから、投資に見合った減税にもつながる研究開発税制の活用意義についても強調されました。

特別試験研究費税額控除制度 改正ガイドライン(案)の解説

梶本氏からは、公表予定の本制度のガイドライン(案)の内容から、ガイドライン策定の方向性および今回の改正の要点について説明がありました。

ガイドラインの策定にあたって

ガイドライン策定にあたっては、制度の悪用を防ぐ視点から要件が規定されており、過度で複雑な手続きによる制度自体の活用抑制を意図するものではないこと、今後の改正の方向性としては、適用要件等を適正な内容にすることで、より活用しやすいものにしていきたいとの説明がありました。

特別試験研究費税額控除制度 改正ガイドライン(案)の要点

(1) 監査手続きの簡素化
過度な監査業務を回避すべく、監査の方法を具体化したこと(新たに確認するポイントと手続き例、サンプルチェック等)。
(2) 相手方の確認要件の緩和
企業が第三者による「監査」を受け、相手方は「監査」で作成された報告書を基に「確認」する、という手続を明確化したこと。
(3) 押印の簡素化
捺印をなくし、記名のみで手続きが完了すること。

以上のポイントを踏まえ、今回、第三者による確認書をはじめ、新たに整備された手続き書類の各種様式について紹介がありました。

事前質問への回答および会員各社からの要望・意見

本説明会の開催にあたり、事前に製薬協会員会社から本制度のガイドライン全般に関して不明または相談してみたい点、またOI型を活用するにあたり実務上で不明または相談してみたい点、困難であった事例等について事前に質問および意見を提出いただきました。当日はこれらについて税制部会の平野宏紀委員、鶴野恵委員、青柳豊委員より部会としての見解が示され、さらに宗得氏、梶本氏からも補足の説明がありました。

続いて意見交換の場では、梶本氏からOI型税制の活用が伸び悩む要因について、製薬企業側から見たインセンティブの効果や実務的課題について質問があり、藤原靖浩部会長からは、現行でもインセティブは働いているものの、契約書記載要件、相手方確認要件をはじめとした手続き要件等も含め活用を阻害するいくつかの要因がある点を紹介し、今後も課題を精査したうえで、解決に向けて当局にも相談したいとの申し入れを行いました。

最後に

製薬協の中川祥子常務理事からは、冒頭に本説明会が厚生労働省、経済産業省の協力を得て定期的に開催され、研究開発税制の利活用促進を図ってきたこと、その積み重ねがイノベーション推進力に必ずつながるものとして当会の意義を唱えられました。

また、製薬産業は研究開発税制を最も活用している産業の一つで、特にOI型税制についても製薬産業が最も利用していることから、われわれ製薬企業がさらに活用実績を作り、そこからイノベーションを生み出すことで本制度の意義を示すこと、また、実務上の課題を精査すること等の使命があると認識していると述べました。

最後に、今後もOI型税制を積極的に利活用することはもちろんのこと、その中でも特に「その他の者への委託試験研究」は製薬業界から要望したものとして、さらに活用実績を作るべく会員会社のご協力への依頼があり、本説明会は盛況のうちに終わりました。

(産業政策委員会 税制部会 岩田 克美

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