トピックス 「欧州製薬団体連合会(EFPIA)との定期会合」開催される

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日本における薬剤耐性(Antimicrobial 製薬協国際委員会の欧米部会では、欧米の政府・製薬団体と協調し国際的課題の解決を図る活動の一環として、欧州製薬団体連合会(EFPIA)、英国製薬工業協会(ABPI)、フランス製薬工業協会(LEEM)、ドイツ研究開発型製薬工業協会(vfa)との定期会合を毎年実施しております。今般、EFPIAとの定期会合が2021年5月18日にオンライン形式で開催されました。双方合わせて30名近く参加し、活発な意見交換が行われました。会合の概要を以下の通り報告させていただきます。

オンライン会合の様子

はじめに

今回の会合は製薬協が主催で、冒頭、製薬協国際委員会の村上伸夫副委員長の挨拶の後、開始されました。最初のセッションでは、双方の注目の話題として、欧州製薬団体連合会(EFPIA)からは「欧州のための製薬戦略(EU Pharmaceutical Strategy)」「Brexit」に関して焦点となる問題、「TRIPS IP Waiver」に対するEFPIAのポジション、今後の世界貿易機関(WTO)での議論のスケジュール、「デジタルヘルス」について説明がありました。その後、製薬協からは、「製薬協 政策提言2021」の要旨を紹介しました。

次のセッションではディスカッションが行われ、欧州、グローバルにかかわる共通課題に対して、EFPIAと製薬協国際委員会が今後もより連携しアドボカシー活動を実施していくことを両者で確認しました。そして、最後は製薬協の中川祥子常務理事の挨拶で閉会となりました。

欧州のための製薬戦略(EU Pharmaceutical Strategy)

Executive Director, International Affairs, EFPIA Koen Berden

EU Pharmaceutical Strategyについて、(1)COVID-19からの学び(危機対応システム)、(2)医薬品へのアクセスとaffordabilityの確保、(3)持続的なイノベーション、(4)医薬品不足の緩和と戦略的自立性の確保、の4つのポイントの説明がありました。持続可能性(サステナビリティ)の観点については、グリーンディールやグリーンエコノミーが重要であることが強調されました。

質疑応答では、「EFPIAが優先してアドボカシーに取り組んでいる課題・アジェンダはなにか」という質問があり、オーファン・小児医薬品規制を見直していくこと、インセンティブ向上や規制の改訂につなげていきたいと考えているとの回答がありました。また、欧州のための製薬戦略の中でアクセスや研究開発費等の情報開示がテーマの一つになっていますが、それらの日本企業への影響、製薬協としてどのように対応していくべきか、EFPIAからの助言等、意見交換を実施しました。

Brexit

Executive Director, International Affairs, EFPIA Koen Berden

2020年12月24日に締結された貿易協力協定(EU-UK Trade and Cooperation Agreement、TCA)は2021年5月1日から施行されており、GMP査察の相互承認協定(Mutual Recognition Agreement、MRA)や医療製品に関するワーキンググループの設立等の製薬業界にとって歓迎できる合意事項と、バッチテストのMRAや北アイルランドプロトコル等の継続課題があるとの説明がありました。

質疑応答では、継続課題として、英国製薬工業協会(ABPI)と継続して議論していることについて説明がありました。英国の欧州連合(EU)離脱(Brexit)に関して、製薬協から英国とEUにレターを送付したことは、たとえば英国とEUが世界的なポジションの中で、競争力を低下していく懸念があることを気づかせる非常に重要なものであったこと、そして継続課題について、今後も製薬協から意見や協力をいただけるとありがたいといったコメントがありました。

TRIPS IP Waiver

Executive Director, International Affairs, EFPIA Koen Berden

2020年からのCOVID-19に関連するIP Waiverに関する南アフリカ/インドの提案について、2021年5月5日の米国政府のIP Waiver支持表明、EFPIAはじめ各国製薬団体の反対表明状況等、これまでの経緯と、今後のWTOでの議論のスケジュールについて説明がありました。

質疑応答では、EFPIAは、米国政府のIP Waiver支持表明に対して、ABPI、フランス製薬工業協会(LEEM)、ドイツ研究開発型製薬工業協会(vfa)等の欧州製薬団体とともに、そのほかの業界団体とも連携していくこと、国際製薬団体連合会(IFPMA)やWTOとも連携していくことが説明されました。

デジタルヘルス

Senior Manager Digital and Data, Science Policy and Regulatory Affairs, EFPIA Aneta Tyszkiewicz

データの活用が世界的に重要視されているが、ほかの産業に比べヘルスケア産業では十分にデータ活用により価値を生み出すことができていないという課題認識が提示されました。そのうえで、EUとEFPIAが協働し、製薬産業のサプライチェーン全体をエコシステムとしてとらえ、欧州保健データスペース(EHDS)を構築し、イノベーションにつなげていくという構想を提示されました。今回はさらに、EUにおけるデータとデジタル活用基盤整備に向けた今後の具体的スケジュールの提示がありました。

質疑応答では、EUで進めているデータ活用フレームワーク、患者さんの個人データに関するEUでの議論の状況が共有されました。

「医薬品産業ビジョン2021」&「製薬協 政策提言2021」について

製薬協 国際委員会 兵頭 功 委員

製薬協からは、厚生労働省から2021年夏に公表される予定の「医薬品産業ビジョン」の概要と、これまでに製薬協の発出した政策提言の目的とその主な内容について説明しました。

続いて、製薬協の取り組みとして、「日本からワクチン・治療薬を創出するためには医薬品産業の健全な成長が不可欠であること」「国の基幹産業として位置づけられ産業政策が推進されることが必要である」ことを踏まえ、それらに向けた提言として、2020年6月に「感染症治療薬・ワクチンの創製に向けた製薬協提言」、2021年3月に「製薬協 政策提言2021」を発表していることを紹介しました。

質疑応答では、EFPIAから日本政府の『デジタル庁』の設立状況とヘルスケアへの取り組みについて質問があり、製薬協からは、デジタル庁の設立時期やデジタル改革担当大臣の平井卓也氏が公表している現時点の方針について回答しました。

ディスカッション

発表者 製薬協 国際委員会 清永 文子 委員、 八尋 勇治 委員

セッション冒頭、欧州の政府・製薬団体と協調し国際的課題の解決を図る活動を念頭に、EFPIAと製薬協国際委員会との協業・アドボカシー活動の強化についてディスカッションしました。国際委員会として協業の目的とスコープを提案し、その後、EFPIAから意見や助言があり、どのような協業が可能かについて議論が行われました。さらに両者のコンセンサスについて確認し、秋の定期会合に向けた半年間の行動計画または年間計画を策定したいことを伝えてディスカッションを開始しました。

EFPIAからは、TRIPS IP Waiverに関して、製薬協が日本政府に対してどういった働きかけをしたのか質問があり、その状況を共有しました。そのうえで、TRIPS IP Waiverについて両者で継続して協議していくこと、またヘルスケアにおけるデジタル化のベストプラクティスの共有等といった点で長期的に協力できるのでは、と回答がありました。

終わりに

今回の会合では、活発な意見交換を通して、双方の共通課題を認識することができました。今後は、両団体で連携したアドボカシー活動の実現につながるよう取り組んでまいります。

次回は2021年の秋に開催の予定です。

(国際委員会 欧米部会 欧州グループ)

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