From JPMA 会長就任にあたって
1. 製薬業界を取り巻く環境変化
現在、私たちを取り巻く環境ではさまざまな変化が急激に進行しており、製薬産業においても、市場や産業の構造、競争力の源泉、そしてビジネス活動の手段が大きく変化しています。これまでは、研究開発から販売に至るバリューチェーンすべてを1つの企業が内製化する「垂直統合型」が主流でしたが、複数の企業が各ステージを協働する「水平分業型」へと大きく変化を遂げつつあります。
製薬企業の競争力についても、サイエンス力や営業力から、独立性の高いコーポレートガバナンス、人権、ダイバーシティならびに環境問題等のSDGsへの取り組み等、多様な要素が競争力の源泉となる変化にも留意しなくてはなりません。
グローバルに多様化、高度化するヘルスケア・ニーズを充足していくために、製薬産業は今まさに転換を求められています。
2. 製薬産業基盤の構築に向けて
新型コロナウイルス感染症の拡大では、日本のワクチン開発基盤の脆弱性が明らかとなりました。将来起こり得るパンデミックへの対応のみならず、今なお存在するアンメット・メディカル・ニーズを革新的新薬の創出によって充足し、国民の命と健康を守っていくためには、日本の創薬力強化が不可欠です。
そのためには、起業家精神旺盛な人材が集い、最先端の研究を行うベンチャーが起業し、各種研究機関が集積する拠点(ライフサイエンスクラスター)を日本の中に形成すること、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進のための、日本人のビッグデータ基盤の整備、そして生み出されたイノベーションを適切に評価する薬価制度の構築が必要であり、日本の中でこの3つを核とする製薬産業基盤、すなわちヘルスケア・エコシステムを構築していくことが大切です。
革新的なイノベーションを創出し、国民の健康寿命の延伸、また日本の経済成長に貢献していくために、製薬産業は不可欠で、大切な産業であることを国民のみなさんに理解いただき、絶大なる支援を受けられるよう、全力を尽くしてまいります。また、産業を取り巻く多くのステークホルダーのみなさんと積極的に議論を交わし、日本における国際競争力のあるライフサイエンスクラスター形成、ビッグデータ基盤整備、そしてイノベーションを適切に評価する薬価制度の構築に取り組んでまいります。
(5月20日 製薬協会長記者会見より)
日本製薬工業協会(製薬協)
Japan Pharmaceutical Manufacturers Association (JPMA)
製薬協は、病院、診療所などの医療機関で使われる医療用医薬品の研究・開発を通じて世界の人々の健康と福祉の向上に貢献することをめざす、研究開発志向型の製薬会社が加盟する団体で、1968年に設立されました。
製薬協は、「患者参加型の医療の実現」に向けて、医薬品に対する理解を深めていただくための活動、ならびに製薬産業の健全な発展のための政策提言などをおこなっています。
製薬協は、国際製薬団体連合会(IFPMA)の加盟団体として世界の医療・医薬に関わる諸問題に対応し、各団体と連携を図りながら、グローバルな活動を展開しています。
新薬の開発を通じて社会への貢献をめざす 日本製薬工業協会