トピックス 「第2回 日本-ベトナム合同シンポジウム」が開催

印刷用PDF

2020年12月1日、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)およびベトナム医薬品登録局(DAV)主催で「第2回日本-ベトナム合同シンポジウム」が開催されました。製薬協およびベトナム日本医薬品同盟(JPAV)が協賛団体として運営に協力しました。本シンポジウムは両国の薬事の相互理解を深め、医薬品規制のより良き発展を目指すことを目的としています。今回「Review process」「Document assessment for GMP」「E-labeling」の3つのセッションが設けられ、規制当局からの講演がありました。

記念撮影

はじめに

第1回はベトナム・ハノイで開催されましたが、第2回となる今回はCOVID-19感染症拡大の状況を鑑み、オンライン形式による開催となりました。第1回の会場となったハノイのプルマンホテルにベトナム側講演会場を、製薬協に日本側講演会場を設置し、聴講者は原則オンライン参加で、日越同時通訳のベトナム語もしくは日本語いずれかのサイトにアクセスする形式となりました。アクセス数は日本語サイト165、ベトナム語サイト27、ベトナム側講演会場にも約20名の来場がありました。また、在ベトナム日本大使館から一等書記官の清水貴也氏が参加しました。

独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長の藤原康弘氏(PMDA国際部部長佐藤淳子氏代読)、ベトナム医薬品登録局(DAV)医薬品管理局次長のTa Manh Hung氏による開会の挨拶、記念撮影に引き続き講演が始まりました。

以下、講演の内容を記載します。

日本側講演会場

Review process

(1)Pharmaceutical Review

独立行政法人医薬品医療機器総合機構 国際部 妙圓薗 あや

PMDAの組織体制、医薬品の審査プロセス、承認に必要な資料およびeCTD(Electronic Common Technical Document)の審査プロセスの4つのポイントについて、PMDAにおける医薬品審査の説明がありました。

日本の規制当局には厚生労働省とPMDAがあります。科学的な審査やGCP(Good Clinical Practice)、GMP(Good Manufacturing Practice)調査、臨床試験等に関する相談はPMDAが担い、最終的な承認・許認可、ガイドラインの発出、PMDAの業務の監督等は厚生労働省が担っています。

承認申請から厚生労働大臣により承認されるまでの審査プロセスとして、申請受理後、PMDAの審査チームは申請資料を審査し、外部専門家との協議も踏まえて、審査報告書としてPMDAから厚生労働省に提出します。厚生労働省は薬事・食品衛生審議会の承認可否に係るアドバイスをもとに承認するか否か、最終的な判断をします。PMDAはガイドライン等をもとに審査し、また公表されているタイムラインで審査を行うよう透明性の確保に努めています。

承認申請時に添付すべき資料は定められた10の申請区分により異なり、申請者は申請前にPMDAに相談することができます。申請に添付するCTDは、医薬品規制調和国際会議(ICH)M8ガイドラインに定義された電子化仕様が求められます。PMDAの審査員は、各自のPCからeCTDにアクセスして資料を閲覧し、ターミナルサーバーを介して厚生労働省からもeCTDを閲覧することが可能です。2016年から申請データ電子システムを利用しており、審査状況、製品名、申請予定年月日、申請区分、申請者名、効能効果等の一元的な管理が可能です。また申請資料の送信、審査状況の確認、照会事項の回答の送信も可能となりました。

(2)Overview of the Registration in Vietnam

ベトナム医薬品登録局 医薬品登録課 次長 Nguyen Ngoc Anh

ベトナムの医薬品登録の概要について、以下の通り説明がありました。

2020年時点の医薬品登録総数は1万5107件(うち、輸入医薬品は3302件)です。医薬品登録有効期間は最大5年で、新薬やワクチン・生物製剤、安全性・有効性のモニタリングが必要とされるものは最大3年となります。また2019年9月より有効となった医薬品登録規定である通達32号により、登録の延長申請は、以前は登録有効期限6ヵ月前からであったが、12ヵ月前から申請可能になりました。当該通達で明記されるようになったものには、参照国のほか、Stringent Regulatory Authorities(SRA、2015年10月以前のICH加盟当局等)や、優先審査制度があります。

証明書等の行政文書の要件も、新しいものが加わりました。希少疾病用医薬品、緊急時・災害時に必要な医薬品、ベトナム国内製造のうち直近18ヵ月以内に医薬品査察協定および医薬品査察協同スキーム(PIC/S)やEU-GMPに適合した製造ラインで製造される場合、海外メーカー先発品だがベトナム国内に製造移管される場合等が優先審査の対象となります。ジェネリック医薬品でも生物学的同等性(BE)データが要求されるものがあり、今後対象を増やしていく予定です。

登録申請資料様式はASEAN-CTDまたはICH-CTDで提出可能です。審査は、技術審査官(大学や研究施設等に所属)により、ASEANの技術ガイドラインを参照して行われます。

最後に、両国間の共同研究や協力についての提案がなされました。

提案のポイント

  • 当局発行の証明書等の法的書類に関する情報共有と証明書の真正性の確認
  • 生物学的利用率(BA)/BEに関し、必要な試験や知見についての共有
  • 外国製造所に関するGMP調査結果の共有
  • 日本の医薬品の有効性および安全性(特に副作用等)に関する情報の共有
  • ベトナム企業の生薬の登録および輸出支援
  • ベトナム国内へ医薬品製造の技術移転、日本の製薬会社による投資

Document assessment for GMP

(1)Document assessment for GMP

独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医薬品品質管理部 青山 朋代

GMP調査の概要、出発物質と添加剤に関するマネジメント、証明書の発給というポイントでGMP評価の説明がありました。GMP調査の申請受理後、製品、製造所、過去の調査履歴等、申請者からの情報をもとにリスク分析をし、書面調査か実地調査か判定します。リスクの低い製造所は書面調査とすることによって、効率的な調査ができています。COVID-19禍では、Advanced desktop inspection(実地的書面調査)もあり、従来の書面調査よりもよりリスクに沿った調査です。製造方法のリスク、試験方法のリスク、製造所固有のリスク等に焦点をあてて調査します。海外製造所実地調査については、基本的に国内製造所の実地調査と手法は変わりません。実地調査の手順は、調査チームの設立、リスク抽出、計画会議、実地調査、調査内容のまとめ、判定会議による指摘事項の確定、企業から提出された改善事項の確認という流れで、調査終了が確認できたらPMDAは報告書を発出します。調査関連情報はPMDA内部のデータベースに集積されています。

次に、日本における「GMPの対象」と「GMP調査の対象」についてですが、医療用医薬品では出発物質、原薬中間体を含む原薬および製剤がGMPの対象でありGMP調査も要します。一般用医薬品および医薬部外品では出発物質、原薬中間体を含む原薬はGMPの対象であるが調査は不要、製剤はGMPの対象かつ調査も要します。添加剤については国際的な基準を参照した"voluntary"(自主的な)基準を運用しており、GMP調査は不要です。

最後に、GMP証明書の発給の流れについて説明します。申請受理後、実地調査を行い、実地調査結果を含めて問題がないことを確認し、PMDAから厚生労働省に結果を報告します。GMP証明書は厚生労働省が発給します。ここでの実地調査とは、過去2年以内に行われた当該品または当該品と同等工程と考えられる他製品の調査であり、その結果に基づいてGMP証明書が発行されます。調査は、PMDAと47都道府県で分担しており、新医薬品、生物学的製剤、放射性医薬品の製造は国内外ともにPMDAが、その他の医薬品については、国内製造所は47都道府県、海外製造所はPMDAが調査しています。

(2)GMP Assessment in Vietnam Regulation and Practice

ベトナム医薬品登録局 医薬品品質管理課 専門官 Hoang Ha Phuong

ベトナムにおけるGMP査察に関する規制と実際の状況について説明がありました。

GMP評価は2017年政令54号および2018年保健省通達35号が法的根拠となっています。国別の評価プロセスを採用しており、米国、EU、日本、オーストラリア等のSRAもしくは相互認証締結国の製造業者については各当局のGMP評価を受け入れています。評価のための提出書類は、領事認証済みのGMP証明書(もしくは製造業許可書、GMP査察報告書等)と当該製造所のサイトマスターファイル(SMF)です。それ以外の国の外国製造業者は、必要に応じて書面調査を実施します。この場合の提出書類は、GMP証明書とSMF以外にGMP査察報告書、直近3年のGMP査察結果一覧、および無菌製剤の場合は製品品質照査が必要となります。書面調査中に疑義があった場合には、DAVが実地調査を行うことがあります。国内製造業者はすべてGMP査察を行います。GMP評価結果はベトナム当局のGMPウェブサイト上に掲載します。査察チームはDAVがリーダーとなり、DAV、国立ワクチン・生物製剤管理研究所もしくは国立医薬品研究所、および地方保健当局から各1~2名で構成されます。

次にGMP査察プロセスを説明します。DAVは申請を受理し、申請資料を評価、必要であれば追加資料を申請者に要請します。書類評価完了後、査察計画を策定し、GMP査察チームが製造業者を査察します。製造業者はDAVから追加要求を受けた場合、45日以内に改善報告書を提出します。DAVは改善報告書を評価し、必要であれば追加資料要請または再度査察を実施します。DAVが総合評価し、結論を出します。査察後180日以内に改善できない場合、その査察は無効となります。査察計画の策定には、PIC/Sのリスクに基づく査察計画の策定モデルを取り入れています。

GMP評価実績として、DAVは年間70件ほどの実地査察を行っており、現時点でGMP適合認証を受けている国内工場は215施設です。海外製造業者のGMP評価は2018年から開始しており、2020年は1726件でした。2020年9月以降、国内製造所はオンラインでGMP評価申請することになりました。今後、海外製造所にもオンライン申請を広げていきたいと考えています。

E-labeling

(1)Drug Information and E-labeling in Japan

独立行政法人医薬品医療機器総合機構 国際部 古賀 大輔

日本の医薬品安全性情報とeラベリングの状況について、説明がありました。

医薬品を安全に使用していくためには、販売開始後の新しい副作用情報等を患者さん、医療従事者に適時提供していくことが重要です。日本の法律上、添付文書中の使用上の注意等の情報に変更があった場合、直ちに広く周知する必要があり、現在はインターネット等電子的な方法での情報提供も可能となっています。その一方で、法律上それぞれの製品一包装には紙形式の情報提供が義務となっていました。2019年末の法改正により、正式にeラベリング(添付文書の電子化)が導入され、これが2021年8月から有効となります。今後は医薬品包装上のQRコードを使って、インターネット等によって添付文書情報が見られるような仕組みを作っていきます。製品包装ごとにすべて紙を添付する必要はなくなり、最新情報を電子的に迅速に医療機関や患者さんに届けることが可能になると考えています。

eラベリングのメリットは、Accessibility(情報へのアクセスの容易さ)、Arrangeability(変更・アレンジの簡単さ)、Searchability(検索が容易になること)です。コンピュータ上の取り扱いに便利なXML形式を添付文書に利用することで、言葉の変換や検索が容易になります。副作用用語の辞書を用意しておくことで、専門家向けの用語を患者向け用としてわかりやすい言葉に置き換えること、また、たとえばベトナム語の副作用の辞書があれば、日本語の添付文書情報をベトナム語に変換することも可能になると思っています。

まとめ

閉会にあたり、PMDA国際業務調整役の矢花直幸氏とDAV医薬品登録課次長のNguyen Ngoc Anh氏より挨拶があり、開催への謝辞と意見交換および協力関係継続の意向が述べられました。

各セッションでは、視聴者側へ配信のみのセミナー形式ではありましたが、Q&A形式を取り入れた説明も加えられました。その中で、ベトナム当局では主要通達の改訂作業中であることや、日本当局側では添加剤のGMP証明の発給は想定していないこと等、視聴者の関心のある情報を、講演からさらに一歩踏み込んで聞くことができました。また、質問からは自国と異なる制度・規制を理解しようとする熱意も感じられました。

今後も日越両国官民のプラットフォームとしてシンポジウムが継続開催され、願わくはCOVID-19の大流行が終息して対面形式による開催がかない、互いの理解と協力がさらに深まることを期待します。

ベトナム側講演会場

(国際委員会アジア部会 ベトナムチーム リーダー 東山 昌代

このページをシェア

TOP