トピックス 「第7回 日本-タイ合同シンポジウム」開催される

印刷用PDF

2021年1月13日および14日、「第7回 日本-タイ合同シンポジウム」がThai Food and Drug Administration(タイFDA)、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の主催にて開催されました。当初、本シンポジウムは2020年4月に開催が予定されておりましたが、COVID-19 pandemicの影響を受け、開催時期を2021年1月に延期したうえで、オンラインでの開催となりました。本シンポジウムは、2018年4月にタイFDAと厚生労働省間で締結された「医薬品医療機器規制協力に関する覚書」に則り、日本とタイの薬事関係者間の相互理解を深め、両国の医薬品・医療機器規制や開発のための協力体制の基盤形成を目的としております。今回のシンポジウムでは、新薬審査および医療機器審査に関するセッションが設けられ、日本およびタイの効率的な審査のための取り組み、市販後安全対策等、両国の医薬品・医療機器の規制に関する最新の情報の共有および討論が行われました。

今回のシンポジウムはオンラインで行われることを考慮し、1月13日第1部:総合セッション、第2部:医薬品セッション、1月14日午前:医療機器セッションというプログラムで開催されました。

日本より独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)国際部長の佐藤淳子氏をはじめPMDA、厚生労働省、製薬協会員会社、一般社団法人日本医療機器産業連合会(JFMDA)加盟企業より合わせて167名、タイからはタイFDA長官のDr. Paisarn Dunkum氏をはじめタイFDA、タイ産業界から148名の合計315名が本シンポジウムに参加しました。

最初に、PMDA理事長の藤原康弘氏(事前収録)、タイFDA Secretary-GeneralのPaisarn Dunkum氏による開会の挨拶がありました。

独立行政法人医薬品医療機器総合機構
理事長 藤原 康弘 氏

タイFDA Secretary-General
Paisarn Dunkum 氏

第1部の総合セッションでは、現在の両国における医薬品・医療機器に関する規制、医薬品・医療機器産業に関する最新の状況について、第2部の医薬品セッションでは、両国の医薬品の薬事規制等に関する各々の取り組みを共有しました。本稿では、タイ側の発表を中心に紹介します。

Keynote Speech

タイFDA Secretary-General Paisarn Dunkum

タイFDAは、国の保険医療制度と経済にとって重要な機関ですが、世界レベルで認められる組織運営を行うため、5S戦略を掲げて機能強化をしています。

5S戦略

  1. 1.
    Speed:サービスの効率化、デジタルによる自動化
  2. 2.
    Safety:安全性 ヘルスリテラシーの向上、網羅的な監視制度とともに法律の執行を行う
  3. 3.
    Satisfaction:消費者の満足度を上げ、消費者を中心としたサービスの提供
  4. 4.
    Supporter:経済価値の向上、競争力を高める
  5. 5.
    Sustainability:医薬品、医療用品の安定供給

そして、一貫したサービスを提供するため、3つのステップに力を入れています。

Step 1 e-Submission
電子システム上で電子申請ができる
Step 2 e-Review
審査官が電子システム上で審査ができる
Step 3 Digital Signature
電子システム上で電子署名し、電子ライセンスを発行できる

電子申請、承認には186のプロセスがありますが、それらをすべて電子化することに成功しました。

また、タイFDAは国際協力を重要視し、力を注いできました。日本のPMDAとの協力関係は、COVID-19禍においても密接であり、実りのある関係となっています。双方はVirtual会議システムを通じて情報交換を重ねています。過去1年間のタイFDAとすべての関係者の努力により、タイFDAの取り組みが世界的に認められるようになったのです。

現在、世の中がより複雑になっていますが、世界は以前よりもつながっています。その状況の中で、タイFDAは国際協力関係の重要性、および健康医療分野における消費者保護制度を改善するメリットと貿易上のバランスを十分に認識しています。また、これらは国の経済発展にとっても重要な原動力になります。そのため、お互いの情報の共有・交換をし、このような深刻化する状況の中で一緒に前に進み、協働して制度を改善していくことは、両国の保健分野においても消費者の保護と経済発展につながり、安定した保険制度を導いています。危機から学んだことは、どのような深刻な状況でも、危機を乗り切るための大事な第一歩は「協力する」ことです。持続して成果を出し続けることは大変難しいですが、これまでの両国の取り組みや緊密な関係であれば、必ずその目標が達成できると確信しています。

Regulatory update

Pharmaceutical Regulation Updates

タイFDA Deputy Secretary-General Surachoke Tangwiwat

現在、科学技術への支援推進、患者アクセスの迅速化、市販後モニタリングの強化を進めています。また、関係機関と連携しながら製品ライフサイクルを管理しています。

COVID-19に関連して、ワクチンについてはタイ国内での開発も進めています。すでに海外で使用されている医薬品は緊急使用許可(EUA)で輸入します。一方で、海外企業からの技術移管も進めており、アストラゼネカは工場の改善段階からかかわっています。

医療機器関連規制については、ASEAN域内での調和(AMDD)を図っています。Post marketing alert systemについて2021年5月から法律が施行され、医療機器について新たに4段階にクラス分けを行います(Class 1はListing、Class 2、3はNotification、Class 4はLicense)。

Good Registration Management

Standardization of submission and review process Good Registration Practice and its Practical Action at Thai FDA

タイFDA Pharmacist, Senior Professional Level, Medicines Regulation Division Supatra Phongsri

Drug Evaluation Pathways(医薬品審査の経路)、医薬品評価プロセス、提出Dossier等について説明します。

参照薬局方は国際薬局方(IP)、米国薬局方(USP)、英国薬局方(BP)、BP(動物薬)、欧州薬局方(EP)、タイ薬局方、日本薬局方(JP)となっており、JPは2019年に追加されました。

円滑な審査のためには質の良い申請文書、タイFDAが認める構造・フォーマットで、評価に十分な品質(信頼性、品質、完全性、トレーサビリティ)が必要です。規制の要求事項の更新・見直しが行われるため、規制当局だけでなく申請する側も規制および規制の枠組みに関する理解が必要となります。

Good Registration Management(GRM)を用いたタイ承認審査制度の取り組みとして、申請前に申請者と審査チームが任意で会議をもつことができます(Pre-submission meeting)。申請者がタイFDAの必要とする情報を提供できる場合は申し込むことを勧めています。

審査は、基本的に標準業務手順書(SOP)に従って行います。規制当局の審査官のキャパシティー、機能の強化については、内部(先輩審査官が後輩審査官を指導)・外部トレーニング(TGA、WHO等)SRAへのリライアンス(abridged review)、地域の強化(調和されたASEAN Joint assessment)等のコラボレーションにも取り組んでいます。

審査の過程において、コミュニケーションは重要であり、改善・向上が必要です。コミュニケーションのミスは大きなロスにつながり、審査官と申請者のコミュニケーションが不明確であれば審査の遅延やコストがかかるリスクがあります。良いコミュニケーションを実施することが重要であり、審査機関の連携強化、明確なコミュニケーションプロセスを確立する必要があります。

Scientific consultation

Scientific consultation for efficient communication with industry Scientific consultation at Thai FDA

タイFDA Pharmacist, Practitioner Level, Medicines Regulation Division Nalinratt Dhiraouransakun

タイFDAのポリシー(Speed, Safety, Satisfaction, Supporter, Sustainability)が冒頭紹介され、今後期待されている画期的な新薬(たとえば、細胞医療や遺伝子治療、ワクチンや新薬、新しいバイオロジクス、バイオシミラー)において、申請前のScientific Advisory Systemの有効活用の重要性が述べられました。

Scientific Advisory Systemでは開発ステージいずれにおいても開発や申請、非臨床に関連することについて助言やコミュニケーションが可能です。まず用紙を提出し、タイFDAによってFace to Faceもしくは書面回答、拒否に対応が分かれます。適切な情報で正確な質問をすることがタイFDAにとってもありがたく、YES or Noで答えられるクローズドクエスチョンが望ましいです。COVID-19ワクチンや治療薬においてもこのシステムが対応されています。

Benefit / Risk management through a product lifecycle

How to manage Benefit / Risk balance of pharmaceuticals from approval review to post-marketing including risk management plan and approval condition

タイFDA Pharmacist, Professional Level, Medicines Regulation Division Wittawat Viriyabancha

これまで、タイFDAは「製品ライフサイクル全体にわたるベネフィット・リスク管理」を達成するにあたり、必要な関連規制およびインフラストラクチャの整備を行ってきました。

タイFDAは、医薬品における「科学技術開発」が重要であること、そしてそこには規制上のフレキシブルな考え方が必要であることを認識しています。適切で効率的な規制の枠組みを構築するために「レギュラトリー・サイエンス」を導入しています。とはいえ、これらの動きは、製品の品質、安全性、および有効性について妥協することを意味するわけではない点には留意が必要です。今後もほかの管轄機関とも協力して課題に取り組んでいきます。

結び

今回の「第7回 日本-タイ合同シンポジウム」は、初のオンライン開催ということもあり、Face to Faceの会議と勝手が異なる点もありましたが、産官がそれぞれの立場で積極的に意見交換できた有意義なシンポジウムとなりました。本シンポジウムを踏まえ、両国の規制調和が進み、両国の官民連携・協力により医薬品ならびに医療機器業界がますます発展し、革新的な医薬品を両国民にいち早く届けることができるようになればと考えます。

(国際委員会 アジア部会 タイチーム 堀尾 知広、米山 めぐみ

このページをシェア

TOP