トピックス 「製薬協 くすり相談対応検討会フォーラム」を開催

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製薬協くすり相談対応検討会は、2020年2月8日、野村コンファレンスプラザ日本橋(東京都中央区)において「患者さんへの情報提供のあり方を考える~次世代を見据えて~」をテーマとしたフォーラムを開催しました。当日は、会員会社のくすり相談窓口担当者、薬剤師会薬事情報センター、一般社団法人東京都病院薬剤師会ならびに保険薬局の薬剤師等の137名の参加があり、会場は満席で熱気あふれるフォーラムとなりました。

会場の様子

はじめに、製薬協くすり相談対応検討会からの事例共有として「医療関係者への情報提供について、各社の新たな取り組み事例紹介」がありました。その後、特別講演として、国立研究開発法人国立がん研究センター東病院薬剤部の望月伸夫氏から「病院薬剤師における患者さんへの次世代を見据えた情報提供のあり方」、公益社団法人日本薬剤師会理事で丸昌薬局薬剤師の堀越博一氏から「地域包括ケアシステムにおける保険薬局の役割~地域のDI室へ~」と題する講演がありました。また、招待講演として、アマゾン ウェブ サービス ジャパンの佐近康隆氏より「ヘルスケアの現在・未来に関わる先進的事例紹介」の講演がありました。最後にパネルディスカッション形式で、本フォーラムとしては初めての試みとなるスマートフォンを用いての質疑やアンケートを実施しました。

開会の挨拶

くすり相談対応検討会の板橋禎仁委員長から開会の挨拶がありました。板橋委員長は、2019年10月に完全施行となった「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」への対応やガイドラインがくすり相談に与える影響の分析を踏まえ、くすり相談対応指針の改訂に見られるような情報提供に関する体制や環境が変化する中で、「医薬品適正使用の推進」「患者参加型医療の実現」「製薬企業の信頼性向上」を目的として活動している本検討会が、いかに薬剤師の先生方と相互理解を深め、今後どのように活動していけばよいのか、という点を今回のフォーラムを契機として考えていきたいと述べました。

医療関係者への情報提供について、各社の新たな取り組み事例を紹介

くすり相談対応検討会の上條章委員が各社の新しい取り組みを紹介しました。

最初に、24時間365日いつでも情報提供が可能な「AIチャットボット」の紹介がありました。問い合わせが多い製品、あるいは期間限定的に問い合わせが増加する製品、また、情報量が多い中、より簡便に情報にたどり着けるようにするためにチャットボットの導入が進められています。導入している企業の中には、ニーズに合った情報が得られなかった場合は、電話窓口に誘導している例も見られました。

次に、医療機関からの問い合わせにタイムリーに応えるチャネルとして「リモートMSL・リモートMI」の紹介がありました。ウェブ会議システムで情報提供を行うリモートの特徴としては、タイムリーな対応だけでなく、スケジュール調整が柔軟であること、対応までの時間を短縮できること、場所を選ばずに面談が可能であること、画面の共有を活用して文献や図表等の共有も可能であること等が挙げられていました。くすり相談対応検討会参加企業への事前アンケートでは、約6割の会社がリモートを導入済み・検討中でしたが、そのほとんどがリモートMRであることを鑑みると、リモートによる情報提供は今後、積極的に推進される可能性があることが述べられました。

3番目には、ウェブ上でのキーワード検索によるFAQ提供が紹介されました。個人情報の取得のみならず、適応外使用等の情報提供に関しても同意ボタンを設ける、質問の経緯を入力する等、「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」に対応する形でのリニューアルを行った事例紹介でした。

最後は、各製薬企業が提供しているFAQ情報をウェブのポータルサイトを通じて横断的に検索できる「PhindMI」(医療用医薬品FAQ検索サービス)の紹介でした。現在PhindMIに参加しているのは6社ですが、今後拡大していきたいこと、FAQの充実と標準化、認知度の向上等が今後の戦略として紹介されました。

各社ともさまざまな取り組みを開始していますが、これらは医療関係者にとっても知りたい情報にアクセスできるまでの時間を短縮し、対人業務にもっと時間を割けること、製薬企業にとっても、より専門性の高い問い合わせに専念できるだけでなく、事業継続計画(BCP)にも有用であること等から、医療の充実や患者さん中心の医療の推進に寄与できるものであると締めくくりました。

病院薬剤師における患者さんへの次世代を見据えた情報提供のあり方

国立がん研究センター東病院薬剤部の望月伸夫氏から、自身が推進している活動について、講演がありました。

1つ目は、AI(ワトソン)を活用した多施設共有QAデータベースの紹介でした(PharMAINe)。AIを活用することで、施設・業務経験年数等を問わない回答の統一化が可能になり、教育コストの低減と回答の質の担保につながることが述べられました。現時点では、国立がん研究センターで約4000件、国立研究開発法人国立国際医療研究センターで約600件、国立研究開発法人国立循環器病研究センターで約2500件のQAが登録・登録途中です。多施設がこのデータベースを共有することで、元のデータに多様性が生まれるメリットも述べました。さらに、知りたい情報にすぐにたどり着けることで、対人業務の時間が増加するメリットも強調しました。

次に紹介されたのは、ウェブサイトを介した患者さんへの情報提供です。薬剤部のウェブサイトへのアクセス数は少なくないこと、閲覧対象者を意識したウェブサイトの作成を心がけていること等が共有されました。

最後に、患者さんからの電話相談(外来化学療法ホットライン)でのAIの導入予定に関して述べました。音声認識、キーワード抽出、患者さんへの追加質問の提案(例:熱は何度ですか?)、緊急度予測やトリアージの提案等、AIを用いたシステムを構築中とのことでした。

まとめとして、さまざまな情報発信ツールを受け手側のニーズに合わせて用意していく重要性、情報過多の状況において、情報提供にはより高度な専門性が問われる時代になってきていると締めくくりました。

地域包括ケアシステムにおける保険薬局の役割~地域のDI室へ~

日本薬剤師会理事、丸昌薬局薬剤師の堀越博一氏から、自身が薬剤師会と市内病院とで推進している活動について、講演がありました。

疑義照会の簡素化を中心に一般社団法人天王寺区薬剤師会(大阪市天王寺区)の取り組みの紹介がありました。同薬剤師会は保険薬局の薬剤師だけでなく、病院薬剤師も多く会員として所属しているのが特徴的で、天王寺区病薬連携推進協議会が作成した合意書を病院と保険薬局間で取り交わし、プロトコールに基づく薬物治療管理(Protocol Based Pharmacotherapy Management、PBPM)による疑義照会の簡素化に取り組んでいます。同地区のPBPMの特徴は、「薬剤師会⇔病院」の関係ではなく、「個々の薬局-地域5病院」でのPBPM締結であり、その取り組みは、日本薬剤師会雑誌2018年3月号に原著論文として掲載されています。この取り組みの結果、多くの病院医師から患者さんのためになっていると評価され、保険薬局側も疑義照会減少による業務負担軽減を感じ、患者さんにとっても待ち時間減少や費用負担が軽減する等、医師・薬剤師・患者さんのすべてに「三方よし」のメリットが得られています。

まとめとして、これからの保険薬局は、地域フォーミュラリー等が進展していく中で、患者さんに適切な医薬品を提供するだけでなく、医療者への適切な医療情報の提供がさらに必要となるため、各製薬企業がもつ情報を医療者とつなぐ"地域のDI室"の役割を担うべきと述べました。薬機法改正により、薬剤師業務が「対物から対人へ」と大きく転換しようとしていますが、保険薬局は医薬品(モノ)を扱っているという現実があるため、「モノからヒトへ」というよりも「モノもヒトも」が重要である、と締めくくりました。

ヘルスケアの現在・未来にかかわる先進的事例紹介

アマゾン ウェブ サービス ジャパンの佐近康隆氏から、最新技術で新たな患者体験を提供する海外事例について、講演がありました。

1つ目は、生活者・患者さんが得られる情報収集事例の紹介でした。生活者・患者さんがインターネット等から自らヘルスケア情報を得るうえでは、信頼性が担保されなければなりません。アメリカ心臓協会(American Heart Association、AHA。心肺蘇生法等のトレーニング方法をチャットボットで提供)や英国の国民保健サービス(National Health Service、NHS。ヘルスケアに関する質問をスマートスピーカーAlexaにするとNHSが提供する情報を読み上げる)といった、学会や国が信頼性の高い情報を生活者・患者さんに提供する先進サービスについて述べました。

次に、英国での健康相談について紹介がありました。バビロン・ヘルス社のいわゆる「AIドクター」は、利用者とのAIチャットボット会話、医療者とのビデオ通話、外来受診予約等をすべてウェブ遠隔システムでサービス提供しています。英国NHSも自省のサービスとして採用し、医療へのアクセスの最適化を国の施策として展開していると述べました。

最後に、服薬管理について、吸入薬の服薬ログのデジタル化を事例にメリットを紹介しました。蓄積されたログデータの分析により、服薬アドヒアランスの改善だけでなく、急性増悪の予測や正しい受診行動のリコメンド、さらには患者さんごとに個別化された介入が可能となると強調しました。

まとめとして、"ヘルステック"(ヘルスケア+テクノロジーの造語)の進化は、患者さんの治療価値の向上だけでなく、医療インフラを最適化するうえでも欠かすことはできないと締めくくりました。

Q&Aセッション

今回のフォーラムでは講演ごとに会場から質問をとらず、新しい試みとしてスマートフォンを用いたアンケートシステム"UMU"を使用しました。このセッションでは、板橋委員長、梅田忠志委員の司会のもと、演者の望月氏、堀越氏、そして製薬協医薬品情報検討部会の佐藤直子部会長、同・情報提供のあり方構築部会の串戸徳彦部会長をパネラーとして、参加者アンケートや演者への質問をリアルタイムに収集することで、会場全体に一体感のあるディスカッションが展開されました。

UMUを用いた会場全体へのアンケートの一つに、「次世代における患者さんへの情報提供のあり方として、あなたが考える有効なチャネルは?」がありました。会場の集計結果は、(1)チャットボット、(2)インターネット、(3)アプリ、が約75%を占め、新たなチャネルに対する参加者からの期待が感じとれました。

また、「患者さんから企業くすり相談へよくある質問内容は?」については、(1)服用中の症状(副作用)について、(2)治療/病気に対する不安・疑問、(3)くすりについて(飲み方、使用方法)の順であることが示され、この結果についてパネラーによるディスカッションが行われました。企業くすり相談が、(1)(2)については質問されても、医療者からその患者さんに伝えられていることとの間に齟齬が生まれれば、患者さんと医療者との信頼関係が損なわれることを危惧し、添付文書情報をベースとした応対が中心となることがパネラー間で共有されました。患者さんへの情報提供に関しては、立場(医療者、企業)による違いはあるものの、どうすれば患者さんが治療に前向きになるか、患者さんが主治医に心配事を相談できるようにいかにアドバイスするか、患者さんに企業くすり相談に相談してよかったと満足してもらえるにはどうすべきか、が今後の検討材料になることが会場全体で共有されました。

このセッションの最後に、本日の講演内容を踏まえて「今後、次世代を見据えた患者さんへの情報提供のあり方について、新たな取り組みを検討したい、あるいは現在取り組んでいることを加速したいと感じましたか」の質問に対して、98%以上の参加者が「はい」と回答し、盛会のうちにセッションを終了しました。

Q&Aセッション

閉会の挨拶

製薬協の田中徳雄常務理事は、まず、過去最高の参加人数であったこと、参加者の長時間にわたる熱心な討議が行われたことや、薬剤師、関係者の出席への感謝を述べました。また、スマートフォンシステム(テクノロジー)を用いたQ&Aの収集により今までとは違った形の全員参加型フォーラムとなり、まさにテクノロジーの進化が生活や暮らしを変えていくことを実感したと述べ、2019年10月にスタートしたPhindMIについても、参加する企業数の増加によって利用者の利便性向上と企業のくすり相談業務の最適化が期待されると述べました。テクノロジーが進化しても、くすり相談部門は患者さんの唯一の窓口であることに変わりはなく、利用者から「電話して良かった。相談して良かった」と感謝されることが、必ず医療への貢献につながると強調し、フォーラムは閉会となりました。

(くすり相談対応検討会 豊田 敏志、寺嶋 裕佳、片山 雅至

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