トピックス 「第8回 薬事委員会シンポジウム」を開催

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2020年2月18日、野村コンファレンスプラザ日本橋(東京都中央区)にて、「より効率的な対面助言、審査とするためにできることを考える」と題する「第8回 薬事委員会シンポジウム」を開催しました。新薬の開発を計画するうえで、限りある資源を最大限に利用し効率的に進める企業の立場と、承認申請後に科学的な評価を行い、適正な市販後対策を講じる規制当局の立場は異なるものの、有効で安全な医薬品をより早く患者さんへ届けたいという理念は同じであろうと考えます。そこで製薬協薬事委員会では、新薬の開発と審査における諸問題について、産学官が一緒に考える場の設定を企画してきており、その企画も今回で第8回を迎えました。今回は、薬事委員会加盟会社を中心に募集を行い、約80名の参加がありました。シンポジウムでは、最近の薬事動向を踏まえ、より質の高い、より効率的な対面助言および審査を目指して、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の方々と盛んな意見交換が行われました。

会場の様子

はじめに

独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)では新医薬品審査関連の第4期中期目標として、世界最速レベルの審査期間の堅持といっそうの質の向上を掲げています。審査期間の短縮においては、目標とする80%タイル値での総審査期間である「優先審査品目9ヶ月、通常審査品目12ヶ月」を継続して達成しています。また、第4期中期目標として掲げた国内外のガイドラインに対応した適切な相談を実施することについては、各種の相談枠が新設され、運用方法についてはある程度の定着がされたものと考えられます。薬事委員会申請薬事部会では、定期的に「対面助言に対する企業の現状認識に関するアンケート調査」および「新医薬品の審査状況に関するアンケート調査」を行っており、対面助言の相談結果については、満足度が高い傾向で推移、審査期間の短縮についても申請者にとって満足のいく結果となっています。

一方で、前述のアンケート結果から、対面助言については、グローバル開発が進むことにより、本邦での対面助言の時期や相談記録の記載内容に関する新たな課題が浮かび上がってきました。また、審査については、依然として、重要な照会事項の発出時期が審査後期の専門協議前後に集中していることについて改善を望む意見が多く寄せられており、特に添付文書や医薬品リスク管理計画(Risk Management Plan、RMP)に対する照会事項は専門協議から医薬品部会までの短期間での対応となっていることが申請者にとっての大きな負担となっている状況がうかがわれます。

製薬協薬事委員会では、最近の薬事動向を踏まえ、現在世界最速となっている審査期間を維持しつつ質の高いより効率的な審査を目指すために、審査側と申請者側のそれぞれにどのような課題があり、さらにより良いプロセスに向けての改善について議論することを目的に、「より効率的な対面助言、審査とするためにできることを考える」をテーマとして今回のシンポジウムを企画しました。

本シンポジウムでは、薬事委員会申請薬事部会の柏谷祐司部会長による司会のもと、主催者として薬事委員会の須﨑正和委員長が冒頭の挨拶を行いました。前半に情報提供として、PMDAによる新薬審査に関するアンケート結果報告と2020年度新規相談項目、製薬協によるアンケート結果報告がなされ、後半はPMDA参加者を囲んだ参加者全員によるグループ討議とし、グループ討議の進行役は薬事委員会申請薬事部会の正副部会委員が務めました。

情報提供:PMDAアンケート結果報告、新規相談項目およびレジストリ相談等

「PMDA新薬審査に関するアンケート結果と令和2年度新規相談項目について」と題し、2019年6~7月に実施した新薬審査部の担当者を対象としたアンケート調査結果の紹介、2020(令和2)年度から導入される新規相談項目について、PMDA審査マネジメント部部長の美上憲一氏による講演がありました。

アンケート結果においては、初回面談、照会事項、審査のタイムライン、専門協議、審査報告書、申請電子データの活用事例、資材確認にフォーカスし、初回面談の開催基準や審査タイムラインの具体的な目安、専門委員の選択等、踏み込んだ内容に加え、申請者側の対応が良かった点、改善すべき点についての意見が紹介されました。また、令和2年度から導入される新規相談項目については、医薬品のデータベース活用相談、開発パイプライン面談、医薬品革新的製造技術相談等の説明がありました。

PMDA 審査マネジメント部 部長
美上 憲一 氏

情報提供:JPMAアンケート結果(相談)報告

「JPMAアンケート結果(相談)報告」と題して、薬事委員会申請薬事部会第1グループの高山裕典サブリーダーより、2019年に申請薬事部会で実施した対面助言アンケート調査に基づく集計結果について、2006年以降定期的に実施してきた過去の結果との比較も踏まえ、対面助言全般と個々事例の紹介がありました。対面助言の満足度では、高い満足度が維持されている一方で、他極の規制当局との相談時期や相談記録に仮定・想定に基づく助言内容を含めるか等、グローバル開発が進むことによる新たな課題が挙げられました。

情報提供:JPMAアンケート結果(審査)報告

「JPMAアンケート結果(審査)報告」と題して、薬事委員会申請薬事部会第2グループの浜田奈津子サブリーダーより、2019年に申請薬事部会で実施した新医薬品・新再生医療等製品の承認審査状況に関するアンケート調査結果と、PMDAにて実施した新薬審査に関するアンケート結果について、申請者の立場からまとめた意見の紹介がありました。照会事項、審査プロセス、資材確認等において、審査業務等の効率化に向けた課題を整理し、審査側と申請者側がwin-winとなるための短期的、長期的提案が示されました。

製薬協 薬事委員会 申請薬事
部会 第2グループ
浜田 奈津子 サブリーダー

グループ討議

PMDAからは、審査マネジメント部の美上氏、課長の奥田大樹氏、新薬審査第2部審査役補佐の大坪泰斗氏、新薬審査第3部審査役の中西民二氏、新薬審査第4部審査役の小池恒氏、新薬審査第5部審査役の河野陽一氏の6名を迎え、本シンポジウム参加者全員が6つのグループに分かれ、1グループ約12名が申請薬事部会の正副部会委員による進行のもと、相談と審査に関するアンケート結果から挙げられた共通の課題についてグループ討議を行いました。

アンケート結果から得られた共通課題として、以下の4つのテーマで意見交換を行い、最後に各グループの議論内容を発表しました。

審査

  1. 1.
    審査プロセスの改善:専門協議のタイミング
  2. 2.
    初回面談のゴール:審査方針と申請者主張に関し、理解をより深めるためには

相談

  1. 1.
    相談記録は誰のものか:仮定・想定に基づく助言
  2. 2.
    PMDA相談タイミング:海外規制当局(米国食品医薬品局(FDA)/欧州医薬品庁(EMA)との比較において

まず、審査プロセスの改善に関する議論では、申請者側から、専門協議後に効能・効果や添付文書に関する重要な意思決定を必要とする照会事項が発出された場合の苦労話や、専門協議の前倒し、専門協議での議論をより早く把握する方法等の改善提案が示されました。これに対し、PMDAからは、申請者側の意見に一定の理解は示すものの、早期に専門協議を行うことのリスクや、専門委員との調整に苦慮した事例等が説明されました。しかし、重要照会事項については、審査の早期段階でPMDA内の議論は進めており、審査プロセスに対する課題において申請者と審査チームとの共通認識は進んでいることがうかがえました。

次に、初回面談のゴールに関する議論では、審査方針と申請者主張に関して理解をより深めるためには、初回面談の実施は有効という意見が多かった一方で、申請前相談で審査上の論点を整理していれば必要ないのではないか、実施しないというPMDA判断は承認の見通しにつながるため、申請者としては安心するという意見がありました。

3つ目の相談記録に関する議論では、PMDAは記録として相談事項に対する見解を主にまとめており、当日の議論の内容、特に仮定や想定に基づく助言等については、将来の環境の変化によって影響を受ける可能性を考慮したうえで、記録に残さないこととしていると説明がありました。相談者側からは、特にグローバル開発における相談記録の重要性や、受け入れられなかった場合の助言を求める意見が出され、相談記録を戦略的に活用する場合には、記録作成の背景を踏まえたうえで、相談項目の組み立て方や、当日の議論の運び方等を十分検討する必要があることが明らかになりました。

最後に、PMDA相談のタイミングに関する議論では、国際共同試験における海外規制当局(FDA/EMA)との相談時期について、適切な順番や情報共有等について意見交換が行われ、PMDAからは、日本の順番は遅いことが多く、海外当局の相談後では変更が難しいケースがあるため、早い段階での相談が望ましい、また、参考にするため、海外での相談状況については共有していただきたいとの要望が出されました。さらに、案件によっては、FDAやEMAと情報交換しているケースもあると説明もあり、国際協調への配慮がうかがわれました。

グループ討議を終えて、PMDA参加者からは、より効率的な対面助言、審査とするためには、企業とPMDAの双方の円滑なコミュニケーションが重要な役割を担っていることが再認識され、本シンポジウムは、お互いの立場を理解するうえで、非常に有意義であり、今後の円滑なコミュニケーションの実現に活かせる活発な議論ができたとの意見が述べられました。さらに、今後も継続してフラットに意見交換ができる機会が望まれ、今回は審査役クラスの参加でしたが、次回は主任クラスの参加も検討したいとの話がありました。

グループ討議、意見交換の様子

最後に

薬事委員会が開催するシンポジウムも第8回となり、さまざまな内容で議論を重ねてきました。今回はPMDAの方を交えたグループ討議という双方向での意見交換形式を取り、参加者、PMDAからも非常に有意義であったとのコメントが多く寄せられています。薬事委員会としては、開発動向や規制を見据え、検討すべき課題がある限り、今後ともこのようなシンポジウムを通じて各社の新薬の開発促進に寄与し、ひいては有効で安全な新薬を早く患者さんへ提供することに貢献していきたいと考えています。

(薬事委員会 村田 宰子

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