トピックス 「第7回 日台医薬交流会議」開催される

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2019年10月1日、張栄発基金国際会議場(張榮發基金會國際會議中心、台湾・台北市)にて、「第7回 日台医薬交流会議」が開催されました。今回の交流会議では、医薬品・医療機器・OTCのそれぞれの立場から、薬事規制や医療保険制度について最新情報を共有し、日台双方の課題について議論しました。また高齢化した社会に対応した革新的な新薬創造に向け、ビッグデータの活用、健康保険における薬価調整の問題等を対アジア戦略といった観点で、相互理解をいっそう深めることができました。

本交流会議は、日本・台湾間で2013年11月5日に「医療品規制に関する協力の枠組み設置のための公益財団法人日本台湾交流協会(日本側)と亜東関係協会(現・台湾日本関係協会、台湾側)との間の取り決め(日台薬事規制協力取決め)を含む5項目の了解覚書が締結され、同年12月に台北にて「第1回 日台医薬交流会議」が開催されたことに始まります。「日台薬事規制協力取決め」の主な合意事項としては、日台間の薬事規制に対する相互理解と協力へ向けたプラットフォームの設定、および日台の規制当局に対する協力要請等が定められています。第2回より医療機器やOTC医薬品の関係者も加わり、毎回、協力体制の基盤形成とあわせて、各テーマについて、より掘り下げた発表および討論が行われ、新薬に関しては医薬品審査提携プロジェクトも進んでいます。

集合写真

日本側は公益財団法人日本台湾交流協会の主催で開催され、厚生労働省医薬・生活衛生局総務課国際薬事規制室長の安田尚之氏、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事の林憲一氏、同国際部長の佐藤淳子氏をはじめ、日本の規制当局より14名、製薬協より伍藤忠春理事長はじめ計8名、一般社団法人日本医療機器産業連合会(医機連)、日本OTC医薬品協会、その他一般の参加者を含めて日本からの参加者は総勢約30名となりました。

台湾側は台湾日本関係協会の主催で行われ、衛生福利部食品薬物管理署(TFDA)署長の呉秀梅氏をはじめ、財団法人医薬品査験センター(CDE)、衛生福利部中央健康保健署(NHIA)、台湾研究開発型生技新薬発展協会(TRPMA)、台湾製薬工業同業公会(TPMA)、中華民国開発性製薬研究協会(IRPMA)、中華民国西薬代理商業同業公会(CAPA)、台北市西薬代理商業同業公会(TPADA)、台湾医薬品マーケティング管理協会(TPMMA)、台湾後発品協会(TGPA)、中華民国製薬発展協会(CPMDA)、台北市日本工商会医薬品医療機器部会(JCCI PMDC)、中華民国医療器材商業同業公会全国連合会(TFMDCA)、台湾医療器材工業同業公会(TMBIA)が参加し、参加者は約250名となりました。

第7回となる本交流会議では2018年に引き続き、医薬品、医療機器についての議論が行われました。まずは、医薬品・医療機器共通のkeynoteセッションとして両当局から規制に関する情報のアップデートが行われ、その後、医薬品、医療機器それぞれに分かれての分科会形式となりました。医薬品セッションについては、さらに健康保険とOTCのセッションに分かれて議論が行われました。

はじめに主催者挨拶および祝辞として、規制当局ならびに産業側からの代表者より本交流会議開催の意義や期待が語られ、規制当局と業界との協調関係が近年ますます前進している中で、本会議でも多岐にわたり意見交換が行われ、双方の薬事規制の調和を図ること、医療保険制度についての相互理解を深めることを期待する旨が述べられました。

1. レギュラトリーアップデート

医薬品・医療機器に係る規制のアップデートとして、日本からPMDA、台湾側からTFDAが最新の状況を発表しました。

はじめにPMDAより、日本における審査期間について、米国に次ぐ世界第2位を維持し、製品群についても審査期間が一定しており国際的にも高く評価されるようになってきていることが紹介されました。審査段階では、日本で画期的な製品を世界に先駆けて承認するために、2015年に「先駆け審査指定制度」が試行的に開始され、2019年4月には第4回目の指定を行い、現在までに医薬品21品目、医療機器11品目、再生医療等製品11品目、体外診断用医薬品1品目が指定されています。また、第2回の先駆け審査指定制度に指定されたOncoGuide NCCオンコパネルシステムがコンビネーション医療機器として2018年12月25日に承認され、このような画期的な製品に対する先駆け審査指定制度の活用が患者アクセスの向上につながっています。Real World Dataの活用においては、MID-NET(Medical Information Database Network)を構築しており、今年この活動をまとめた論文を発表したことが報告されました(Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2019;28:601~608)。

TFDAは、現在、基本方針として、医薬品の品質および安全性、有効性の確保のための"Protect"、革新的医薬品の早期承認制度の構築を進める"Promote"について述べました。またE-submissionの申請が2017年から2019年までの2年間で約4.5倍に増加しており、2020年までには臨床試験許可申請(IND)、新薬承認申請(NDA)、医薬品承認事項変更申請(sNDA)等すべての審査がE-submissionで受け付けできるようシステムの構築を行っていくことが紹介されました。E-labeling system、E-reporting systemも2021年以降の実装を目指して構築しており、再生医療等製品(Regenerative Medical Product、RMP)の分野で各種規制を整備し、年内の法制(RMP Act)化を目指していること等、TFDAの医薬品および医療機器に関連する役割と今後の展望について述べました。

2. 医薬品セッション

医薬品セッションでは、ICH-E17の状況、E-labeling、また、健康保険関連の現状について紹介がありました。

E-labelingに関しては、現在日本では、紙媒体の添付文書が改定ごとに薬局でファイリングされていて、どれが最新のものか判断する手間を削減すること、また、医薬分業が進んでいる日本では医師が紙の添付文書に触れる機会は少なく、誰もがどこでも最新の添付文書を入手できるようにすること等を目的に進めています。E-labelingの利点は、最新のものをどこからでも入手できるAccessibility、XML形式による地域フォーミュラリーへの活用や他言語への翻訳のしやすさといったArrangeability、そして内容の検索を容易にするSearchabilityの3点であると紹介されました。

台湾では添付文書に関して、アクセスのしやすさ、読みやすさ、使いやすさの向上に取り組んでおり、現在は、医薬品の箱に付いたQRコードをTFDAの開発したアプリで読み取ることで、すぐに添付文書情報にアクセスできるだけでなく、目の不自由な人向けに音声で読み上げる機能も提供しています。特にOTCでは、すでによりわかりやすくするために標準化した添付文書を使用し、いろいろな端末機器で読み取れるようにすることでアクセスを向上させていることが報告されました。

最後に、両当局から薬価制度の紹介がありました。日本からは、既存薬価制度に関して新薬の価格算定制度、過去の制度改革の経験、将来の展望について詳細な説明がなされ、台湾からは、総額支払いシステム、薬価収載、市販後薬価調査等の既存の薬価制度について説明がありました。主な制度変更として、2018年9月に施行された、条件付き保険償還(Managed Entry Agreement、MEA)、特に薬剤の効果に応じた支払い制度(Risk Sharing Agreement、RSA)等費用の最適化の施策に関して詳細な紹介がありました。

3. 総括

2013年に始まった本交流会議は今回で7回目を迎え、日台両当局間では医薬品や医療機器の作業部会が立ち上がり人材交流も進められています。特に医薬品については医薬品審査提携プロジェクトが進んでいます。今回のセッションでは、ICH-E17について情報交換され、加えて、E-labelingのような利便性を向上させるための取り組みが採り上げられる等、両当局がいかにイノベーション等を規制に取り込んでいくかについて苦労している様子が理解できました。いかに両当局間で継続的にコミュニケーションをとり、相互理解と信頼を深めていくことが不可欠であるかを感じました。さらに、今回の交流会議では、両当局が新薬審査に関する情報交換を進めていくことで合意しました。これは両当局の協力の枠組みが進展している証です。

2020年度は日本での開催予定です。ぜひこの交流会議の枠組みを活かし、日台の医薬品、医療機器、再生医療等製品に関する規制協力、理解の促進が官民でされていくことを願ってやみません。

(国際委員会 アジア部会 台湾チーム 香川 治

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