トピックス ICH協会 第9回 会合「ICHシンガポール会議」開催される
医薬品規制調和国際会議(ICH)協会の対面会合が、2019年11月16日~20日にシンガポールにて開催されました。本会合では、技術的ガイドラインについて検討する専門家作業部会(EWG)、総会に提案し議論される内容の準備やICHの運営を担う管理委員会、全メンバーが参画する総会等が行われました。会合には、ICH会員である規制当局、産業界団体、オブザーバーとして、計48団体、450名以上が参加しました。また、14の技術的ガイドラインで対面の議論が行われました。ICH対面会合は、欧・米・アジアの3極持ち回りで行われています。従来、アジア開催分はすべて日本で行ってきましたが、今回初めて日本国外での実施となりました。
ICHシンガポール会議(総会)
ICHシンガポール会議の参加団体の内訳は、創設会員である日米EUの産官6団体※1、常任会員2団体(ヘルスカナダ、スイスメディック)、会員8団体※2、常任オブザーバー2団体※3、その他オブザーバー30団体でした。製薬協からは38名が参加しています。今回対面で議論を行ったのは14 Topicsで、うち6 Topicsは初めて対面会合に臨むものでした。
EWGの議論は11月16日~20日の5日間(Topicによっては4日間)にわたって行われました。並行して17日と18日には管理委員会が、19日と20日には決議機関である総会が開催され、一部TopicについてはStep移行の承認が得られました。
以下にシンガポール会合での特記事項を記載します。
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※1米国食品医薬品局(FDA)、欧州委員会・欧州医薬品庁(EC/EMA)、厚生労働省/医薬品医療機器総合機構(MHLW/PMDA)、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)、日本製薬工業協会(JPMA)
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※2中国国家薬品監督管理局(NMPA)、ブラジル国家衛生監督庁(ANVISA)、韓国食品医薬品安全処(MFDS)、シンガポール保健科学庁(HSA)、台湾食品薬物管理署(TFDA)、国際ジェネリック・バイオシミラー医薬品協会(IGBA)、世界セルフメディケーション協会(WSMI)、バイオテクノロジーイノベーション協会(BIO)
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※3世界保健機関(WHO)、国際製薬団体連合会(IFPMA)
1. 新規選出管理委員会会員の承認
ブラジルの規制当局(ANVISA)が、新規選出管理委員会会員として承認されました。
ICHの管理委員会は、常任8メンバー(日米欧それぞれの規制当局および業界団体、スイス・カナダの規制当局)、選出メンバー最大6団体(規制当局4団体・業界団体2団体:定期的に選挙で選出)、常任オブザーバーとしてWHOとIFPMAから構成されています。
このうち、選出メンバーの規制当局枠は現在NMPA(中国)、HSA(シンガポール)、MFDS(韓国)の3団体しかおらず、空席が1つある状態でしたが、今回その枠にブラジルの規制当局が就くことになりました。なお、選出メンバー団体の業界団体枠は現在BIOとIGBAで占められています。
なお、選出管理委員会会員に規制当局として立候補する要件は、「4年間継続してICH対面会合に参加していること」「2つ以上のTopicに専門家を派遣していること」「ICHガイドラインを実装していること(少なくともTier 2※4までは実装)」となっています。
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※4Tier 2:第4項参照
2. 総会と管理委員会の議長、副議長の改選
総会の議長・副議長は2年任期、管理委員会の議長・副議長は1年任期で、それぞれICH対面会合の中で選挙により選出されます。今回、管理委員会の副議長としてPMDA審議役の中島宣雅氏が再選されました。引き続き、日本のプレゼンスを発揮できる状況が続きます。
Assembly
- Chair
- Lenita Lindstrom-Gommers 氏(EC:再任)
- Vise Chair
- Celia Lourenco 氏(Health Canada:再任)
MC
- Chair
- Theresa Mullin 氏(FDA:再任)
- Vise Chair
- 中島 宣雅 氏(PMDA:再任)
3. 技術Topicの動向
今回対面で議論を行った全14 Topicsは以下の通りです。Q12(太字)については、Step 4への移行が承認されました。今後、各規制当局で実装されていきます。また、アンダーラインを付した6 Topicsは今回初めて対面会合で議論されたものであり、すべてについてConcept PaperとBusiness Planが最終化されました。
- Q12
- 医薬品のライフサイクルマネジメント
- Q2(R2)/Q14
- 分析法およびバリデーション
- Q13
- 連続生産
- Q5A(R2)
- バイオ医薬品のウイルス安全性評価
- E14/S7B
- QT延長および重篤な不整脈の評価Q&A
- M10
- 生体試料中薬物濃度分析法バリデーション
- S12
- 遺伝子治療製品の非臨床生体内分布試験
- E19
- 安全性データ収集の最適化
- E11A
- 小児医薬品開発における外挿
- M11
- CeSHarP(Clinical electronic Structured Harmonized Protocol)
- E2D(R1)
- 承認後の安全性情報の取り扱い
- E6(R3)
- GCP刷新RPに基づくE6改定
- E20
- アダプティブ臨床試験
- M12
- 薬物相互作用試験
その他、以下2つのTopicについては対面での会合は行われませんでしたが、Step 4への移行について承認されました。上記Q12と同様、各規制当局での実装を待つこととなります。
- E9(R1)
- 臨床試験におけるEstimandと感度分析
- M9
- BCS(生物薬剤学分類システム)に基づくバイオウェーバー
下記3 Topicは、今後の進捗についての合意があったものです。今後、タイミングの違いはありますが新規Topicとして進められていきます。
- Q3E
- 医薬品・バイオ医薬品の溶出物・浸出物の評価と管理
informal ワーキンググループ(WG)の設置自体は2019年6月のアムステルダム会議で承認されていましたが、今回、専門家指名プロセスも開始され、正式にスタートすることとなりました。 - M13
- 速溶性固形経口製剤のBE評価
informal WGの設置と専門家指名プロセスの開始が合意され、正式にスタートすることとなりました。 - Q9
- 品質リスクマネジメント(改定)
informal WGの設置は合意されましたが、専門家の指名は、ほかの品質Topicとの兼ね合いもあり、すぐに開始しないことで合意形成されました。状況が整ってから正式にスタートします。
4. ICH地域におけるガイドライン実施状況の調査結果を確認
ICHガイドラインの実施状況についての調査を2019年2月~4月に行い、その結果をICHウェブサイトに11月に公表しています。今回の会議では、その結果の考察や今後の調査項目の範囲等をどうするか、等の議論を行いました。
なお、今回の調査で実施状況を確認したガイドラインは以下のとおりです。
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Tier 1
Q1:(Stability-All), Q7:(GMP for API), E6(R2):(GCP)
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Tier 2
E2A, E2B(R3), E2D:(E2シリーズ:安全性情報), M1(MedDRA), M4(CTD)
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Tier 3
M3(R2):(非臨床試験の実施時期), M8:(eCTD), E17:(国際共同治験)
5. Training
トレーニング小委員会のCo-Leadに、製薬協ICHプロジェクト委員会の横田昌史副委員長が就任しました。ICHガイドラインに関する各種外部トレーニングの実施支援やオンライントレーニング提供体制の整備等を通じ、ICHガイドラインの実装を各地域で確実かつ効率的に進める活動を総合的にマネジメントしていきます。
6. ICH 30周年に向けて
ICH発足から30年経過します。2020年秋にギリシアのアテネで開催する対面会合で、30周年記念イベントを行います。また、2020年3月のDIA(Drug Information Association)EURO年会、6月のDIA USA年会、11月のDIA日本年会でそれぞれICHの特別Sessionを行う予定です。
今回の会合では、30周年記念行事に向け、対面会合の主要な参加者に対しビデオ撮影しながらのインタビューが行われました。また、カメラクルーが各TopicやAssemblyの会議室に入り、会議の様子を録画していました。ドキュメンタリー風の映像がアテネ会合に向け作成されるようです。日米欧各DIA年会(3月ベルギー・ブリュッセル、6月米国・ワシントン、11月日本)でのSessionも含め、これからのICH Activityにご注目ください。
7. 今後のICH総会会合予定
2020年5月23日~27日 カナダ・バンクーバー
なお、ICHでは、ICH会合の成果を含め、ICHの活動に関する情報を積極的に公開し、関係者のみならず一般の方々に理解を深めていただけるようにしています。今回のICHシンガポール会議の成果や各トピックの概念書、作業計画等はICHウェブサイトからご覧いただけます。
(国際規制調整部長 柳澤 学)