「製薬協会長記者会見」を開催 創薬・生産・薬価制度・医療DX・人材育成を軸に、政策実現に向けた着実な進捗と方向性を発信

2026年2月19日、製薬協会長記者会見を開催しました。本会見では、製薬協の宮柱明日香会長が登壇し、「変化と挑戦を力に、医療の未来を共に創る」をテーマに、会長就任以降の取り組みの進捗と、今後の政策実現に向けた方針を示しました。会見では、創薬基盤の強化、医薬品の国内生産体制の強靭化、薬価制度への対応、医療DXの推進、科学技術人材育成など、製薬産業を取り巻く重要テーマについて発表が行われました。質疑応答では、中間年改定、日本成長戦略会議における創薬・先端医療、合成生物学・バイオ分野に関する政策実現に向けた政府への働きかけ、医療DXの方向性、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)と製薬協による創薬エコシステム強化に向けた新たな連携「AND-E:アンディ」の取り組みの推進等に関する質問が寄せられ、会長・理事長・専務理事が見解を示しました。

質疑の様子

会長就任以降の振り返り:「共創」を軸とした活動の展開

冒頭、宮柱会長は、就任時に掲げた「持続可能な日本型医療モデルの再構築」と「価値の共創(Co-creation)」の重要性に改めて触れ、製薬産業のみでは課題解決は難しく、国民・患者さん、行政、アカデミア、産業界など多様なステークホルダーとの対話を通じて共通課題に取り組む必要性を述べました。就任以降、創薬力向上のための官民協議会や中央社会保険医療協議会(中医協)、NIKKEI創薬エコシステムサミットなどを通じて対話と連携が広がっており、これらの取り組みが政策実現に向けた基盤となっていることを紹介しました。

そのうえで、会長就任以降の環境変化についても触れ、米国における最恵国待遇薬価政策の動きや国内政権の変化などを背景に不確実性が高まる一方、健康医療安全保障や創薬力強化が政策の重要テーマとして位置づけられている点を指摘しました。宮柱会長は、「変化を危機ではなく好機と捉え、官民一体で日本の医薬品産業を強化していくべき」との認識を示しました。

政策実現に向けた重点テーマ

創薬力強化:AND-Eを核とした実用化の加速

創薬分野では、2026年1月に製薬協とAMEDが「AND-E」に関する協定を締結し、創薬シーズの実用化を加速する新たな枠組みを開始したことを説明しました。

この取り組みでは、製薬協会員会社の研究者がAMEDに参画し、創薬可能性の評価、ターゲットプロダクトプロファイル(TPP)に基づく研究シナリオ設計、Investigational New Drug(IND)到達を見据えた開発ロードマップの策定などを担います。進捗は製薬協とAMEDが共同で確認し、事業化の可能性の高いテーマについてはスタートアップ設立や企業への導出など、次の段階への展開を目指していきます。将来的には、創薬実用化を継続的に高める「IND ENGINE」の機能実装も視野に入れていると発表しました。  

  • IND:Investigational New Drug. ヒトに投与する臨床試験の準備が整った新薬

医薬品の国内製造強化:健康・医療安全保障の観点から

日本の医薬品の国内自給率が約25%、バイオ医薬品では約14%にとどまる現状を示し、医薬品の安定供給は経済政策にとどまらず、安全保障上の課題であるとの認識を示しました。

重要供給確保医薬品については、国内自給率100%を国家目標として掲げる必要性に言及し、(1)重要医薬品の指定と自給率目標設定、(2)国内製造設備・原材料への重点投資、(3)研究開発から量産への橋渡し支援、(4)官民連携による生産能力確保の重要性を示しました。また、平時・有事を問わず持続可能な国内生産基盤を構築するため、製造拠点の強靭化や人材育成への官民投資が不可欠であると説明しました。これにより、国内経済や雇用創出への波及効果も期待されると述べました。

薬価制度:持続可能性と成長の両立に向けて

薬価制度については、費用対効果評価制度の検証や市場拡大再算定の見直しを一定の前進として評価する一方、制度全体が薬価引下げに偏重している点を課題として挙げました。特に、革新的新薬の価値反映、乖離率依存からの脱却、売り上げ規模のみを基準とした再算定の見直しなどについて、早急な議論が必要であると述べました。また、医療制度は「アクセス」「質」「費用」の三つの目標を同時に達成することができないトリレンマの関係にあるとして、国民的議論の必要性を改めて訴えました。

医療DX:価値の定量化と全体最適

医療DXについては、医療資源のひっ迫や社会保障制度の持続可能性への課題を背景に、DXによる資源の効率化と最適配分の重要性を示しました。取り組みは医療機関や介護分野にとどまらず、産業界や行政を含めた全体最適の視点で進める必要があると説明しました。一方で、現状は達成指標やアウトカムの提示が十分とは言えず、医療DXの価値が国民や患者さんに伝わりにくい点が課題であると述べました。

今後は、(1)医療DXの価値の定量化と可視化、(2)社会的理解を広げる情報発信とエビデンスに基づく提言を柱に、業界横断の対話を進めていく方針を示しました。

科学技術人材育成:未来への投資

会見後半では、科学技術人材育成の重要性について説明しました。少子化や理工系人材の裾野の課題、博士人材の減少などを背景に、産業界としても次世代育成に主体的に取り組む必要があるとの認識を示しました。製薬協では、小学生向け実験イベント、中高生のキャリア教育、大学での出張授業などを通じ、医療や科学の面白さを体験できる機会を拡充しています。また、2025年度に初めて協賛した宣伝会議賞(中高生部門)では、「まだ見ぬ治療を、未来のあたりまえに。」が製薬協賞を授賞し、次世代からの期待を感じる機会となったことが紹介されました。

まとめ:共創と変革を通じた未来への挑戦

会見の締めくくりとして、宮柱会長は、創薬基盤強化、国内製造力の強靭化、市場魅力度が向上する薬価制度、医療DXの推進などの取り組みは、すべて国民の健康と日本の成長を支える基盤づくりであると強調しました。今後も「Co-creation(共創)」と「変革」を軸に、環境変化を好機へ転換しながら、製薬協産業ビジョン2035で掲げる「世界に届ける創薬イノベーション」の実現を目指していく考えを示しました。

会見の様子

(産業政策委員会 石本 理紗)

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