「製薬協会長記者会見」を開催 宮柱明日香新会長が所信表明
2025年5月22日、ホテルメトロポリタンエドモント(東京都千代田区)にて、「製薬協会長記者会見」を開催しました。本会見では、同日に開かれた「第276回 製薬協総会」で新たに選任された宮柱明日香会長(武田薬品工業株式会社)が登壇し、就任にあたっての所信と今後の製薬業界の方向性について発表しました。「Co-creation-共創とイノベーションで築く、医療の未来と新しい価値」をテーマに、医療の持続可能性を高め、世界をリードする日本型医療モデルの構築を共創で実現していく一方、昨今の社会情勢における足元の課題も解決していくことを発信しました。会見は会場とオンラインのハイブリッド形式で行われ、約40名の報道関係者が参加しました。

「共創」で医療の未来を築く
冒頭、宮柱会長は「不易流行」の精神を掲げ、伝統を尊重しながらも時代に応じた変革を進める姿勢を強調しました。国民皆保険制度という日本の強みを活かしつつ、変化の激しい医療環境の中で、「国民・患者さんの健康向上」を価値の起点に据えた「共創(Co-creation)」の重要性を説きました。超高齢社会である日本が抱える医療の持続可能性の課題に対し、国民や患者さん、行政、企業、アカデミアなどすべてのステークホルダーと対話・相互理解・共通課題の解決を通して新しい価値を創出していく考えを示しました。


医薬品産業の役割と責任:健康・経済・社会を支える
宮柱会長は、医薬品産業は単に薬を提供するだけでなく、国民の健康寿命の延伸、経済成長への寄与、地域社会の活性化といった多層的な価値を担う産業であると語りました。特に、研究開発型の産業としての責任を自覚し、革新的医薬品の安定供給や、付加価値の高い生産活動を通じた国際競争力向上を目指す姿勢を明確にしました。
投資を呼び込む医薬品市場の魅力度向上へ
創薬力の国際的な地位の低下や、薬価制度の予見可能性といった構造的課題にも言及しました。宮柱会長は「日本市場の魅力度を高めることが、投資を呼び込む鍵」と述べ、安定した制度運営、予見性の高いカテゴリー別のメリハリのある薬価政策の実現、バイオや新規モダリティへの生産投資の促進などに取り組む方針を示しました。海外との比較でも、日本への投資は大きく出遅れており、いまこそ官民一体での環境整備が不可欠であると強調しました。
医療DXの推進と価値の再配分
さらに、医療DXの重要性にも触れ、創薬・生産・供給の効率化を図りつつ、患者一人ひとりに合った医療を実現する「質の高い医療」の提供を目指すと表明しました。医療機関・製薬企業・行政などが連携してデータ活用を推進し、より価値の高い医療・医薬品への再投資をすることで、国民・患者さんへの最適な医療提供や持続可能な社会保障の実現につながると語りました。
明確な役割分担と「共創」による課題解決を
宮柱会長は最後に、「医療を取り巻く課題は製薬業界だけでは解決できない。すべての関係者が各自の役割を明確にし、共通の目的に向けて共創することが不可欠」と述べました。製薬協はその中核的なプラットフォームとして、対話と連携を深め、医療全体の好循環を生み出す主体となることを目指すと締めくくりました。
会見では、報道各社から活発な質問が寄せられ、薬価制度改革や国内生産体制の強化、創薬力強化に向けた官民の役割分担など、具体的なアクションへの期待が寄せられました。製薬協は今後も、国民の健康を支え、日本が世界に発信できる医療モデルを構築すべく、歩みを進めていきます。

詳細は、会長記者会見資料・プレゼンテーション動画にてご覧ください。
https://www.jpma.or.jp/vision/press_conference_lecture/2025/media/250522.html
(産業政策委員会 石本 理紗)