患者団体連携推進委員会 第32回、第33回 患者団体セミナー

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「患者の視点を医療に活かす ~患者として今、出来ること~」

情報提供:医療健康分野のビッグデータ —医療や創薬への利活用について—

IoTの普及による医療への影響

世の中のあらゆるものがインターネットにつながるようになってきた現代社会は、第四次産業革命の只中にあると言われています。急速に世の中が変わってきたことにより、健康医療の分野にも大きな変革の波が押し寄せており、医療の世界でもパラダイムシフト(今までもっていた認識、社会価値観等が革命的に変化していくこと)が起きています。

医薬産業政策研究所
森田 正実
統括研究員

医療現場における変化

電子カルテの導入や医療情報の共有化によって、より医療機関同士の連携が進み、適切なサービスが受けられるようになってくると思います。また、遠隔医療による医療介護サービス(病院に通わなくてもパソコンやスマートフォン等で診察やサービスを受けることができる)もこれから可能になってくると思われます。2018年4月の診療報酬改定でも、遠隔医療について徐々に日本の医療に取り込んでいこうという動きがあります。

さまざまな健康情報の収集・活用

これまで測定することが難しかった情報(呼吸・声・目の動き等)や紙に記録されている情報(自覚症状・服薬情報等)、病院での測定データ(血圧・心電図等の検査データ)が目に見える形で頻回に収集できるようになってきています。また、日常の食事や運動等の情報を管理する「疾患アプリ」等を活用することで、患者さんの同意を基に医療機関で的確に情報を伝えることができるようになってきています。

ゲノム医療・先制医療について

ゲノム(遺伝子を解析したデータ)を医療に活かす取り組みも始まっています。現状はがんの治療等限られた疾患分野での活用となっていますが、今後はいろいろな疾患に拡大してくると思います。
また、先制医療(病気の発症に至るまでのいろいろなリスクを未然に省くことで病気の発生を阻止する)等期待される分野があり、これらを進めるためにも医療健康のビッグデータの活用が期待されています。

LHS(Learning Healthcare Systems)の紹介

米国の先端的な医療機関で取り組まれているものですが、いろいろな患者さんの診療データを収集し、人工知能等を用いて疾患ごと、治療ごと等で解析し、治療効果や薬の副作用情報等を得ることで、情報をすぐに次の診療に活かしていく取り組みが始まっています。近い将来には一般の医療においても日常に得られたデータから新しい発見を得て、診療に活かしていくといった医療や医学研究の革新が進められていくと思います。

医療情報の活用のために(個人情報保護から次世代医療基盤法)

さまざまな医療情報が集められる中で、医療情報には個人情報が含まれていることから、個人が特定できないように加工された情報を利活用する仕組み作りが進んでいます。個人情報は認定事業者により匿名加工情報として製薬企業や研究機関等に提供されることとなります。また、国は個人情報に配慮しながら、個人の状況に合わせた最適な保健医療を提供するために、個人の健康・医療・介護情報を統合したデータベースを中心とした保健医療情報基盤の整備を進めています。

ビッグデータを活用する「新しい健康・医療・介護」

第4次産業革命の技術進展とビッグデータの活用により、健康・医療・介護の分野で著しい発展(パラダイムシフト)が期待されています。近い将来、それを実現するように目指していかなければなりません。これからの医療で活用されるビッグデータの基礎となるのは患者さん一人ひとりのデータであり、まさに患者さんが参画し、患者さんが中心となる医療であると思っています。
また個別の情報を集積したビッグデータを活用して、次の革命的な医療、次世代の新薬を見出していくことも必要であり、関係するすべてのステークホルダーで支えていくことが重要だと思っています。

講演1:患者支援団体として患者の視点を生かした27年間の取り組みから

認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML設立の背景

認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML(以下、COML)の活動は1990年にスタートしました。当時、日本医師会がインフォームド・コンセントを「説明と同意」と訳し、これからの日本の医療に広めていくという記者発表をし、一般の方に発表した時期でした。その当時はがん患者にがんであることを伝えることはタブーという雰囲気で、当事者である患者が自分の病気のことを知るのにとても苦労する状況でした。病院で出された薬のシートには名前もなく、患者が自分の服用する薬のことを尋ねると「あなたに必要な白い錠剤です」という返答をされる状況でした。患者には情報が閉ざされており、多くの患者にとって「医療のような専門的なことについては、素人が聞いてもわからないから知らなくても良い」という風潮が蔓延していた時代でした。

認定NPO法人 ささえあい
医療人権センターCOML
理事長 山口 育子 氏

COMLの活動の原点と貫き通す信念

そんな中COMLは、患者の側で活動するグループとして立ち上がりました。そうすると医療者からは「なにか医療現場に厳しい要求をする団体ではないか」と身構えられてしまうこともありました。「賢い患者なんて作ってもらっては困る」という電話がかかってきたこともありました。
私たちCOMLの活動の原点は医療者への要求ではなく、当時、受け身でお任せの患者に「それで良いのですか」と疑問を投げかけることでした。病気は命や人生を左右することであり、専門家といえども医療者にすべてお任せで良いのでしょうか。患者自身が「いのちの主人公」、「からだの責任者」として「賢い患者になりましょう」と呼びかけ、「患者と医療者は対立ではなく協働しよう」という考えで活動を行ってきました。活動にあたっては「協働」という漢字にこだわってきました。なぜならこの漢字は、「同じ目標に向かって歩む、立場の違う人同士がそれぞれの役割を果たし合う」という意味をもつと聞いたからです。医療者の努力だけで治療効果が上がるわけではありません。お任せするだけでなく、患者も「自分にできる努力とはなにかということを考えよう」、「積極的に治療に参加し課題解決のために提言できる患者市民になろう」という想いで活動を行っています。私たちの活動では、医療現場において、患者と医療者とのコミュニケーションをいかに根付かせるかということを大事にしてきました。苦情や文句を言うことは簡単にできることですが、冷静に医療現場に提言や提案のできる患者市民になっていきたいという想いをもって活動してきました。

患者視点を活かした活動~模擬患者活動、病院探検隊、電話相談~

患者視点を活かした活動の一つとして、模擬患者活動(SP活動)があります。この活動は1992年から実施しています。医学部、歯学部、薬学部では医療面接を含めた客観的臨床能力試験(OSCE)が義務化されており、試験の場に医療面接の相手役として模擬患者を派遣する等、医学教育に参画しています。医学部と歯学部では、臨床実習後のOSCE(Post-CC OSCE)が2020年から開始されることに対応するための準備も現在進められています。
病院探検隊の活動も行っています。病院の改善に、利用者である患者の視点を活かしてもらおうと1994年から始めた活動で、実際の病院の見学、受診を通してその病院のもつ課題を伝える活動です。最近では慶應義塾大学病院や千葉大学医学部附属病院等、大きな病院からも声がかかるようになりました。これは、大きな病院のレベルでも患者目線を採り入れなければならないと感じている結果であり、世の中の機運が変わってきたことを実感しています。
日常の活動の柱としては、患者やその家族の立場として電話相談も実施しています。現在まで約5万8500件の相談が寄せられています。2000年くらいからは患者や家族の相談窓口という位置付けを知ったうえで、医療者からも相談が寄せられるようになっており、現在ではよろず相談窓口のようになっています。

厚生労働省からの依頼で作成した「医者にかかる10箇条」の誕生と配布

1997年当時、厚労省からインフォームド・コンセントをよりいっそう推進させていくための施策として、患者に最低限これだけは医者に聞いてほしいということをまとめた「医者に聞こう10箇条」というものを作りたいので、COMLに研究班に参画してほしいと要請がありました。COMLは素案の作成から携わりましたが、状況によって聞きたいことが異なる、「医者に聞こう」ではなく、医者にかかる際の心構えをまとめた「医者にかかる10箇条」の素案を提出し、取りまとめに尽力しました。作成後は厚労省の記者発表を共同通信社が地方紙に記事配信した反響もあり、刷り部数の4万冊が3ヵ月で在庫切れになりました。この冊子は現在まで21万冊発行するに至っています。2014年には子ども向けの「いのちとからだの10か条」も作成しました。こちらの発行にはファンドレイジングで寄付を募り、3万冊を無料配布しました。両冊子とも現在はCOMLで販売しています。

患者市民の医療への参画を進めるための取り組み

COML創始者である辻本好子の「これからますます患者の視点が求められてくる。さらには模擬患者や病院ボランティア等患者参画はもっと増えてくる。そういった場合に、医療のことを理解したうえで深く参加することが必要になってくるのではないか」という想いを受け継ぎ、「医療をささえる市民養成講座」を2009年から実施しています。一般の方々が医療に参画するにはどのような活動があるのかということを知ってもらい、医療の基本を学んでもらい、自らも賢くなってもらうことを目的として3時間の5回コースで実施しています。開始当時、新聞で告知をしたところ、掲載した日の午前中にすべての定員が埋まってしまい、急遽枠を増やしたところ、初回だけで120名の参加がありました。これまでに5回すべて受講した方は延べ350名を超えており、単発受講の方を含めると400名を超える方が受講しています。医療への関心が高い方がこんなに潜在的に多くいたのかと、主催者としてとても驚いています。参加者に動機を聞いてみたところ「医療にまつわる何かがしたい、お世話になった恩返しがしたい、患者の経験はないがもっと医療のことを知りたい、学びたい…」といった内容が寄せられました。
こういった気持ちをもっている人が増えることで、協働できる冷静な患者を増やしていくことにつながっていくのではないかと実感しています。医療への意識が変わることで、これまで個人的な問題だった医療が、社会への視野を含めた課題としての気づきになり、社会を視野に入れた行動のできる患者が増えることが大切だと思います。

患者・市民の委員養成・バンク化構想について

各都道府県の審議会、厚労省・文部科学省等の国の機関、治験や臨床研究の倫理審査委員会等において、一般の外部委員の出席が求められるケースが増えています。私は現在、さまざまな機関等から委員の要請を受けて80を超える委員会に出席しています。今後はもっと多くの一般の方が意見を言うことが大事だと考えており、意見を言える委員を養成する必要があると考えていました。
COMLでは、2016年度、東京大学医科学研究所教授の武藤香織氏とコラボレーションで「倫理審査委員養成講座」をトライアルで実施し、2017年度からはCOML独自で「医療関係会議の一般委員養成講座」を実施しています。本講座では1回3時間の7回講座で、会議で発言できるディベートの訓練や厚労省の検討会等の傍聴報告会を開催した後、2回に分けて傍聴検討会を実施しています。この傍聴検討会には専門委員として医療者や医療関係団体、事務局として厚労省からの協力があり実施しています。実施後は外部委員の方とCOMLで受講生の採点をして、合格者は委員のバンクに登録することとしています。2017年12月から、2017年度の後期分を開催することとしています。

患者力を高める団体になるために

患者を取り巻く医療の課題について、これまで患者側は主体的に考えていなかったと思います。医療安全対策や救急医療の危機等の問題は医療者や行政が考えることだと思っていました。
ただ、今は違っていて、行政や医療者だけでなく、住民や患者も地域の医療の現状を知り、理解することが求められています。かつて医療者にすべて主導権があった時代から、今は患者と医療者が協働しなければならないという流れに変わってきました。そして、今まで見過ごされてきた利用者の視点がやっぱり大事だと言われるようになってきました。ところが、利用者の視点が大事だから入ってくださいと言われて参加しても、単に個人的な経験や思いつきの提案を言うだけでは意味がないと言われてしまいます。だとすれば、冷静かつ客観的な意見を言える人が今求められているわけです。つまり、これまで以上に医療を理解し、医療に深く参加して協働できる患者市民の必要性が今問われています。
患者力を高めることを考えたときに、患者団体のみなさんは特定の疾患については詳しいことと思いますが、さらに視野を広げていただき、医療の制度や仕組みについても理解していくことが大事ではないかと思います。私は何よりも医療の不確実性と限界について直面する27年間を送ってきました。結果、医療に対して過度な期待を抱くことはなくなりました。でも、あきらめてもいません。冷静に医療と向き合うためには医療の現実を知ることが重要ではないかと思っています。そして協働の姿勢を保ったうえで、たとえばいろいろな患者会の人の輪の中で、疾患のことが目的でない場合にはゆるやかな患者会の連携をそろそろ始めていくことで、大きな力になるのではないかと思います。なにをするうえでもコミュニケーション能力は問われるわけで、会議に出席して発言するにもコミュニケーション能力が問われてきます。個々の患者会でもコミュニケーション能力を高めることで、メンバーの意識を高めることにつながるのではないかと思います。本日の講演が患者会のみなさんの患者力を高めるための、なにかのヒントになればと思います。

講演2:患者の声を代表して伝える患者団体の役割

日本難病・疾病団体連合会(JPA)の設立について

私たちは、ハンセン病や結核の療養所の助け合いから始まり、1960年代に患者団体が少しずつ設立され、慢性疾患の患者団体連合会、全国の難病団体協議会、地域の連絡協議会が少しずつ合併を繰り返し、2005年に日本難病・疾病団体協議会(以下、JPA)が設立されました。すべての人が安心して暮らせる医療と福祉の社会を目指して活動を行っている団体です。

一般社団法人
日本難病・疾病団体協議会
代表理事
森 幸子 氏

日本の難病対策のはじまり

1972年に難病対策要綱が策定され、調査研究の推進、医療機関等の整備、医療費の自己負担の軽減を3本柱としてスタートしました。1989年には「地域保健医療の推進」について取り組まれるようになり、1996年にはQOLの向上を目指した福祉施策の推進が盛り込まれ、2003年にはより身近なところで相談が受けられるように、各都道府県に難病相談支援センターが設置されました。支援センターは患者団体が運営を受託しているところもあれば、医療機関が運営を受託しているところもあります。支援センターではピア・サポートが重点的に行われています。

難病患者が抱える課題と新たな難病対策~難病法への成立に向けて~

難病は専門医も少なく、長期に重い症状に苦しむことや、医療費が高額になる、まれな病気で周りに理解されない等、課題を多く抱えています。
そこで2001年、厚生科学審議会疾病対策部会に難病対策委員会が設置されました。当初は専門家だけで構成される委員会でしたが、2009年2月に開催された第8回難病対策委員会に初めて2人の患者・家族の当事者団体から代表者が委員となりました。2009年7月に開催された第9回難病対策委員会にて、JPAの前代表理事である伊藤たてお氏が「新たな難病対策・特定疾患対策を提案する」として、日本の難病対策のあるべき姿について提言を行いました。
2011年12月に行われた難病対策委員会では、今後の難病対策の検討にあたっての中間的な整理が行われ、画期的な発表がありました。「希少・難治性疾患は遺伝子レベルの変異が一因であるものが少なくなく、人類の多様性の中で一定の割合発生することが必然」であるとの発表でした。つまり、国民のだれもが難病を発症する可能性があるとの認識が示されたことから、我が国は成熟した社会であるならば包含して支援していく必要があるということを難病対策の基本的な認識とすることとしました。
2012年には法制化も視野に入れ、2013年1月の第29回難病対策委員会では、難病の治療研究を進め、疾患の克服を目指すこと、難病にかかっても地域で尊厳をもって生きられる共生社会の実現を目指すことを難病対策の基本理念とすることが決定しました。
これらを取りまとめ、2014年2月「難病の患者に対する医療等に関する法律案」および「児童福祉法の一部を改正する法律案」が閣議決定され、国会に法案が提出されました。そして2014年4月から5月にかけて、国会で参考人としての意見を発言する機会を経て、5月23日に法案が成立しました。
2015年1月には法律が施行され、 当初は医療費助成の対象となる疾患は110疾病でしたが、2015年7月には306疾病、2017年4月には330疾病が対象となっています。

患者会の役割と活動について

患者会には以下の3つの大きな役割があると考えています。

  1. 病気を正しく知ること(病気を科学的に把握する)
    自分の病気について学び、自分の状態を把握し、積極的に治療に参加することが大切です。
    自分にとって必要な正しい情報を得るとともに、医師とコミュニケーションを円滑にし、ともに病気に向き合うことが大切ではないでしょうか。
  2. 仲間同士で励まし合い、助け合う(ピア・サポート)
    病気に立ち向かう勇気と、病気とともに生活していこうという広い心をもつことが必要です。同じような体験をしてきた仲間同士が共感することができることは、患者および患者の家族にとって生きる勇気と希望になると考えています。
  3. 希望をもって生きられる社会の実現に向けて(社会活動)
    病気であっても希望をもって生きられる社会の実現を目指し、行政や国会への働きかけを実施しています。地域では都道府県や議会への要望も行っています。また、全国患者・家族集会の開催や各地で難病フォーラム等の集会を実施しており、難病対策の課題や対策についての話し合い等も実施しています。JPAではさまざまな委員会や協議会等にも参画しており、患者の立場からさまざまな場で意見を述べることがあります。

JPAが受託・実施する患者サポート事業について

患者団体としてさまざまな場で発言をするためには、団体がしっかりと運営ができていないと発言することができません。厚労省は、難病患者支援策の充実を図るため難病患者サポート事業を実施しています。そのためJPAではその運営を受託しています。患者相談支援事業の一つとして、患者団体役員研修としてリーダー研修会を開催しており、患者会の設立から運営までの基本的な内容を学習します。そのほか、リーダーフォローアップ研修等も実施しています。

JPA研究班が取りまとめた「研究協力・連携ガイドライン」について

患者団体が難病研究にかかわるにあたって、研究者と患者団体の理解を深め、より良い協力関係を構築することを目的として、2014年にJPAで患者団体および難病研究を実施している研究者を対象にアンケートを実施しました。以下、一部抜粋してご紹介します。

  • 国内の患者団体と研究班のかかわりについて
    実態調査の協力・アンケート回答・研究班の会議の傍聴等、両者の関係は比較的浅い。
    患者団体側はおおむね満足しているが、研究班はわからない・無回答も多かった。
  • 国内患者会調査まとめ
    患者団体の多くは自ら疾患を抱えており、研究協力を行うにあたっては経験も少ないこと等から負担が重くなると思われる。患者団体の運営を改善するために、研究班や企業等の社会資源とつながることも必要である。患者さんの思いや体験から得た知識が、研究・開発に活かされるよう、患者会と研究班の橋渡しをする支援が必要ではないか。

JPAでは、研究協力・連携ガイドラインを作成しましたが、利益相反や倫理に関する話題も盛り込み、現在は第3版として発行しています。研究協力や連携を開始するための注意するべきこと等については、製薬企業や行政との対応時にも役立つことと思いますので、ぜひご一読いただければと思います。JPAのホームページにも掲載しています。

難病患者が地域で生きていくために

私たち難病患者は特別な人間ではありません。地域で生活する、いち生活者です。すべての患者・家族にとって、生活基盤のある住み慣れたところで専門医の治療を受けることが理想です。
生活の質を上げていくことが生きていく希望を育てることにつながります。そういったことを実現するために患者会は取り組みを進めていく必要があります。

患者・家族当事者の視点を活かすために

日ごろからの相談受付、交流、アンケート調査の実施等を通じて、難病患者が抱える問題を把握し、患者団体の意見として多く紹介できるよう集約します。
より良い医療を受けるためには、患者さんが安心して医療を受けることができる環境整備が必要と考えています。難病や障がい者施策が、患者さんの視点を採り入れた具体的な支援となるよう働きかけ、法律ができたことで終わるものでなく、私たち患者会が取り組みを進めていく必要があると思います。
信頼ある患者会であるために、知識と私たちの意識の向上を常にもつことが重要だと考えています。
患者会は会員数も減少し、財源の問題もあるかと思いますが、現状を嘆くのではなく、伝え続けることをあきらめなければきっと必要とされるものは続いていくと信じています。みなさんと一緒に連帯の力をもって活動していきたいと思います。
よろしくお願いします。

山口氏・森氏による質疑応答

質疑応答では、大阪会場・東京会場ともに多くの質問が寄せられました。
会場の方々が事前に質問内容を記入した用紙を基に、製薬協患者団体連携推進委員会の喜島智香子委員長がファシリテーターを務め、山口氏、森氏がそれぞれ回答する形で進行しました。

会場からの質問に回答する森氏・山口氏(右)とファシリテーターの喜島委員長(左)

「相談員の心のケアはどうされているのか」という質問に対して、山口氏は「ボランティアスタッフが重い相談を聞いた後は、ほかのメンバーに話を聞いてもらう(吐きだしてもらう)ことにしている。電話相談で深刻な内容の相談がある場合は、山口氏自身が外出先から直接対応する等、相談員にできるだけ負荷がかからないようにしている」と回答しました。同じ質問に対して、森氏からは「難病はなかなか解決するものではなく、ピア・サポートも限界があることを理解しておくことが必要だと思う。症状等の話を聞いていると、相談員が巻き込まれて同じような症状が現れることがある。冷静な判断をして、一定の距離感をもって相談に乗ることが必要だと思う。相手の身になって、自分の経験と照らし合わせながら話を聞くことが患者会の活動なので、団体としての見解を活かしながら相談を受けるようにしている。自分自身も相談できる人をもつことが必要ではないか」と回答しました。
また、「医療関係者や周囲の人に自分の症状をどう表現すれば適切に伝わるのか」という質問に対して、山口氏は「大人の場合はボキャブラリーを豊かにして、ありのまま伝えることが必要。子供の場合は、たとえば痛いのであれば、具体的にどう痛いのか伝えることを教えることが必要ではないか」と回答しました。医療者との対話の場で、メモを用意することで話しの途中に記録を取ることも良いのでは、とのアドバイスもありました。
「厚労省への要望書を提出する際にどのようにすれば良いのか」という質問に対しては、森氏が「内容によって提出先が異なってくるため、難病であれば難病対策課を通じてということになると思う。ただ、1つの団体からの要望に対して、厚労省がすべて丁寧に対応してくれるとは限らないので、地域難病連に相談するのも良いのではないかと思う。JPAが窓口となり要望提出について一緒に考えることもできるかと思う」と回答しました。
そのほかにも会場から多くの質問が寄せられ、お2人の立場から丁寧な回答がありました。

まとめ

これらの情報提供、講演および質疑応答に加えて、製薬協事務局からの情報提供として田中徳雄常務理事より「患者団体・医療専門職・製薬業界間における倫理的連携のためのコンセンサス・フレームワーク」についての説明があり、盛況のうちに終了しました。

患者団体連携推進委員会 丸本 康博

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