「第5回日本-ベトナム合同シンポジウム」開催される

2025年12月2日、ハノイ(ベトナム)において「第5回日本-ベトナム合同シンポジウム」が開催されました。両国の薬事規制に関する相互理解を深め、協力関係をさらに強化し、革新的医薬品へのアクセス向上を目指して、活発な議論が交わされました。今回のシンポジウムでは、両国の薬事規制動向、リライアンス審査制度の活用、医薬品の適正使用促進の三つを軸として、関係当局および産業界からの発表と質疑応答が行われました。

会場参加者全員の集合写真

薬事規制の最新動向

両国の規制動向について、前半は規制全般、後半はGMPに焦点を当てて議論しました。

一般的な動向

厚生労働省医薬局国際薬事規制室長の大久保貴之氏が、日本の薬事規制に関する最新情報を発表しました。「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」の2025年改正では、医薬品の品質・安全性確保の強化、安定供給体制の強化、創薬環境の整備、薬局機能の強化などが盛り込まれています。また、厚生労働省および独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が2025年8月に世界保健機関(WHO)から一定水準以上の規制当局として認定され、WHO-listed authority(WLA)に指定されたこと、ならびにPMDAのアジアを中心とした規制能力構築支援活動などを紹介しました。

次に、ベトナム医薬品管理局(DAV)医薬品登録部門次長のグエン・トゥアン・アン氏は、ベトナムの医薬品および医薬品原料の登録に関する最新規定である2025年通達第12号の詳細を解説しました。本通達は、以前の複雑な通達を統合・簡素化し、企業の負担軽減、手続きの円滑化および国際調和を目指すものです。具体的には、登録更新手続きの簡素化や、日本を含む参照国の審査報告書を活用するリライアンス審査の導入が行われています。日本当局に対しては、欧州医薬品庁(EMA)など他の規制当局を例に挙げながら、法的文書の真正性をオンラインで確認するシステムの構築や、リライアンス審査を円滑化するための英語版審査報告書のオンライン提供への協力を呼びかけました。

Good Manufacturing Practice(GMP)適合性の評価

DAV医薬品品質管理部門次長のヴー・ドゥック・カン氏が、外国製造業者のGMP適合性評価の方法および必要書類について説明しました。日本当局が発行するGMP証明を提出する場合、GMP評価においてもリライアンスが活用されます。ただし、日本当局が発行するGMP証明はベトナムの要件を十分に満たさない場合があるため、領事認証されたGMP査察報告書や査察結果通知書などを追加書類として提出することが認められています。

次に、厚生労働省医薬局監視指導・麻薬対策課後発医薬品査察専門官の宮田悠氏が、日本におけるGMP査察の制度およびGMP証明書について説明しました。GMP査察によりGMP省令に適合していることを確認することは日本における医薬品の製造販売承認の必須要件であり、承認後の定期調査には「適合性調査」と、製造工程の区分毎に調査される「区分適合性調査」の二つのパターンが設定されています。一方、輸出用医薬品の定期的な査察についてはこのうち前者のみが設定されています。今般、国内承認医薬品の市販後GMP査察の頻度を現行の5年から3年に短縮する計画が示されており、今後は輸出用医薬品について同様に査察の頻度を3年に短縮する他、区分適合性調査を輸出用医薬品に適用することも検討されています。

リライアンス審査の有効活用

本シンポジウムにおいて最重要視されたテーマであり、規制当局セッションと産業界セッションの両方でリライアンス審査への取り組みが発表されました。

規制当局の取り組み

DAV医薬品登録部門次長のグエン・トゥアン・アン氏が、前述の通達第12号で新たに整備されたリライアンス審査について説明しました。リライアンス審査の申請には、通常審査で要求される書類に加えて、参照規制当局の審査報告書、参照国で承認を得た申請書類、およびベトナムへの申請資料との相違点を明示する比較表の提出が必要です。審査期間は通常審査の12ヶ月から9ヶ月に短縮されることになっており、より予測可能で効率的な審査プロセスが期待されます。DAVは日本当局に対し、改めて直接的な情報提供とそのためのオンラインシステム構築への協力を要望しています。

次に、PMDA国際企画部企画管理課の野田慎一氏は、ベトナムのリライアンス審査における日本の審査報告書の活用に対するPMDAのサポート体制について説明しました。PMDA国際部門にはリライアンススキームに対応する国別担当者を配置しており、DAVからPMDAの審査に関する質問が寄せられた場合は直接コミュニケーションを取り、早期の疑義解消および迅速な承認に協力します。日本の審査報告書は日本語で作成されており、一部の製品に関しては英訳版が機密情報をマスキングして公表されていますが、リライアンス審査の申請には企業側でマスキングされていない英語版の審査報告書を準備して提出します。

産業界の取り組み

日本の業界を代表して製薬協国際委員会アジア部会の村林宏美委員が、ベトナムの研究開発型製薬団体を代表してPharma Group(PG)エグゼクティブ・ディレクターのトゥイ・グエン氏とともに、他国のリライアンス審査の経験からベストプラクティスを共有しました。製薬協は日本承認参照時のベストプラクティスとしてPMDAとの連携による審査報告書のカバーレターの添付を推奨しています。これにより規制当局間の直接的な情報交換が促進され、審査の効率化が期待されます。PGは円滑なリライアンス審査の実行を支援する産業界の協力案として、両当局と製薬協、PGの四者による実務者会合を提案し、DAVの賛同を得ました。

登壇した製薬協国際委員会アジア部会の村林宏美委員

製薬協の吉田易範専務理事による基調講演でも、リライアンス審査について参照国としての日本当局と製薬業界の取り組みが取り上げられており、今後も官民協力して革新的医薬品の安全かつ迅速なアクセスの実現を目指すとの方針が示されています。

製薬協の吉田易範専務理事 登壇の様子

医薬品の適正使用の促進

革新的医薬品を迅速に患者に届けるためには、医薬品が適正に使用されるための環境整備も不可欠です。製薬協国際委員会グローバルヘルス部会アクセスグループの丸山潤美リーダーは、ベトナムにおける医薬品の適正使用推進を目的として、ハノイのバクマイ病院(BMH)と連携して実施している製薬協のプロジェクト進捗を紹介しました。製薬協は、現地のニーズに合わせた臨床薬剤師のキャパシティビルディングに重点を置き、業務マニュアルや患者服薬指導資材の開発・改良、患者や家族とのコミュニケーション、副作用報告を含めたリスク管理などの研修を国立研究開発法人国立国際医療研究センター(NCGM)や国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院(NCCH)と連携して2018年から展開しています。研修に参加しているベトナム・ハノイにあるバックマイ病院(BMH)のブイ・ティ・ゴック・トゥック薬剤師も登壇したパネルディスカッションでは、本プロジェクトがBMHの医療提供と患者にもたらす多大な利益や、資材開発における実践的な課題と工夫について、貴重な経験が共有されました。

パネルディスカッションの様子

最後に

閉会の挨拶でDAV国際規制統合部門長のチュー・ダン・トゥン氏は、これまでの日本からの協力に感謝の意を示し、参照国の審査報告書を活用するリライアンス審査の導入という成果が得られたと確信していると述べました。

こうした成果を積み重ね、さらに発展させることが患者さんに医薬品を迅速かつ安全に届けるための第一歩となると信じ、両国の規制当局および業界団体と協力し、引き続き活動してまいります。

(国際委員会 アジア部会 ベトナムグループリーダー 東山 昌代)

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