「第12回 日台医薬交流会議」を開催

2024年12月19日

2024年10月7日に「第12回 日台医薬交流会議」が日本橋ライフサイエンスハブ(東京都中央区)において開催されました。本年は新たに就任された台湾衛生福利部食品薬物管理署(TFDA)署長の莊聲宏氏をはじめ、台湾規制当局および産業界から約70名が来日しました。また日本からは厚生労働省、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)、産業界から約110名の参加がありました。

主催・協賛団体関係者による当日の集合写真  

本交流会議は、2013年11月5日に締結された「医療品規制に関する協力の枠組み設置のための公益財団法人交流協会(日本側)と亜東関係協会(現・台湾日本関係協会、台湾側)との間の取決め(略称「日台薬事規制協力取決め」)を踏まえ、2013年12月に第1回を台北で開催してから12回目となるものです。「日台薬事規制協力取決め」では、日台間の薬事規制に対する相互理解と協力へ向けたプラットフォームの設定・日台の規制当局に対する協力要請等を行うこととしています。このような背景から、日台の規制当局・産業界の協力体制の基盤形成を進めるとともに、各テーマについて掘り下げた発表・討論が行われてきました。新薬に関しては、日本で承認された新薬を台湾で効率的・迅速に上市するための新薬審査協働スキームが整備され対応が進んでいます。

日本側の主催は公益財団法人日本台湾交流協会、協賛としてPMDA・製薬協等が行っております。厚生労働省医薬局総務課国際薬事規制室長の古賀大輔氏、PMDA理事の近藤恵美子氏など日本の規制当局、製薬協の木下賢志理事長をはじめとする製薬協、一般社団法人日本医療機器産業連合会(JFMDA)など関係各所から多くの方が参加しました。製薬協を代表して木下賢志理事長がOpening Remarksを行いました。

台湾側は、台湾日本関係協会主催のもと、衛生福利部食品薬物管理署(TFDA)・財団法人医薬品査験センター(CDE)・台北市工商会医薬品医療機器部会(JCCI PMDC)・台湾製薬工業同業公会(TPMA)・台湾研究開発型生技新薬発展協会(TRPMA)・中華民国開発性製薬研究協会(IRPMA)・台湾後発品協会(TGPA)・中華民国製薬発展協会(CPMDA)・台湾医療器材工業同業公会(TMBIA)・中華民国医療器材商業同業公会全国連合(TFMDCA)の協賛となっています。

第12回となる本交流会議では、keynoteセッションとして、両当局から薬事規制に関する情報のアップデートおよび日台のコラボレーション、将来展望に関してお話がありました。その後、革新的な医薬品への早期アクセス、安定供給に関する台湾および日本双方の取り組みの共有、バイオシミラーの薬事審査、さらに医療保険制度に関する議論がありました。

Opening Remarksを行う
製薬協の木下賢志理事長

1.Keynote Speech

医薬品・医療機器に係る規制のアップデートとして、台湾側からTFDA、日本側からPMDAの最新状況の発表がありました。

PMDAからは、PMDA設立20周年を迎え、組織としても成長してきており、職員数は1,000人を超えたこと、また日本におけるドラッグ・ラグ/ロスの現状および改善のための施策(国際共同Ph3を実施する前の日本人Ph1を必須とはしないことなど)の紹介がありました。また、米国やASEAN各国との連携をさらに深める為に、PMDAとしてタイとワシントン(US)にオフィスを設置したことの報告がありました。

TFDAからは、台湾におけるバイオシミラーの現状、近年の再生医療、臨床試験、リアルワールドデータ(RWD)/リアルワールドエビデンス(RWE)に関する規制のアップデートや現状の共有がありました。2023年には台湾企業のバイオシミラーの承認がされるなど国内企業・産業の育成を考えていることが感じられました。また台湾はデジタル医療機器が非常に進んでおり、これまで承認された医療機器プログラム(SaMD)129件のうち45件(35.2%)は国内企業が開発したものとのことでした。日本と台湾では、医薬品および医療機器のワーキンググループを通じてさまざまな意見交換や連携が進められていることの共有があり、今後も双方の薬事規制の発展が期待される内容でした。

2.Improve patient access to innovative drugs and sustainable supply

本セッションでは、革新的医薬品へのアクセスおよび安定供給に関する取り組みが、日本および台湾から紹介がありました。

日本側からは、製薬協品質委員会GMP部会の小野誠副部会長が登壇し、製薬業界の使命である革新的医薬品の早期開発およびアクセス、安定供給の確保のための課題や業界の取り組みが紹介されました。日本および台湾は臨床試験の体制は整っており、立ち上げスピードが早いかつ質が高いことから、企業としては実施国として選択されていること、今後も実施国として選択されるためには、各国特有の対応や費用対効果を上げていく必要性や、登録を推進するために、治験のプラットフォームを電子カルテなどと連携する等のアイデアが述べられました。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの緊急事態に備えた安定供給体制構築のために、2つ目の製造サイトの登録の必要性などについて述べました。

TFDAからは、安定供給の取り組みまた供給不足に陥らないための対策に関して発表がありました。近年、医薬品の供給不足が問題となっていますが、台湾では、需要予測、原薬の供給、製造、モニタリングなど供給不足対策のためさまざまな側面からアプローチを行っている旨が述べられました。また一般の方へのジェネリック医薬品に関する教育(ジェネリック医薬品はオリジナル品と同じ有効性・安全性が期待できる)など使用する側へのアプローチも積極的に行っていることについて述べました。

安定供給に関する取り組みを紹介する
製薬協品質委員会GMP部会の小野誠副部会長

3.Biosimilar products regulations

PMDAからは、日本ではバイオシミラーは36の品目が承認されているが、近年ではモノクロナール抗体や融合タンパク質の申請や相談が増えてきたこと、またバイオシミラーについて日本で発出した品質安全性有効性確保のためのガイドラインおよびQ&Aに示されている承認審査における科学的な考え方について共有がありました。バイオシミラーは化学品に比べて分子量が大きく複雑な構造をしており、またタンパク質合成経路から産生されるため必ずしも先行品とは分子構造が同一にはならず、同等性・類似性について科学的な判断をもって審査を実施されているとのことです。また、事前質問に関連して、2024年に改訂された前述のQ&Aでは臨床試験への日本人の組み入れが必ずしも必須ではないとしたことの背景について紹介がありました。

TFDAからは、台湾におけるバイオシミラーの申請前相談や審査時における確認点について紹介がありました。また事前の審査について簡素化されること、制限について緩和されること、また処方される場合、費用面でインセンティブを設定している旨等、バイオシミラーの使用促進の対策について述べられました。国内バイオ産業の育成について、積極的に取り組んでいる姿勢を感じました。

4.健康保険制度

本セッションでは、製薬協国際委員会アジア部会台湾グループの小山辰也リーダーの司会進行のもと、厚生労働省・NHIAから薬価制度や現在取り組んでいる活動について紹介がありました。

厚生労働省からは、日本の医療費や薬剤費の状況、薬価制度・算定ルール、また本年の薬価制度改革の内容について紹介がありました。新しい薬価制度では、1.ドラッグ・ラグ/ロスを解消するための適切なイノベーションの評価、2.薬剤の安定供給の確保、この2つを基本としていること、また特許期間中にR&D投資コストの回収、特許終了後はジェネリック医薬品にその役割を引き渡すこととするメリハリを利かせたコンセプトとしていることなどの紹介がありました。

NHIAからは、台湾で取り組んでいる癌の死亡率を2030年までに3分の1に減らすことを目標とし、スクリーニング検査の推進など対策を講じていること、また新薬のアクセスを早くするため、パラレルレビューの導入やCancer Drugs Fundの設立など対策を講じていることの紹介がありました。

ドラッグ・ラグやドラッグ・ロスの課題が近年浮彫になってきていますが、透明性と予見性をより明確にし、官民協力して、医薬品市場の魅力を上げていくことで投資を呼び込み、 患者さんへの医療アクセス向上につながる仕組みにしていくこと、また日本および台湾の国民皆保険を維持・発展させるためには、国民を巻き込んだ議論が必要であると考えます。

健康保険制度セッション Q&Aの様子

5.総括

2013年に始まった本交流会議は今回で12回目を迎えました。これまでの取り組みの中で、新薬案件でも、2015年に台湾でのGCP査察制度の見直し、2016年に台湾の簡略審査制度に日本を追加、2019年に日台で新薬審査協働スキームに関するポジションペーパーの発行など、両当局間で確実な調和・協働が進んでいます。今後も、本交流会議を通じてコミュニケーションをとり、規制当局・産業界が相互理解と信頼を深めていくことが不可欠であると感じます。

次回は2年後、2026年に台湾で開催予定です。これまでの協働を官民でさらに発展させ、日本および台湾の医薬品、医療機器に関する規制調和・協力、相互の規制制度の理解を促進し、必要とされる医薬品が 必要な患者さんにいち早く届く体制を官民で構築していくことを願ってやみません。

(国際委員会 アジア部会 台湾グループ 小山 辰也、原田 貴恵)

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