アジアと共に創る医療の未来ーバクマイ病院との連携にみる日本の貢献

なぜ製薬協がベトナムのアクセス問題に取り組むのか

製薬協は、「我が国、そして世界に届ける創薬イノベーション」をビジョンとして掲げ、日本だけでなく世界中のAccess課題の解決に取り組んでいます。

多くのアジア諸国では、新薬が承認されても、安全な医薬品の調整・投与や安全性情報の収集・共有、患者による適正使用が十分に行われず、患者さんへのアクセスが実現していないのが現状です。
製薬協は、単に薬を届けるだけにとどまらず、その薬を安全に、そして有効に使っていただくための「医療のエコシステム構築」を支援し、アジア地域の健康寿命延伸にも貢献したいと考えています。
この考えのもと、国立国際医療研究センター(NCGM)、国立がん研究センター 中央病院(NCCH)と協働してベトナムでのキャパシティビルディングに取り組んでいます。

ベトナムにおけるモデル事業の立ち上げ

我々は2018年ごろに最初にプロジェクトを立ち上げました。ベトナムは日本との間でヘルスケア分野で連携が進んでいることから、首都ハノイに位置する同国最大級のバクマイ病院に協力することにしました。

第1期( 2019~21年度)は、同国で課題となっていた糖尿病の患者さん向けの服薬指導などを中心に取り組みました。

第2期(2024~2025年度)はがん領域にフォーカスし、抗がん剤の製剤業務の能力構築に取り組みました。

2017〜18年度 第1期計画・調整
  • 糖尿病の入院・外来患者への服薬指導・疾患啓発のキャパシティービルディング
  • NCGM医療技術等国際展開推進事業として、JPMA・NCGM・RAD-ARで実施
2019〜21年度 第1期PJ実施
2022〜23年度 第2期計画・調整
  • ニーズ調査を経て疾患領域を「がん」、業務領域を「抗がん剤の製剤」に設定
  • 抗がん剤の製剤業務を薬剤師が安全に遂行するためのキャパシティービルディング
2024〜25年度 第2期PJ実施

日本流の医療キャパシティ・ビルディング

2022-23年度の現地視察やアンケート調査により、適正使用推進や薬剤師業務における研修のニーズが、がん領域に多いことを確認し、2024年、新たに国立がん研究センター 中央病院(NCCH)をパートナーに迎え、第2期のプロジェクトを始動しました。
NCCHでの訪日研修と、その成果を実装するための訪越研修を対で実施する年間計画を立てました。

2024年度にはバクマイ病院の臨床薬剤師2名を、2025年度には臨床薬剤師2名と製剤担当薬剤師1名を訪日研修に招待し、NCCHの実務見学や模擬製剤、日本式のチーム医療や患者コミュニケーションを学びました。


実践を通じた学び -現場の細かなノウハウの獲得-

2025年11月のNCCH訪問では、講義・議論などを通じ、院内の抗がん剤の調剤の仕組みを学び、実技を組み合わせた研修にて、安全確保の実習を行いました。

座学による高度ノウハウの獲得

高度な抗がん剤治療を受け入れ可能な体制づくりをめざし、厳格な安全管理、病院内の多職種連携、患者さん中心の指導・パンフレット作成などの様々な規定、改善の取り組みを学びました。

実技を通じた安全性確保の実習

抗がん剤の取り扱いで重視される安全性の観点から、実際の手技における留意点を学びました。蛍光剤を使い、容器外への付着を確認する方法などを確認しました。

ベトナム最大級の病院における変革

今回の研修活動を通じてバクマイ病院で次のような変革をめざすこととなりました。

  • 高度医療へのアクセス基盤の確立

    防護服の着脱手順、廃棄管理などの厳格な基準を仕組みとして取り入れた、現地の医療従事者が安全に高度な薬剤を取り扱える環境づくり。

  • 患者中心医療の輸出

    医師主導が強いベトナムの医療現場への、日本独自のチーム医療や、薬剤師による患者指導の概念や、患者さんが理解しやすい服薬指導用のパンフレットなどの導入。

  • 安全かつ適正に抗がん剤を調整するためのマニュアルの作成・運用
  • 集中型調製室の整備
  • シンプルで持続可能な患者指導ツールの作成検討

ベトナム全土、そしてアジア全域への展開を見据えて

「アクセス・ラグ」の解消へ:

これらの現場レベルでの改善活動を、駐日ベトナム大使館との対話を通じ、ベトナム保健省と連携した政策レベルの対策につなげ、ベトナム全体の医療水準の底上げを目指します。

現地の臨床薬剤師が高度な薬剤を扱えるようになることで、新薬の患者さんへのアクセスは1日でも短縮されることが期待されます。

アジア規制当局との対話促進:

製薬協 国際委員会アジア部会ではアジア規制当局との対話を進めています。現地のニーズに応じた人材育成・資材作成は、各国の保健省・規制当局においても参考となるモデルケースとして、今後、アジアの多くの地域への展開につながることを期待しています。

 


(国際委員会 アクセスグループ 丸山 潤美、原 明日香、岡原 千久咲、山口 尭史、幸松 邦彦、粟村 眞一朗)

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