世界保健総会(WHA79)期間中にスイス・ジュネーブでサイドイベントを開催 健康長寿社会の推進に向けた日本の経験
"Kenshin(健診・検診)":包括的なスクリーニングと健康診断による予防的アプローチ

開催目的・概要

世界各国が多疾患併存による疾病負担の増大に直面する中、持続可能な保健医療システムの構築に向けて、予防と早期発見の重要性が高まっています。早期発見・早期治療は、疾病負担の軽減や医療費削減にとどまらず、生産性・労働力の維持にも寄与するといわれ、WHOは、非感染性疾患(NCD)対策への1ドルの投資が少なくとも7ドルの経済的リターンをもたらすと推計しています。

本イベントでは在ジュネーブ国際機関日本政府代表部と製薬協の共催により、UHC/健康長寿を達成している代表的な国の一つである日本の経験を低・中所得国(Low- and Middle-Income Countries: LMICs)と共有するとともに、各国がそれぞれの文脈に応じて活用できるソリューションを探求し、グローバルな相互学習の場を提供しベストプラクティスを育むことを目的として開催されました。

開会挨拶:日本政府の取り組み

厚生労働大臣政務官 神谷 政幸 氏

神谷氏は開会の挨拶において、「世界中で多疾患併存患者が増加し、保健医療システムに多大な負担をかけている中で、持続可能な医療のためには予防と早期発見が極めて重要である。また、このアプローチは個人の健康増進に繋がるだけでなく、医療費の適正化や経済成長にも貢献する」と述べました。加えて、本イベントが、各国の経験と知見を共有し活発な相互学習の場となることで、具体的な行動や意義のある国際連携につながることへの強い期待が示されました。

プレゼンテーション:生涯を通じた健康管理と日本の「Kenshin(健診・検診)」システム

厚生労働省 医務技監 迫井 正深 氏

厚生労働省医務技監の迫井正深氏が登壇し、日本のライフコース・アプローチについて解説しました。 日本では、年齢やライフステージに応じた包括的な健康状態の確認を行う「健診(Health checkups)」と、特定の疾患を早期発見するための「検診(Disease screenings)」が統合して提供されていることが紹介されました。さらに、マイナンバーを活用したパーソナルヘルスレコード(PHR)の導入により、国民一人ひとりが自身の健康状態を継続的にモニタリングし、データに基づいた健康管理を推進している点が強調されました。

各国代表者からの経験・知見の共有

2025年12月に日本で開催された日本政府・世界保健機関・世界銀行共催による「UHC High Level Forum」でもモデレーターを務めたAnita V.M. Erskine氏の進行のもと、各国の代表者がそれぞれの課題や成功事例を共有しました。 

  • ジャマイカ

    保健・ウェルネス大臣のHon. Dr. Christopher Tufton氏は、生活習慣による早世の課題に対し、コミュニティ介入型の「Jamaica moves」プログラムや、自身の健康数値を把握する「Know your numbers」キャンペーンを推進していることを紹介しました。

  • ガーナ

    保健省代表は、保健大臣のHon. Kwabena Mintah Akandoh氏に代わり、 感染症とNCDsの「二重の疾病負担」を指摘し、無料のプライマリヘルスケアの導入や、コミュニティベースでの疾患スクリーニング(高血圧、糖尿病、がん等)に注力していると述べました。

  • フィジー

    保健医療サービス省副大臣のHon. Penioni Koliniwai Ravunawa氏は、国内の死因の約80%がNCDsであることを報告し、課税や食品政策の見直しを含む法整備や、コミュニティへのウェルネスセンター展開による予防的アプローチを強調しました。

Tufton氏(ジャマイカ保健・ウェルネス大臣)、Erskine氏(モデレーター)

ガーナ保健省代表

Ravunawa氏(フィジー保健医療サービス省副大臣)

参加者を交えたインタラクティブ・ディスカッション

モデレーターのAnita V.M. Erskine氏の進行のもと、ラウンドテーブル形式でChallenges & SolutionsとFuture Collaborationをテーマに活発な議論が行われました。

  • 専門家からの声

    City Cancer ChallengeのCEOであるIsabel Mestres氏や、Access Acceleratedのエグゼクティブ・ディレクターであるHerb Riband氏からは、革新的な医薬品や予防モデルを実際のコミュニティに届けるための、ローカルな実装とヘルスファイナンシングの重要性が語られました。

  • 各国代表からの声

    サウジアラビア、エチオピア、ベトナムなどの各国代表者からも、デジタルヘルスの推進や2026年からの全世代向け健診の導入といった先進的な事例が共有されました。

閉会挨拶

製薬協 眞鍋 淳 副会長

製薬協の眞鍋淳副会長は、閉会の挨拶において「強靭で持続可能な保健システムの構築には、各国の保健課題・人口動態・医療提供体制・財政状況に応じた設計と実装が重要である。また予防アプローチの推進には政府の強力なリーダーシップが不可欠であるとともに政府・国際機関・医療関係者・民間セクターの連携が重要」と総括しました。また、製薬産業としてイノベーションの創出、エビデンスの構築、そして官民のコラボレーションを通じて、予防的かつ持続可能なヘルスケアシステムの実現に貢献していくというコミットメントが示されました。

製薬協としてのまとめ・所感

本イベントには、アフリカ、カリブ海、太平洋、アジアのLMICs各国の保健省高官、国際機関、NGO等の幅広いステークホルダーが参加し、日本の「Kenshin(健診・検診)」システムに対する強い関心が寄せられました。日本のアプローチを一方的に紹介するのではなく、各国の代表者が自国の課題と知見を共有するピア・ラーニングの形式が効果的に機能し、活発な議論が行われました。

本イベントを通じ、予防・早期発見の推進が持続可能な保健システム構築に不可欠であるという認識が参加者間で広く共有されました。また、日本の経験が各国の保健政策立案や能力強化の参考となり得ることが示されるとともに、ジャマイカ保健・ウェルネス大臣からは、ガーナをはじめとする参加国との間で、今後さらに知見共有を進めていきたいとの発言があり、本イベントを超えた継続した国際対話と協力関係の構築に向けた機運が高まりました。

製薬協は今後も、革新的製薬産業を代表する団体として、LMICsの持続可能な経済成長と保健システム強化に貢献すべく、グローバルヘルスへの積極的な関与を続けてまいります。
 

(国際委員会 Multilateral Advocacy Groupリーダー 飯塚 直子)

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