「第二回顧みられない熱帯病コンテスト」開催される
毎年1月30日は世界保健機関(WHO)が定めた「世界NTDの日」です。この日は、顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases、NTDs)について考え、世界がつながる日です。製薬協は2025年世界NTDの日に協賛し、国際委員会グローバルヘルス部会NTDサブグループが「世界NTDの日・日本実行委員会」の一員として、「世界NTDの日」のイベントの一つである「第二回顧みられない熱帯病コンテスト」に参画しました。本コンテストは、学生のアイデアを通じて、若い世代にNTDs制圧の重要性を訴えていくことを目的として開催されました。コンテストを通じて、NTDsについて理解や関心を高め、製薬企業のさまざまな取り組みを知るきっかけの一助となれば幸いです。
顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases、NTDs)について
NTDsは、熱帯・亜熱帯の地域を中心にまん延している寄生虫や細菌による21の熱帯感染症を中心とした貧困と密接に関連する疾患群の総称です。これまで先進国から主要な疾患と考えられてこなかったことから、「顧みられない熱帯病」と呼ばれています。世界の5人に1人、すなわち16億人以上の人々に影響を与えています。
第二回顧みられない熱帯病コンテスト
「第二回顧みられない熱帯病コンテスト」では、A部門「わかりやすく伝える部門 〜NTDsって知っている?〜」とB部門「日本ができることを考える部門 〜NTDsを制圧するために〜」の2部門が設けられ、中学生から大学院生までが自由に作品を応募しました。学生たちの柔軟性に富んでユニークなアイデアが多く表現されました。NTDサブグループは、選定基準を表す「いっしょに届けたい、くすりと想い」というメッセージに基づき、応募作品の中から1作品を日本製薬工業協会賞として選定しました。
コンテスト最終審査(2025年1月11日)
A部門には 24作品、B部門には11作品の応募があり、「世界NTDの日・日本実行委員会」参加団体が一次選考を行いました。A部門についてはインスタグラムやYouTubeでのSNS審査も行いました。一次選考を通過したA部門6作品、B部門6作品については、現地あるいはオンラインでの発表と審査員との質疑応答を経て、最終選考が行われました。A部門では応募者自らがビデオに登場するものから、生成AIを用いた映像まで多様なスタイルで、NTDsという難しい課題を正確に、かつ、わかりやすく伝える作品が揃いました。また、B部門では、リンパ系フィラリア症や住血吸虫症を世界で初めて制圧した日本だからこその、具体的で実行可能性のあるNTDs制圧のための取り組み提案や、NTDsに対する「偏見」や「無理解」という大きな課題に切り込んだ作品など、質と納得性の高い作品ばかりでした。
コンテストファイナリストの皆さん
日本製薬工業協会賞受賞者による最終審査プレゼンテーション
「世界NTDの日」オンラインイベント(2025年1月30日)
世界NTDの日である本年1月30日に、日本実行委員会主催のもと、NTDsへの理解を深め、その制圧に向けた行動を促進することを目的として、「2025世界NTDの日ウェビナー」が開催されました。本イベントは、公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)CEOの國井修氏、厚生労働省大臣官房国際課国際保健・協力室長の高橋順一氏からのメッセージ、第二回顧みられない熱帯病コンテストの表彰式、皮膚に関連する顧みられない熱帯病(Skin NTDs)をテーマとしたスペシャルパネルディスカッションの3部構成で開催されました。
2025年世界NTDの日ウェビナー動画はこちらからご覧ください。
日本顧みられない熱帯病アライアンス(JAGntd)ウェブサイト https://youtu.be/kIcagR9Rx1s?si=ia80Sg5IUSBm_heB
第二回顧みられない熱帯病コンテストの表彰式
最優秀賞(A・B部門)、U-18特別賞(A・B部門)、日本製薬工業協会賞、GHIT賞が表彰され、受賞者からそれぞれコメントをいただきました。
日本製薬工業協会賞は、Music Video「Neglection Toward Distance」に贈られました。本作品では、重たいテーマであるNTDsを、非常にわかりやすいキーメッセージに落とし込み伝えており、NTDsの認知度向上に寄与すると期待しています。
受賞者コメント
コンテストに応募するまでNTDsを全く知らず、調べていくうちに多くの病気があることに驚き、病気の症状に怖くなったりもしました。日本では簡単に手に入る薬で治る病気なのにとても困っている人がたくさんいることを知って、私が健康でいられることは当たり前ではないと思いました。たくさんの人に、NTDsという言葉や、世界で苦しんでいる人のことを知って欲しいと思って動画を作りました。
表彰に際し、審査員を務めたNTDサブグループの神道美和委員から、「本作品はAIを活用してNTDsの21疾患を表現力豊かに、かつ、的確に紹介しています。製薬協で審査に加わった世代から出てこない発想でNTDの深刻さを印象付ける動画になっていると思っています。ユニークで、また、新しい発想で、日本だけでなくグローバルにもNTDsを広げていきたいと、我々も思える作品だと思います。」という講評を行いました。
最後に
2024年に続き、世界NTDの日に向けて日本国内の関係者が連携し、学生のアイデアを形にしてNTDs制圧の重要性を訴える試みは成功裏に終わりました。この活動を通じて、一人でも多くの方にNTDsについて知っていただけることを願っています。企画・運営を担った一般社団法人NTDs Youthの会、製薬協と同じく構成団体として活動された公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)、長崎大学熱帯医学研究所、日本顧みられない熱帯病アライアンス(JAGntd)、特定非営利活動法人SDGs・プロミス・ジャパン(SPJ)には深く感謝いたします。
(国際委員会 グローバルヘルス部会 神道 美和)