「BIO International Convention 2026」にて日本市場と治験環境の進化を官民で発信 Enhancing the Japanese Market and Its Clinical Trial Environment – New Opportunities for Global Start-ups
2026年6月22日(米国現地時間)、米国・サンディエゴで開催されたバイオヘルスケア業界における世界最大規模のパートナリングイベント「BIO International Convention 2026」において、製薬協は、「Enhancing the Japanese Market and Its Clinical Trial Environment – New Opportunities for Global Start-ups」と題したパネルディスカッションを開催しました。
本セッションは、日本の医薬品市場や臨床開発環境の最新動向を海外バイオテック企業や投資家に紹介し、日本への投資や事業展開を促進することを目的として実施されたものです。会場には約100名の参加者が集まり、日本の創薬環境に対する高い期待と関心が寄せられました。
モデレーターは製薬協の宮柱明日香会長が務め、厚生労働省、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)、日米で活動するベンチャーキャピタルRemiges Venturesの代表者が登壇しました。
日本を取り巻く環境変化と創薬力強化への取り組み
冒頭では、製薬協の宮柱会長より、日本が世界有数の医薬品市場であり、高品質な医療制度や優れた基礎研究力を有していることが紹介されました。一方で、日本市場や関連制度に関する海外での認知が十分でないことが、海外企業の参入判断における障壁となり、ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの一因になり得るとの認識も共有されました。
続いて、厚生労働省大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官 森真弘氏(当時)より、日本政府が創薬産業を国の成長戦略の中核に位置付けていることが説明されました。2026年7月に開催された「日本成長戦略会議(創薬・先端医療ワーキンググループ)」において、創薬エコシステムの強化、人材育成、AI・データ活用、臨床試験基盤の整備などをテーマとした議論が進められ、日本の強みである基礎研究力や高品質な治験環境を活かしながら、研究成果を迅速に事業化し世界市場へ展開する創薬力の強化が目標とされました。また、日本の特許品市場については、G7平均(日本を除く)の年平均市場成長率9.6%に比肩する成長を実現する方針も示されました。
日本市場参入を支える制度と支援策
PMDAワシントンD.C.事務所所長の石黒昭博氏からは、日本市場への参入を検討する海外企業向けの支援策が紹介されました。
PMDAワシントンD.C.事務所では、日本の薬事制度に関する情報発信や相談対応を行っており、小児用医薬品やオーファンドラッグの開発支援制度の紹介、新たなモダリティに関する相談対応などを通じて、海外企業の日本参入を後押ししています。
また、日本における国際共同治験の実施を支援する「ENSEMBLExJ」プロジェクトについても紹介されました。同プロジェクトは、海外企業が日本で開発を実施する際の相談・調整機能をワンストップで提供する仕組みとして整備が進められており、日本での医薬品開発のさらなる円滑化が期待されています。
AMED調整役の下田裕和氏からは、日本発の研究成果を実用化につなげるための取り組みが説明されました。特に、創薬スタートアップ育成を目的とした「創薬ベンチャーエコシステム強化事業(Vエコ)」では、国内外の認定ベンチャーキャピタルの投資案件に対しマッチング出資を行うことで実用化を支援しています。日本発のイノベーションを世界市場へつなげる重要な取り組みとして紹介されました。
Vエコ事業の認定VCでもあるRemiges Venturesパートナー桃原隆昭氏からは、同社が2021年に設立したRDiscoveryを通じて、大学や製薬企業が保有する創薬シーズの探索・評価・検証から初期開発までを支援し、事業化につなげている取り組みが紹介されました。有望なシーズについては資金調達や創薬ベンチャーの立ち上げにも関与し、経営体制の構築やガバナンス強化を支援することで、日本の優れた研究成果を世界市場で価値ある事業へと発展させる役割を担っています。
パネルディスカッション:なぜ今、日本なのか
パネルディスカッションでは、日本市場の強みや今後の発展可能性について活発な意見交換が行われました。
「日本の強みと今後さらに発展が期待される分野」をテーマとした議論では、登壇者から、日本が世界トップクラスの基礎研究力を有していることに加え、有望なシーズを有するスタートアップ、一つのことに集中し素晴らしい成果を出す匠の技術力、産学官の関係者間で培われた信頼関係、さらには創薬力強化に向けた政府の強いコミットメントが日本の競争力を支える強みとして挙げられました。
また、「日本への参入や投資がバイオテック企業にもたらす価値」については、Vエコをはじめとする政府支援策や細胞・遺伝子治療製品に対する条件付き承認制度、オーファンドラッグの優先審査制度などが紹介されました。これらの制度は革新的な技術や治療法の実用化を促進する仕組みとして高く評価されました。
さらに、日本の優れた製造技術、研究基盤、高品質なデータセットへのアクセスというメリットに加え、海外企業はグローバル開発や資金調達などの経験を日本にもたらすことができることから、双方が互いの強みを活かしながら補完的なパートナーシップを構築できるとの見解が示されました。
日本を「選ばれる市場」に
今回のセッションでは、各登壇者から海外バイオテック企業との対話を積極的に進めていく姿勢が改めて示されました。
官民が一体となって創薬エコシステムの強化に取り組み、日本を「選ばれる市場」「選ばれる開発拠点」「選ばれる投資先」として発展させようとする姿勢は、多くの参加者に強い印象を与えるセッションとなりました。
