会長ご挨拶

イノベーションが躍動する国を目指して

日本製薬工業協会
会長 上野 裕明

3年間続いたコロナ禍では、世界的な感染拡大により人々の往来が大きく制限され、物資の製造と輸送にも甚大な影響が及ぶなど、社会生活に大きな影響を与えましたが、多くの医療従事者のご尽力と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンや治療薬により、ようやくコロナ禍の前の生活が戻ってきました。この間、さまざまなデジタルツールの活用により、従来では考えもしなかったリモートワーク等の新しい働き方や生活様式が可能となり、こういった点からもコロナ禍は社会の常識を変えたと思われます。

一方、私たちがコロナ禍の教訓として得たものは、医薬品やワクチンはパンデミックとの戦いに不可欠であること、国家の安全保障の観点からも、平時からその対策を講じておかなければならないということです。またパンデミック対策だけではなく、世の中には未だ治療法のない疾患が数多く存在し、それらの疾患に対しても私たち製薬企業は新たな医薬品創出に取り組まなければなりません。ますます重要となる創薬イノベーションを強化・加速させるべく昨年決定した「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」の枠組みに対しても、製薬協として最大限の協力をしてまいります。製薬協はアカデミアやスタートアップを支援するだけではなく、そこから生み出されたシーズをうまく育て、日本発の新薬の創出につなげる役割を果たしたいと考えます。国の強力な支援の下、各プレーヤーが強い意志を持って新たな視点での産学官連携を確立していけば、日本の創薬は加速化し、イノベーションが花開くと考えます。

またイノベーションが継続的に生み出されるためには、イノベーションが適切に評価される仕組みも重要です。それは単に自国のイノベーション創出を後押しするだけでなく、他国のイノベーションを呼び込むためにも重要です。ただ現状では他の先進諸国で承認された新薬が日本の患者さんになかなか届かない、いわゆる「ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロス」の問題が顕在化しつつあります。これらの問題に対処するには日本の医薬品市場の魅力を高め、投資や技術を呼び込むことが必要です。医薬品の価値が正当に評価される仕組み作りに向けて、製薬協はステークホルダーと意見を交わし、あるべき政策について提言してまいります。

意欲ある企業がアンメット・メディカル・ニーズに挑戦し、イノベーションが継続的に生まれ、生み出された医薬品の価値が正当に評価される「イノベーションが躍動する国」を目指します。

このページをシェア

TOP