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日米医療政策の比較と製薬産業

新春特別フォーラム
スタンフォード大学 アジア太平洋研究所
医療政策比較研究プロジェクト アソシエイト・ディレクター
西村由美子 氏
  2004年1月22日(木)、東京・六本木ヒルズで新春特別フォーラム『日米医療政策の比較と製薬産業』を開催いたしました。講師は西村由美子先生。お茶の水女子大学・大学院人間文化研究科博士課程を修了され、91年からスタンフォード大学アジア太平洋研究所で活躍されています。 西村先生のご専門は医療社会学。なかでも医療政策比較研究では第一人者です。長年にわたり、アメリカ、日本、アジアの医療政策を比較研究してこられた経験をふまえ、表題の『日米医療政策の比較と製薬産業』という枠を越え、ご自分の体験も織り込みながら講演されました。

●アメリカ医療制度――改革の10年間
講演の始めは90年代アメリカの医療制度の変革について。アメリカの医療が90年代に医療制度、特に医療保険制度の改革が、ほぼ革命とも言えるような変化をしましたが、それ以前とそれ以後を比較して、何が問題点であったのか、どこが改善されたのか、そして結果現在どうなのかが要領よく説明されました。

 アメリカの医療保険が出来高払いからマネジドケアに移行する過程、移行してマネジドケアの各種保険の加入者の推移、医療費の推移、アメリカでは7人に1人と言われる無保険者の問題、なぜ無保険なのか、その実態や所得分布などが、図版やグラフを利用して解説されました。

 その10年間にアメリカの医療マーケットで起こったことは、従来型の出来高払いが激減し、制約は多いが保険料が安いマネジドケア(HMO)が約3割を占め、従来型が減少した分HMOより保険料は高いが、医療の選択肢が多いマネジドケアが増えてきたことなどです。

 もともとマネジドケアへの移行は、医療費の高騰を抑制するためのものであり、なぜ医療費は増えるのか、無保険者による医療費の増大とはどういうことなのか、公的負担であるメディケア、メディケイドの医療機関への支払い状況はどうなっているのか、などが詳しく説明されました。そしてそれに加え新薬や新治療の登場により、医療費は金額的には抑制されたとは言えず、逆に増えているのではという分析が説明されました。

●製薬産業が国民の健康に貢献するとき
 また、医薬品については米国国民医療費総支出内訳、病院の収入、医師の収入などのデータとともに医薬品への支出額の伸び、伸び率の鈍化、医薬品の処方と患者さんへの説明について、医師や薬剤師の対応の日米差など、医薬品に関しても多くの米国事情がわかりやすく解説されました。そのほか患者さんが加入している保険によって、外来用医薬品の給付額の制限があるなど、アメリカならではの事情をご自分の体験を交え、家族構成や家族の需要の変化に伴い、毎年保険を更新する必要があるなどを語られました。

 薬の価格に関しても時間が割かれました。アメリカの薬の価格は高い。膨大な開発費がかかることは理解できても高いという問題があり、また内外価格差の問題も説明されました。具体的にはアメリカの医師の処方箋があれば、処方薬はカナダで、アメリカの2割から6割程度の価格で買えるとか、薬品買出しツアーがあるという問題でした。

 アメリカの産業別総収入収益率トップ10や総資本収益率トップ10のデータでは、製薬産業は勝ち組みに入っていることを指摘され、日本でも製薬産業の役割を、制約は多いけれども、製薬産業がその持てる力を国民の健康に対して、どのような提案ができるのかが今後の日本人の健康と、製薬産業の関わる形になるだろうと予測と希望を述べられました。

●既存のデータの後利用で価値を産む
 医療政策の研究の場合、詳細なデータが得られるかどうかが大変重大な問題であり、日本では従来きめ細かなデータの入手は困難であり、研究者にとっては大きな悩みとなっていました。しかし西村先生の研究チームは、日本の医療機関、医療の現場で既成のシステムに既に蓄積されているデータを利用し、整理し、使い勝手のよいものを作ることができるか、という試作中のシステムのデモンストレーションも行われました。

 このシステムは、日本では国民皆保険制度であり、どの医療機関も診療報酬という形で保険機関に請求が行われている。それは個々別々だが、全体からみればスタンダード化されたデータが流れており、このデータを吸い上げることができれば緻密な医療情報が得られる、という発想により試作されたものです。

 従来こうしたデータ集積作業には電子カルテの普及が欠かせないと言われてきましたが、西村先生の構築されたシステムは、既存の医事会計システムのデータと、企業などにある個人の健康診断データなどに相関関係をつけ、システム化して、どこからでも閲覧したり、ダウンロードできるようにするものです。既に岩手県で実験しており、パソコン上でシミュレートされた画面が紹介されました。これらのデータを後利用することにより、今後の医療政策や研究に、安価で大いに役立つものと期待されるとのことでした。


 本講演は、3月6日(土)に経団連会館(東京・大手町)で開催する、製薬協の政策セミナー『日本経済の活性化と製薬産業 Part Ⅱ』にさきがけ、同セミナーでコーディネーター役を務めていただく西村先生に、自由に現在の医療政策の最新研究事情などをお話いただくことを趣旨に、ジャーナリストの方々を対象に開催しました。 データや資料には現われない部分、また活字では発表できない雑感なども含めた講演は、短い時間でしたが幅広く深い内容に終始し、講演後の質疑応答も活発にテンポよく展開し、予定時間をオーバーしつつも、盛会のうちに終了しました。

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