めざましい医療の発展とともに、くすりもまた新たな進化を遂げようとしています。なかでも注目されているひとつが「抗体医薬品」と呼ばれる治療薬。これは、人間にもともと備わっている免疫機能を人工的に利用し、病気を治療するもの。副作用が少なく、これまで難しいとされてきた疾患・病態での高い効果を期待されており、がんをはじめ、関節リウマチ、クローン病といった自己免疫疾患や、感染症などの治療に役立てられようとしています。

正常な細胞を傷つけることなく、がんなどの悪い細胞だけをピンポイントで狙い撃ちにする「分子標的薬」もまた、注目されている治療薬のひとつ。
病気を引き起こす遺伝子へとダイレクトに働きかけるため、より高い治療効果が期待できます。さらに、従来の抗がん剤と比べると、副作用が少なくすむこともあり日常生活への支障を減らすことができます。
このような分子標的薬や抗体医薬品の多くは、遺伝子組換えや細胞融合等のバイオテクノロジーを駆使してつくられている“バイオ医薬品”と呼ばれるもので、治療の進歩に大きく貢献しています。

「ドラッグデリバリーシステム(DDS)」とは、くすりを届けたい場所へ、必要な量だけを、必要な時間に直接届ける技術のこと。患部だけに狙いを定めて、くすりの効果を発揮するため、高い治療効果が望めることはもちろん、副作用を最小限に抑えられるのも大きな特長です。
DDSの技術もまた日々進歩しており、“ナノカプセル”と呼ばれる特殊な顕微鏡を使ってようやく視認できるほどの極小カプセルにくすりを充てんすることで、細胞の内部にまで届けることも可能となってきました。
