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低分子医薬品の標的分子と分子量
─過去47年間の上市品からの調査─
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GPCRは、1990年代のアンジオテンシン受容体やロイコトリエン受容体から、2000年代のエンドセリン受容体やニューロキニン受容体、2010年代ではP2Yタイプの受容体が各々の年代でのトレンドとなっており、循環・血液系や呼吸器系を疾患領域としている品目が多いことが確認されました。
 加水分解酵素の1990年代は、ペニシリン結合タンパクとエイズウイルスのHIV-1プロテアーゼが主体の標的分子となっています。ペニシリン結合タンパクは1980年代から1990年代にかけて数多く上市されたセフェム系抗菌薬の標的分子です。HIV-1プロテアーゼを標的分子とする上市品のすべての分子量が500を超えています。さらに、2010年代に入ると、C型肝炎ウイルス(Hepatitis C Virus、HCV)のNS3/4Aプロテアーゼを標的分子とする薬剤が立て続けに上市され、分子量が700を超える薬剤も多くなっています。これら薬剤は、経口剤としての低分子医薬品の分子量基準の目安である500を大きく超えており、中分子量の領域にあると言えます。
 転移酵素は、2000年代以降、一連のキナーゼファミリーから新規標的分子が数多く登場しており、がんを疾患領域としています。分子量が500~600の上市品が多いことが確認されました。
 リボソームRNAからはクラリスロマイシンに代表される大環状のマクロサイクル構造の天然物類縁体が、チューブリンからはドセタキセル、エリブリンのような天然物や天然物類縁体が各年代で上市されており、それらの分子量は700~900の範囲となっています。さらに、近年注目されているタンパク質間相互作用は、天然物であるタクロリムスが1990年代に、それら類縁体が2000年代に各々上市されており、分子量は800~900となっています。2010年代では、HCVのNS5A複製複合体やBcl-2等の複数の標的分子から天然物ではない合成化合物の上市品が登場しており、分子量も600~900の範囲に及んでいます。

まとめと中分子医薬への期待

過去47年間に上市された低分子医薬品のデータセットを用いて、標的分子の機能別分類に基づき低分子医薬品を分類し、上市品目数と分子量中央値の年代推移を調査しました。
 標的分子の機能別大分類では、受容体と酵素が上市品全体の約80%を占めており、双方の分子量中央値は1970年代より増加を続けており、2010年代では受容体は451、酵素は434でした。機能別小分類では、受容体の主体はGPCRであることが確認され、これが受容体全体の上市品目数と分子量中央値の年代推移の傾向を決めています。
 酵素の機能別小分類を見ると、1990年代までは酸化還元酵素と加水分解酵素が上市品の主体でしたが、2000年代以降は、転移酵素と加水分解酵素が、分子量増加を伴いながら上市品の主体となっています。機能別分類外のその他に分類される標的分子では、タンパク質間相互作用の薬剤が2000年代以降、着実に上市されており、2010年代での分子量中央値は600を超えています。
 低分子医薬品の分子量の分布量は年代とともに増加していますが[2]、今回の機能別小分類に基づく標的分子と分子量の調査により、GPCR、転移酵素、加水分解酵素、そしてタンパク質間相互作用を標的とする薬剤が分子量増加に寄与していることが明らかとなりました。
 さらに、分子量500を超える上市品に焦点をあて、機能別小分類から具体的な標的分子を対応させたところ、近年では転移酵素からは種々のキナーゼ群が、加水分解酵素からはHCVのNS3/4Aプロテアーゼ、タンパク質間相互作用からはFK506結合タンパク、HCVのNS5A複製複合体、Bcl-2等を標的分子とする上市品が複数抽出されました。
 特に、タンパク質間相互作用を標的分子とする上市品は、約半数が700を超える分子量の薬剤で占められており、低分子医薬品の一般的な分子量範囲(<500)ではなく、これらは中分子量の薬剤群と言っても良いと考えられます。このように、タンパク質間相互作用を標的分子とする薬剤は、低分子量では対応できずに中分子量の分子サイズを必要とする場合が多いことが確認されました。
 最近、将来の医薬品モダリティの一つとして中分子医薬品が次世代の革新的医薬品として注目されています。従来の低分子医薬や抗体医薬では、標的分子の宝庫とされる細胞内のタンパク質間相互作用に関与する機能性タンパク質を創薬の標的分子とすることが困難とされてきましたが、中分子医薬はこれら機能性タンパク質を創薬の標的分子とすることが可能であることが、その理由として挙げられます。

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