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「2017 ライフサイエンス知財フォーラム」を開催
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また、再生医療等製品の場合、FTO調査が非常に難しいと考えられます。第三者特許を回避した技術の開発と必要な特許出願をするわけですが、その際、広範な細胞を包含し、回避困難な基本技術の特許が特定企業に独占されていると、製品全体の開発が阻害されるリスクがあります。これら製品の製造では複数のカテゴリーの複数の特許を実施することになり、しばしば特許権者も複数ということになります。つまり、1社独占は難しい世界です。一方で、1企業が汎用的な基本技術の特許を取得したり、アカデミアが特定の私企業に対して広範な独占ライセンスを提供するというリスクがあります。そこで、基本技術の知財をアカデミアが取得し、適切にライセンスすることが1つの解決法であり、企業にとっても製品開発に向けたアカデミアとの連携は重要となります。
 再生細胞医療の究極の目標は、生体内細胞と同じものを作ることです。よっておそらく新規性がないとされて特許は取れません。また細胞の分化は連続的であり、“中間体”細胞と製品の”有効成分”細胞の境界が不明確な場合があります。また生体の細胞の「再生」ですから、細胞の効能・効果が自明な場合も多いと考えられ、特許を取得できるのかという問題があります。そのため、承認を受ける有効成分の物質・用途特許の取得は、生体内の細胞に近づけば近づくほど低分子医薬品の場合よりも難しいと考えられます。細胞の選別・生成工程・培養工程により生体内の「細胞集団」と区別できる「細胞集団」(組成物)が得られた場合に、新規性があると言えるでしょう。次に、細胞を定義する「構成要件」に求められる条件ですが、定義された細胞の範囲が明確で、記載要件を充足し、第三者の細胞がクレームに該当するかどうかが判別可能であることを要します。たとえば、添付文書等や細胞製品を入手して分析・判別することが考えられますが、今の技術では難しいのではないかと思われます。自社特許と他社特許が「特許の藪」のように存在した場合に、それらの区別は困難です。企業が安心して研究開発活動をし、日本がこの分野で世界をリードして発展させるためには、多数の企業が実施する範囲を含んで特許を成立させ、クロスライセンス等の手法を取りながら、広く実施許諾する状況が必要になります。
 そこで、私見ですが、問題提起をしますと、基本発明についてはアカデミアが特許を取得して広くライセンスを認め、企業は製品に関する特許を取得するのが望ましい姿だと考えます。最終製品に係る特許については独占が必要ですが、プラットフォーム技術に係る特許については、各社が独占すると特許の藪の問題が生じ得ます。守るべきコア領域を特定し、オープンクローズ戦略を効果的に実施してこの分野を発展させる必要があります。国家主導でのエコビジネス・コアシステムを構築していき、コンソーシアムの結成等日本全体としての発展を期待します。

京都大学 iPS細胞研究所 臨床応用研究部門 教授 髙橋 淳 氏
■基調講演

パーキンソン病に対するCell-based therapy
京都大学 iPS細胞研究所 臨床応用研究部門 教授 髙橋 淳
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進化的に古い生物であるプラナリアでは、どこを切ってももと通りのからだができてきます。そもそも生物は、からだ全体の自己修復、再生能力をもっていました。たくさんの細胞からできている人間のからだにも幹細胞は存在し、皮膚や腸の粘膜等は再生しますが、再生能力は限られています。このように生物は、進化とともに再生能力を失ってきましたが、クローン羊(ドリー)からもわかるように、成熟した細胞でもすべての遺伝子をもっています。ただ、遺伝子に鍵が掛かっており、それを取り外す必要があるだけで、高等生物も自己修復する可能性を秘めているという概念はあり、それを引き出したのが山中先生のiPS細胞(人工多能性幹細胞)です。
 今や人類は、iPS細胞やES細胞(胚性幹細胞)といった細胞を手にしました。これまでの薬、電気的刺激、遺伝子治療等に共通する考え方は、今ある細胞でいかにやりくりするかということでしたが、iPS細胞やES細胞を手に入れたことにより、失われた細胞を新たに補うこと(細胞移植)が可能になりました。
 たとえば、パーキンソン病ではドパミン神経細胞が脱落しており、ドパミン前駆体であるL-ドパやドパミンと同じ作用をもつ化合物の投与といった薬物療法がメインで、その他に電気を流す治療法等も使用されていますが、これらの治療には限界があります。パーキンソン病の根本原因は神経細胞の減少なので、ドパミン神経細胞の移植が有用となります。ドパミン神経細胞は、足りないドパミンを補うだけでなく、L-ドパからのドパミンの合成も助け、細胞移植が薬物治療を助ける意味合いももっています。逆に、薬も移植細胞の生存や軸索を伸ばすシナプスを作るといったことを助けることができ、薬と細胞は相互に助け合う、相互作用が期待できるという関係にあります。さらには、これにシナプス形成等につながるリハビリテーション(医療機器)を加えた三者が三位一体となって細胞を中心とした新しい治療戦略が可能となります。

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