製薬協について 製薬協について

政策研のページ

最新号目次へ 既刊号一覧2014年5月以降2014年3月以前 pdf
178号タイトル
政策研のページカテゴリ画像
前へ12345次へ
医療・ヘルスケアにおけるIoT(Internet of Things)
line03 line03 line03

ベンチャー企業との連携という視点では、連携模索の取り組みが、国内でも活発化し始めています。代表的なものとして、MSDとグロービス・キャピタル・パートナーズの共同で開始された「ヘルステックプログラム」、バイエルによるデジタルヘルス・スタートアップを対象とした助成プログラム「Grants4Apps」、さらに第一三共と武田薬品工業、DeNAの三社共同で開催したデジタルヘルスのMeetupイベント「D2T Meetup」などがあります。また、アステラス製薬は米国にデジタルヘルス領域における投資会社「DigiTx Partners LLC」を設立しています。

普及するうえでの課題

医療・ヘルスケア業界におけるIoTの活用は期待が大きい半面、普及するうえでの課題も多く存在します。個別事例によって状況は異なりますが、一般論としての主な課題を以下に挙げます。

1.ユーザーの利用

ウェアラブルデバイスや服薬管理デバイスなどは供給者の視点に立てばさまざまなデータが得られ、医療や健康管理の質の向上につながることが期待されています。ただし、それを使用する患者や一般消費者の立場ではどうでしょうか。多くのサービスは、データの入力やデバイスの装着などの手間がかかります。その手間を上回るメリットをユーザーが感じ、継続的に使用してもらうことができるかが普及させるうえで大切な視点となります。サービスを利用することが楽しいと思わせるゲーミフィケーションという視点や、いかに日常生活と変わらない動きの中でデータを取るかといった視点が重要になると考えます。
 また、IoTサービスを展開するうえではスマートフォンやタブレットがデータ通信のハブとなりデータの自動収集を想定しているものが多いですが、高齢者向けのサービスの場合、スマートフォンの所有率の低さや、ICTへの抵抗感が課題になるといわ れることがあります。 た だし、60代 のスマートフォンの 所 有 率 は、2013年 に17.9%であった の に対し、2016年で は47.0%と2.6倍に増加しているというデータもあります[2]。Webによる調査ですのでバイアスもありますが、利用率上昇のトレンドは見逃せません。高齢者も含め、使いやすさなどの工夫は必要だと考えます。



2.マネタイズ

ヘルスケア分野のIoTビジネスの課題として挙げられるのが、誰から、いくら料金を取って利益を出すのかというマネタイズです。どのビジネスにおいても考えなければならない点ですが、ヘルスケアの場合は特に複雑です。たとえば健康管理サービスの場合を考えてみますと、ユーザーは患者・消費者です。通常はユーザーから課金するというのが一般的な考え方ですが、ユーザーに料金を払ってもらうのはそれなりにハードルがあると考えられています。健康管理などの場合、個人がメリットを実感するまでに時間がかかるという点や、日本においては米国と比べて医療費の個人負担がそれほど高くない点などが理由として考えられます。一方、医療・ヘルスケア分野では、保険者など費用負担の構造が複雑ですので、健康促進による受益者はユーザー本人だけでなく保険者や国も該当します。さらに、これらIoTサービスから得られるデータは製薬・食品・健康関連企業や保険会社にとっても価値がある可能性の高いものです。これら受益者を俯瞰的に捉え、マネタイズを考えることが欠かせません。

3.エビデンス

医療分野へ進出する場合は、エビデンスが重要となります。それは、生命にかかわる分野であること、費用負担に公的側面があること、医療行為については承認が必要であることなどの理由が挙げられます。また、ヘルスケア分野においても、医療分野のプレーヤーを広く巻き込む必要がある場合には、アウトカムのエビデンスを示すことが必要かもしれません。

4.データの二次利用

データ利用する企業の視点で考えた場合、データの質、ほかのデータとの統合、規制、解析技術・スキルなども課題となります。データの質という点では、二次利用の用途にもよりますが、データの精度、欠損の有無などが問題となる可能性があります。また、そのデータ単独で利用価値があればよいですが、ほかのデータと組み合わせる必要がある場合にはデータの統合が必要となります。さらに、データの統合やそもそも二次利用を行うには、個人情報保護法など規制の壁も懸念されます。また、そうして得られたデータは膨大な量と複雑性を含んだデータになりますので、どう解析するかという課題に対して、AIといった技術やデータサイエンティストといわれるスキルも必要となると考えます。

前へ12345次へ
最新号目次へ 既刊号一覧2014年5月以降2014年3月以前

このページのトップへ