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「製薬協メディアフォーラム」を開催
テーマは「最新のがん治療 ―がん免疫療法―」
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遺伝子変異

免疫系は自己と非自己を見分けるので、がん細胞の中に免疫系が非自己と認識する抗原が多量にある患者さんには臨床効果が出やすいのではないか、という仮説がもう1つの戦略です。そこで調べられているのががん抗原です。従来のがんワクチン療法では、がんの患者さんの半数ぐらいにシェアされて発現しているがん抗原を標的として検討が進められてきました。これらのがん抗原は、がん患者間で共通であるためシェアード抗原と呼ばれますが、そのほぼすべてが自己抗原であるため免疫応答はそう簡単に起こりません。一方、がん細胞は遺伝子変異が蓄積して発生してきますので、がん細胞の中にはそれらの遺伝子変異に由来する抗原がある、ということがわかってきました。つまり、遺伝子変異が入っていると、その変異部分は免疫系にとっては今まで経験したことがない分子、すなわち異物なわけです。抗CTLA-4抗体を投与された患者さんで、遺伝子変異が多い患者さんは、臨床効果が出やすかった、ということがわかっています。本邦で承認済みの悪性黒色腫、非小細胞肺癌の患者さんの遺伝子変異について調べた論文を見てみると、これらのがん種は遺伝子変異が多いがんであることがわかりました。これで、決着したかというと、そうではなく現在承認申請中の腎細胞癌はそれほど遺伝子変異が多いわけではありませんが、臨床効果があることがわかっています。したがって、これもまだまだ完璧なバイオマーカーではありませんが、少なくとも一定の予測ができることは事実ですので、もう少し研究が必要です。

ネオ抗原

さらに詳しく、これらの自己抗原に由来するシェアード抗原と遺伝子変異に由来するネオ抗原に対する免疫応答を調べてみると、自己に由来するシェアード抗原に対するCD8+キラーT細胞は、免疫抑制性の制御性T細胞に抑制されると、その後の抗原刺激に対してまったく反応せず、不応答(アネルギー)になることが明らかになりました。一方で、外来抗原に対しては、制御性T細胞の抑制はほとんど効かずCD8+キラーT細胞は活性化される、ということがわかりました。つまり、外来抗原であるネオ抗原に対するCD8+キラーT細胞が浸潤してくると、そこに炎症が起こります。そうすると、腫瘍はPD-L1を出し、ちょうど今から攻撃しようとやってきたCD8+キラーT細胞を抑制します。この状態に抗PD-1抗体を投与すると、PD-L1による免疫抑制を排除できるので高い抗腫瘍効果を発揮します。このような患者さんにはおそらく抗PD-1抗体だけを投与すればうまくいくだろうと考えられます。
 一方で、残念ながら7、8割の臨床効果がみられない患者さんでは、それほど多数の遺伝子変異がないため、遺伝子変異に対するT細胞が誘導されません。つまりがん抗原の多くは自己由来のものなので、制御性T細胞が来て免疫抑制がかかってしまいます。こういった患者さんには、まず免疫抑制をはずした後、免疫活性化を誘導する、といった手順でがん免疫療法を進めていかないといけないのではないか、と考えています。
 T細胞の浸潤をどうやって上げるか、がんをどうやって異物として認識させるか、T細胞の活性化をどうやって促進するか、そのためには抑制細胞をどうコントロールするのか、こういった研究を進めることで新しいがん免疫療法を開発していこうと考えています。

3. 免疫チェックポイント阻害剤の今後の展望

がん免疫治療でよく聞かれることのなかに、どんながん種に効果があるか、という質問があります。少し乱暴ではありますが、がん免疫療法が効果を発揮するがん種として、「免疫担当細胞が浸潤していることと臨床的な予後とに関連性がある」というデータがあるかについて調べてみました。するとほとんどのがん種でそのような関連性を示すデータがあります。ですので、適切ながん免疫療法を開発すれば、多くのがん種で臨床効果が期待されるのではないか、と考えています。
 その1例を示しますが、悪性黒色腫と非小細胞肺癌は、ともに腫瘍の中に浸潤したT細胞の数が多いほど、浸潤したT細胞の数が少ない患者さんより予後が良いということがわかっています。それならば、どうやってリンパ球を浸潤させていくかを検討しなければなりません。その方法として併用療法があります。

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