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海外研修を終えて
―オランダ、ベルギーでの生物統計学、臨床研究について―
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エラスムス大学での生物統計、臨床研究教育について

生物統計学の研究では、研究の動機、理論の適用例として、実際の臨床試験、臨床研究のデータが使われる場合が多いです。教室での研究では、前述のロッテルダムコホート研究や、ヨーロッパの国際共同研究のデータが用いられていました。教室では主にベイズ統計学、ジョイントモデルに関する研究が多く行われていました。ベイズ統計学とは観察されたデータに、事前情報を組み込むことで、データやモデルからだけでは得ることができない知見を得る方法です。アメリカ食品医薬品局(FDA)から医療機器での応用に関するガイダンスが示され、近年、さらにさまざまな分野での応用が進んでいます。ベイズ統計学に関して、学内セミナーや集中講義が盛んに行われていました。集中講義では、半分はベイズ統計学の基礎から応用までの理論的な講義、残りはソフトウエアによる実演、実習でした。大学院授業の一環として行われ、受講者はアカデミアだけでなく企業から参加されている方も少なくありませんでした。
 大学では、臨床研究を志す研究者、臨床家向けに、夏と冬に3週間の臨床研究方法論のコースが開催されていました。初歩から応用まで多種多様なカリキュラムが組まれています。週末を除く午前もしくは午後に各セミナーが組まれています。コースの期間を通して、複数の授業科目を履修すれば、臨床研究の方法論の基礎はひととおり身に付けられるようなシステムになっていました。講義はすべて英語で行われ、講義だけでなく、PCによる実習や、提示されたテーマについてのディスカッション、さらにグループでの発表があるコースもあります。講師はエラスムス大学の教授陣だけでなく、世界中から著名な先生が招かれ、授業が開講されていました。参加者も世界中から来ており、日本からも毎年数名が参加しているようでした。将来、日本においても、こういった国際的な臨床研究のコースが開催されることを期待したいと思います。

ルーヴァン・カトリック大学生物統計センターについて

ルーヴァン・カトリック大学図書館と桜ルーヴァン・カトリック大学図書館と桜

ルーヴァン市はベルギーの首都ブリュッセルから鉄道で30分ほどのところにある大学町で、オランダ語圏(北部:ブラバント地方)にあります。ベルギーはビールで有名ですが、ルーヴァンにはインペブというビール会社の本社、工場があり、しばしば麦芽の香りが街中に満ちあふれていました。
 生物統計センターは、繰り返し測定データの解析で用いられる混合効果モデルで有名なGeert Molenberghs教授が在籍しています。生物統計センターは、ルーヴァンから1時間ほどにあるハッセルト大学との連携大学院となっています。ハッセルト大学では、オンラインでの生物統計学の修士課程が開講されています。センターは4名の教授、十数名の教員、ポスドクやフェロー、大学院生で総勢約50名以上が在籍していました。ベルギー内外の大学統計学関連学部との連携も盛んであり、月に数回セミナーが開講されていました。私が在室していたフロアの研究者仲間も、エチオピア、ブラジル、イラン、ロシア、そして本国ベルギーといった顔ぶれで、国際色にあふれていました。教室の中ではほぼ英語のコミュニケーションでしたが、大学での講義は、オランダ語で行われているものも少なくありませんでした。

最後に

研修は、Emmanuel Lesaffre教授のもとで研究に従事しました。教授は、Wiley社からベイズ生物統計学についての著作を刊行しています[1]。本書は最近、日本語の翻訳が刊行されました。
 指導教授の突然の異動に伴い、前半をオランダ、ロッテルダムで、後半をベルギー、ルーヴァンで研修を行いました。期間中は、主にベイズ統計学に関する理論と応用に関する研究を行うことができました。今後、さらに研究を深め、医薬品、医療機器での応用研究にかかわっていければと思います。
 本研修では、教授の異動に伴い、図らずも研修計画の変更を何度かさせていただきました。日本臨床薬理学会のみなさまに多大なご迷惑をおかけしたことをこの場をお借りしてお詫びしたいと思います。またご支援いただきました製薬協の関係者のみなさまには厚く御礼申し上げます。異国での数多くのトラブルにもかかわらず、今回このような貴重な経験ができましたのは、広くみなさまのご支援の賜物と真に感じております。この場を借りまして改めて心より感謝申し上げます。


mark [1]
Lesaffre E, Lawson AB: Bayesian Biostatistics. Wiley, 2012.(訳本:医薬データ解析のためのベイズ統計学 共立出版 2016)
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