製薬協について 製薬協について

政策研のページ

最新号目次へ 既刊号一覧2014年5月以降2014年3月以前 pdf
170号タイトル
政策研のページカテゴリ画像
前へ1234567次へ
アメリカのPrecision Medicine Initiative
line03 line03 line03

遺伝子検査やタンパク/ペプチド検査といったいわゆる「次世代診断・検査」の2013年のグローバル市場を分析してみると、解析技術別の市場の71%は遺伝子解析が占めています。解析のデバイスはリアルタイムPCRやDNAマイクロアレイなど多数ありますが、解析技術の中心はNGSです。また21%はセルフリーDNA解析が占めていますが、セルフリーDNA解析はNGSを用いる遺伝子解析のカテゴリーと見なせるので、実に次世代診断・検査の9割以上で遺伝子解析技術が用いられているという状況です。
 またその地域別の市場を見るとアメリカが85%、ヨーロッパが10%、その他が5%と圧倒的にアメリカの比重が高くなっています。このことは個別化医療(予防・先制医療を含む)を実践できている国が、現在アメリカをはじめとする限られた国であることを示しています。中でもアメリカの一極集中が際立っています[6]
 そのアメリカが100万人以上のボランティアによるコホート研究やがんの治療アプローチの開発に大きな特別な予算を付けて推進しようとしています。予算的には新たな100万人コホートを実施できる額には遠く及びませんが、すでに進めているコホート研究等の統合化も見据え、大規模なバイオバンクを新規に創設して1つの巨大なデータベースを構築しようとするものです。このバイオバンクの導入に当たって国立学術研究会議(National Research Council、NRC)は医療記録を持っているアメリカの成人100万人を対象に、医療・遺伝子情報を含む大規模研究データベースを構築することを提案しています。すでに「eMERGE」プロジェクトで、複数の施設の電子カルテとゲノムデータを組み合わせた個別化医療の取り組みが進められていますので、その方法を用いた国家的データベースの構築が提案されています。また、現在最もゲノム医療が進んだ領域であるがん領域のゲノム研究に対して、新たな追加的予算が付けられました。
 さらに予算額は大きくはありませんが、アメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration、FDA)にPrecision Medicine推進を見越したレギュレーションやそのためのデータベースの整備をする予算、全米医療情報技術調整官室(Office of the National Coordinator for Health Information Technology、ONC)に個人情報保護などの整備のための予算と、基盤整備の核となる推進内容に特別な予算を付けたことも意義深いと感じます。
 今回のオバマ大統領の一般教書演説や、すでに大きな展開が図られているNIH、アカデミアの動きを含めた一連の取り組みは、アメリカがこの分野の膨大なデータの「Data Science」を推し進め、基礎研究から産業技術イノベーションに至るすべてのイニシアチブをとり続ける決意を感じるものです。






mark [6]
予防医療・個別化医療のための次世代診断・検査開発とビジネス展開の方向性(2014年6月)シード・プランニング

Precision Medicine Initiativeによる「医療」の変化

Precision Medicineが浸透することによって、医療はどのように変わっていくのでしょうか。
 ゲノム医療では生まれながらの個人のゲノム情報の差異(遺伝子多型や変異)によって、患者一人ひとりに対する「個別化医療」の実現が目指されてきました。単一遺伝子性の遺伝疾患や先天性代謝疾患などで成果が見られ、薬剤反応性に関する遺伝子多型の発見によって、薬剤効果が出る患者と出ない患者の区別ができるといった一定の前進はありましたが、多くの多因子疾患では「個別化医療」の成果はあまり上がらず、進展は限定的であったと考えられています。
 その後遺伝子発現プロファイル(トランスクリプトーム)、プロテオームなどのいわゆるオミックス情報が広く収集可能になるにしたがって、現在では「オミックス医療」の研究が主流となりつつあります。疾患オミックスプロファイルは早期診断、至適治療、予後予測を正確かつ迅速に判断できると期待されており、すでに乳がんなどの臨床において先制医療に応用されています。
 さらに、近年は個々の遺伝子などの分子的差異や異常が直接的に病態(臨床表現型=臨床フェノタイプ)を形成するのではなく、それらが相互作用して形成された「分子パスウェイやネットワークの調節不全や歪み」が疾患つまり臨床フェノタイプを発症させるという概念が提唱されています。これからのPrecision Medicineでは、これらオミックス情報や分子ネットワークの知見なども含めて、患者の診断・サブグループ分け、そして個々人に最適の予防や治療が実施されることを目指していくと考えられています。

前へ1234567次へ
最新号目次へ 既刊号一覧2014年5月以降2014年3月以前

このページのトップへ