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長崎大学熱帯医学研究所における
感染症研究およびフィールド研究の現状

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皆川 昇 氏

2. 「アフリカのマラリアおよび
デング熱媒介蚊の生態と対策」

長崎大学熱帯医学研究所 病害動物学分野 教授 皆川 昇

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気候変動とマラリア流行の関係

1990年代に、東アフリカの標高1500mの高地を中心にマラリアが流行した当時は、温暖化、エルニーニョが原因と考えられていました。その後、日本海洋研究開発機構(Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology、JAMSTEC)が西インド洋の海水面の温度が上がるダイポールモード現象を発見し、東アフリカでは、亜熱帯ダイポールモード現象の影響によって水蒸気が多く発生し、雨を降らせ、洪水が起こるという一連の気候変動が、マラリアの流行に影響していることを解明しました。
 これまでも、雨が降れば、マラリアが流行することは、経験的にわかっていましたが、発展途上国では、1ヵ月程度の経験値による予測では、短すぎるし、信頼性にも問題がありました。その点を補うべく、気候変動予測モデルをもとに、もっと前から感染症流行の長期予測ができるようになれば、余裕をもって、薬の備蓄や配布が可能となり、対象地域に対応措置を取れるようになります。

新型オリセット蚊帳を使った介入研究

殺虫剤付き蚊帳は、効果があることがわかっていましたが、媒介蚊のほうで殺虫剤に対する抵抗性をもつようになり、その効果が損なわれる可能性が出てきました。そこで、蚊の殺虫剤抵抗性を損なうような成分を含んだ新しいオリセット蚊帳を使った介入試験を行い、子どものマラリア感染を減らす効果があることを確かめました。ところが、現地の生活環境を調べると、年齢とともに、親から離れて床に寝るようになり、蚊帳の外に出てしまうことで、感染率が高くなることが問題となっています。そこで、蚊が天井で休む習性を利用した天井に取り付けられるオリセット蚊帳を開発して介入試験を行ったところ、従来の蚊帳の外で寝る子どもの感染を長期に低く抑えることができました。

デングウイルス媒介蚊研究

昨年、東京で発症が確認され、大きな騒ぎとなったデング熱の媒介蚊といわれるヒトスジシマカは、日本でも生息しています。60年前には関東が北限でしたが、近年、青森まで生息地を広げており、温暖化の影響であると考えられています。アジア起源ですが、物流のグローバル化により世界各地に分布を広げています。
 一方、ネッタイシマカは、アフリカ起源ですが、人の移動で熱帯地方を中心に世界各地に分布を広げており、台湾の南部にまで定着しています。東南アジアでは、ヒトスジシマカよりも都市環境に適応しており、人口密集地に生息し、感染能力も高く、より危険な蚊といわれています。そのため、ウイルスをもって日本に入った場合のリスクなどを想定しています。なお、国内ではすでに空港で発見されています。
 これらに対し、日本および現地での対策に活かすための、J-Grid拠点ネットワークを利用し、世界各地に生息するデング熱ウイルス媒介蚊の分布、殺虫剤抵抗性、蚊細胞内でのウイルスの繁殖度、遺伝情報など、その特性に関する観測を実施しています。

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