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「2015 ライフサイエンス知財フォーラム」を開催
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高尾 幸成 氏

■ 講演3|iPS細胞技術普及と特許について

京都大学 iPS細胞研究所 知財管理室 室長

高尾 幸成

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京都大学の山中伸弥教授が最初にiPS細胞を発見したとき、山中教授はこれを産業に使う際に一番のネックとなるのは知財であると考えました。当然知財がブレーキにもアクセルにもなり得ますから、うまく知財を使っていかないとiPS細胞の利用は止まってしまうと懸念され、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)では知財の専門家が張り付いて対応しているという現状です。
 今回の講演では、iPS細胞技術の普及と知財戦略の問題点を提起、すなわち特許の排他性のみを強調するとiPS研究は止まってしまうという懸念について話し、知財をうまく活用することによってiPS技術を進展させる方法を模索したいと思います。
 現在、iPS細胞を用いた臨床研究がさまざまな大学などで進んでいるわけですが、このiPS細胞はCiRAが「もの」そのものを供給するというビジネスモデルで標準化を図るという方法を取っています。つまり、CiRAから配られたiPS細胞は自動的に標準化ができているということになります。このようなモデルの中で、知財の懸念はFTO(Freedom to operate)、つまり人の特許を使わないということです。iPS細胞を作るというだけでさまざまなポイント(細胞の種類、導入方法、初期化因子、補助剤、培養条件、選択方法など)で発明が生まれ特許になります。もし、これらのポイントで何百という特許がすべて成り立ち、標準化に使う技術になれば、これらを全部集めなければiPS細胞を作れないという状況になります。現在、基本特許は京都大学以外は保有していないという状況ですが、細胞の特許が複雑であるがゆえに、多くの企業がさまざまな特許をもち、そのうちの1社がオープンイノベーションに参加しなかった場合、iPS細胞は普及しない、産業として発展しないという事態が起こります。
 その対策として、CiRAでは基本特許を各国で成立させ、クロスライセンスという形でFTOを確保しています。すなわち、少なくともiPS細胞を作成するというところはインフラストラクチャー、産業の基盤と考え、特許による独占を防ぎ、広く実施できるように努めなくてはならないと考えています。  次にやはり特許で守られていない限り、製品化は難しいという話をします。1つは後発品対策です。バイオシミラーなどの後発品は価格的に圧倒的に有利であるため、特許で先発品を保護しなければ技術進展を促すことができなくなります。
 現在、細胞の特許は製造法が中心のため、最終製品が同じであっても製造法が違えば保護できなくなります。すると、事業が成り立たず、産業自体の発展が望めません。一方、細胞は多段階の工程にて製造されますが、最初の工程はさまざまな細胞を作製することに利用され得るため、最初の工程の特許保持者は、比較的広範に影響力を有することになり、事業面から考えると大変に有利になります。しかし、この広範な影響によって、自社事業以外の範囲においても他者参入を抑制するという点では、弊害をもたらします。したがって、独占とオープン化の境界をどこに設定するかが非常に難しい問題となっています。
 まとめると、従来の低分子医薬品のように1個ないしは数個の特許で製品をカバーしているというモデルはなくなり、数多くの特許が必要となるため、1社による技術独占が困難になります。製薬産業もITのような普通の産業と同様な知財戦略が必要になるという考えを受け入れることが重要だと思います。今後、みなさんと新しいイノベーションモデルとしての知財戦略を議論していきたいと思います。

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