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医療健康分野のビッグデータ活用の現状と課題
−ビッグデータが医療の概念を変える−
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ビッグデータの情報基盤が整備されていく中で、個人の病気の履歴や検診での検査数値、遺伝的な体質や要素、個人の背景要素(年齢性別など)、生活情報など、健康や医療に関するさまざまなデータが紐付けされることが前提ではありますが、医療という概念も変わっていくことが考えられます。
 現在の医療は発症してから医学的な処置を受ける「治療」に主流がありますが、近い将来においてはビッグデータの解析の成果と個人の遺伝や生活情報により、それぞれの個人の発症のリスクに対処した対策が発症前に実施されるとともに、発症した後はオーダーメイドの最適な治療が実施されることになります。また治療後の転機の予測に基づいたケアの実施がメニュー化され、高齢者にはリハビリや介護もオーダーメイド化します。健康対応、医療対応の垣根が低くなり、高齢者では介護対応を含めた一体化したサービスが生まれてきます。
 この医療健康ビッグデータを活用した「医療」が実現した際には、健康寿命が飛躍的に伸び、費用対効果が優れた対応により医療費・介護費を含めたコストも低減できることが期待できます。また医療の標準化も進み、個人の病状(または予測される病気)に最も効果的で経済的な「医療」が、日本の国のどこにおいても受けられるようになります。
 さらに、現在治療法がないような疾患に対しても、イノベーティブな研究開発が加速し、新しい治療法や生活の質(Quality OF Life、QOL)の改善がみられるようになります。
 日々の治療や健康対応に対しては、小型のセンサーデバイスなどがモニターをしてくれ、その情報もビッグデータに組み込まれていく中で、たとえば薬剤を使った治療であれば、コンプライアンスの確認や副作用のモニターが自動的にでき、効果も早期に確認できることにより、タイムリーな治療対応ができるようになります。
 このような「(新しい概念の)医療」のパラダイムシフトをしっかりと捉えながら、医薬品産業の方向性を考えていく必要があります。
 また、ビッグデータの活用について、医薬品産業への影響を考えると、後述の医薬品の副作用監視(Pharmaco Vigilance、PV)における副作用情報の収集といった活用例だけではなく、薬剤ターゲットの探索や個別化医療・先制医療を反映した効果の評価、販売や処方の詳細情報による販売流通管理など、医薬品の創薬研究から開発、承認取得、製造、販売・マーケティング、薬事管理、流通といったバリューチェーンすべての断面で革新をもたらしていくことが考えられます。

日本の診療情報のビッグデータ活用状況

ビッグデータ活用のキーワードは「データの構造化(データベース化、利用目的を明確にしてデータを格納する作業)」と「データマイニング(規則性法則性を発見する作業)」です。また、特に医療健康分野のビッグデータ活用においては、ヒトの個人情報との関連から、倫理面の課題整備がキーアクションとなります。
 まずはデータが電子化され、一連のデータがデータベース化されていることが、ビッグデータ活用の必須の要件ですが、日本中の医療関連施設で日々膨大な情報が付加されている診療情報を考えても、データを収納するためのデータベースの構築やデータ活用に際しての整備が必要です。
 診療情報というビッグデータの活用では、いくつかのステップが考えられます。第一段階は電子化された患者カルテ(Electronic Medical Record、EMR)であり、医療関係者が患者さんの諸記録を電子的に保存・管理・利用できる状態となること。そして第二段階は、この個々の医療機関での情報が地域や国レベルで統合して利用できるようになること(Electronic Health Record、EHR)。そして第三段階がPHR(Personal Health Record)で、個人が自らの健康や疾病に関する情報を、自己管理のもとに活用できる状態となること。最後に、統合された医療情報のもと、患者さん個々の治療効果や副作用、予後などを統計的根拠に基づきながら推定し医療行為を決 定、実行していける段階(Evidence Based Medicine、EBM)です。
 主だった診療情報は医療機関診療情報(カルテなど)、保険者レセプト情報、調剤薬局調剤情報といったものですが、日本の状況を大局的にみれば、ようやく第一段階の整備を進めつつ、第二段階に入ったところでしょうか。
 しかし診断群分類(Diagnosis Procedure Combination、DPC)データやレセプトデータのように電子化が進み、日本において活用できる診療データも増えつつあります。レセプトの電子化は2011年以降義務付けされ、年間約10億件が集積されています。また、DPCデータは全国の一般病床の半数を超える約50万床が対象となり、800万件を超える蓄積が進められています。また以下に記載する経緯で、ナショナルデータベース(National Data Base、NDB)も構築され、国のリードによって診療情報のデータベース化が進められています(表2[3]

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「レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)について」厚労省保健局資料(平成26年11.6)

表2 国が進める診療情報のデータベース化

表2 国が進める診療情報のデータベース化
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