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製薬協プレスツアー

神戸医療産業都市構想をベースに発展した産官学連携による先端医療技術

― 先端医療技術発展のための取り組み ―

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先端医療センター(IBRI)の概要説明
(先端医療振興財団)

 先端医療センターは、公益財団法人先端医療振興財団(FBRI)(理事長、井村裕夫先生)の組織であり、病院と研究所を備え「再生医療研究」、「医療機器(映像医療)」、「臨床研究」の3つの分野において、基礎研究から臨床への橋渡し(トランスレーショナルリサーチ)機能を担当する中核施設です。病院の機能(病床数60床)を備えていて、標準的な医療では対応困難な疾病を克服するため、映像医学、臨床研究(治療)、再生医学の分野で先端医療に取り組んでいます。
 当病院で実施している医療として、再生医療(下肢血管再生、角膜再生、軟骨再生、鼓膜再生、脳梗塞細胞治療)、総合的がん治療、造血器腫瘍に対する幹細胞移植、脳血管内治療、PET/CTを用いたがんやアルツハイマー病の早期診断などがあります。また、後述するiPS細胞由来網膜再生医療に関する臨床研究もここで実施されています。
 FBRI内の臨床研究情報センター(TRI)は、わが国のアカデミアにおけるはじめてのデータセンター・解析センターで、臨床研究を主導するすべての研究者と医師に対して研究相談を受け付け、臨床研究・臨床試験の計画策定から解析、論文作成までを一貫して支援しています。また、文科省および厚労省の委託事業である、橋渡し研究推進プログラム、および早期探索臨床試験などを通じてトランスレーショナルリサーチに取り組んでいて、中核拠点の支援・進捗管理などを実施しています。


理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター(CDB)の概要説明
(国際広報室)

理化学研究所 発生・再生科学総合研究所センター(CDB)の外観
理化学研究所
発生・再生科学総合研究センター
(CDB)の外観

概要説明風景
概要説明風景

 

 当センターは、動物の発生のメカニズムを解明し、再生医療などの医学応用を促進するための基礎的研究を推進している世界的な研究機関です。得られた基礎研究の成果を先端医療センターをはじめ周辺研究機関・企業等と密接に協力し、トランスレーショナルリサーチや医療応用につながる研究を実施しています。再生医療の今後の展望として、試験管内での臓器作成にチャレンジしています。
 この後に、「iPS細胞の臨床応用」について講演する髙橋政代先生は、この組織に所属しています。


iPS細胞の臨床応用に関する講演

 髙橋政代氏のiPS細胞を用いた網膜細胞作製技術はES細胞で確立されたものです。ES細胞は、倫理的な問題、他家移植であること、また、再生医療を実用化するための明確な開発トラックがなかったことなどの理由で、臨床研究を始めることができませんでしたが、iPS細胞が作られ、幹細胞を用いた網膜再生技術の臨床研究が可能となりました。今般、再生医療等製品の早期実用化に対応した承認制度が導入され、iPS細胞を用いた網膜再生技術の実用化が促進されると考えられます。
 薬事法では治験で有効性・安全性を確認した後、承認および市販となりますが、今回新たに導入された早期承認制度では安全性の確認が目的であり有効性は推定でよいのです。市販後に有効性とさらなる安全性を検証後、再度承認申請となります。また、細胞の作製が厚生労働省の許可を受けた企業などに外部委託できるようになったため、移植を実施する病院でなくとも患者の網膜色素上皮シート(Retinal Pigment Epithelium: RPE)が作製可能となりました。
 今回再生医療の対象となる網膜眼底にある黄斑は人間とサルだけがもっている組織で、眼の解像度をもたらす部位です。網膜は、その基底にある網膜色素上皮でメンテナンスされていますが、網膜色素上皮が加齢により痛み、網膜の黄斑が傷害され視力低下が起こるのが加齢黄斑変性です。欧米では、成人の失明の最大の原因疾患であり、日本でも、失明に占める割合が急増しています。現在、新生血管抑制剤などの治療薬はありますが根本治療ではありません。また、失明は疾病負担を評価する単位DALY(Disability-adjusted Life Years)で評価した場合、障害共存年数が大きいため負担が大きく、加えてコミュニティーケアが必要であるため医療コストもかかり、ある試算によると総額8兆8千億円と見積もられています。
 2013年8月に始まった臨床研究では、患者の同意を得た後、患者の皮膚細胞より作製したiPS細胞からRPEを作製・純化し、シート化して網膜下へ移植します。RPEシートの均一性については遺伝子発現解析等で確認します。また、これまで実施したすべての試験において造腫瘍性は認められていません。iPS細胞由来のRPEシート移植研究が最初に実施される理由として、RPE細胞の増殖性が低いこと、純化できること、必要細胞数が少ないこと、RPE自身に抗腫瘍作用があること、目は移植後の詳細な観察が可能なことが示されました。
 自家iPS細胞由来RPEシート移植に関する本臨床研究の試験デザイン、患者選定基準、主要および副次評価項目、移植手術法が紹介されましたがここでは割愛します。
  髙橋氏のコメントでは、自家iPS細胞由来RPE細胞シートは滲出型加齢黄斑変性に対する科学的に最高の治療法ですが、高額であり、年間2~3名程度しか治療できないこと、細胞浮遊液を用いる場合と比べて手術リスクが高いことなどの理由により最初の標準治療にはならないといいます。製造コストおよび手術リスクを考慮すると当面の標準治療法としては、手術リスクのやや低い、剤型を変えた他家細胞を用いた浮遊液による再生医療が現実的であるとのことでした。また、RPEシートによる治療では視力は0.1までしか回復せず、治療後は、ロービジョンケアおよびリハビリ治療とセットで再生医療が完成するといいます。
 最後に、神戸という自由な地だからこそiPS細胞を使ったはじめての治療が可能になったこと、まだ開発すべきシーズもあり、今後もそういった自由な開発の場を作っていかなければならないとの指摘が印象的でした。

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