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「2014ライフサイエンス知財フォーラム」を開催
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<第III部>パネルディスカッション:
世界の人々の健康のために知財が果たす役割

第Ⅲ部のパネルディスカッションでは、【世界の人々の健康のために知財が果たす役割】と題して、第Ⅰ部および第Ⅱ部演者をパネリストに迎えて議論がなされました。

コーディネーター 奥村 洋一 氏 パネルディスカッション
パネリスト 渋谷 健司 氏、山内 和志 氏
高倉 成男 氏、夏目 健一郎 氏
齋藤 みのり 氏

1.グローバルヘルスの現状と課題

 まず、本セミナーの開催により、保健医療においてグローバルヘルスという課題があるということをぜひ覚えて帰っていただきたいと考えています。また、講演の部でお話のあった保健医療の3つのD(Discovery;研究、Development;開発、Delivery;供給)、WIPO Re:Search、GHIT(Global Health Innovative Technology)ファンド、顧みられない熱帯病(NTDs)、非感染性疾患(NCDs)などの言葉も記憶にとどめてもらえば、本セミナーは成功したと考えています。
  日本の製薬企業にとって、ビジネスのコアはやはりR&D(研究開発)であり、日本のグローバルヘルス活動への貢献は医薬品のイノベーションにあります。この能力をグローバルヘルスの改善に応用していく努力が期待されています。また、日本は貧困からの急激な成長を遂げ、40年かけて国民皆保険制度を導入して50年維持し、健康寿命についても世界の上位を続けています。このような社会制度は国民の健康増進のための1つのロールモデルとなりますが、そのまま他国に当てはめるのは適切ではありません。諸外国との対話を通し、文化の違いなども考慮して、当該国に適切な修正や改良を施して対応していくことが重要です。このときに必要とされるのが、グローバルヘルス活動に貢献できる人材の輩出です。つまり、ロールモデルとして日本に期待されているのは、「テクノロジー」と「制度」、そして「人材」ということです。
 日本の製薬企業は、グローバルヘルス活動の面で欧米の企業に比べて出遅れてはいますが、日本も地球規模の医療課題を解決する責任者だという意識をもつに至っています。
  一方、特許により安いジェネリック薬が市場に参入できずに薬の値段が高くなっているとか、グローバルヘルスにとって特許が悪いという誤解があります。多くの場合、貧困地域で必要とされる医薬品の価格は特許権や特許制度とは無関係であることも正確に理解されていません。また、最初に薬を作るのは誰か、新薬による安全性と有効性の確認があってはじめてジェネリック薬を患者に提供できるようになる、新薬メーカーがリスクをかけられるのは特許があるからなどといった視点が抜けています。製薬産業界がこの点をきちんと説明してこなかったことを反省しなければなりません。
 ハードルは低くないかもしれませんが、グローバルヘルス活動において知的財産制度を阻害要因と考えているような異なる立場の人と話をすることが必要です。そういう対話により、意外に両者の本音がみえたりもします。わかり合える糸口を探す努力、コミュニケーションなどを通じて、先進国側と途上国側との信頼関係を築くことが重要です。知的財産制度に対する理解の低さはこの信頼関係の構築が十分にできていないことに起因しているのかもしれません。現在、製薬協は72社で構成されていますが、これに反対意見のグループも入れて諸々の課題について考えていく必要があります。さらに、こういった複雑に課題が絡み合っているような問題に挑戦するときには、ダイバーシティも重要です。今回のようなフォーラムにも、女性、他国の人、NGOなど、多様なステークホルダーに来てもらって議論すればよいのです。ネットワークをもっと広げて、国際的なルール作りにおいても、人材のリクルート・提供においても、日本国および日本の産業界も国内外に意見発信していかなければなりません。また、国際的な分野に若い人がもっと参入して存在価値を示すこと、人材が育ってくることを望みます。結局は人材です。
 次に、グローバルヘルス活動において、先進国側もそこから学ぶべきことが多くあります。たとえば、先行して高齢化社会を迎えた日本がその問題の解決方法を考案し、提供することで国際協力ができます。その一方で、東南アジアなどの地域にはコミュニティーが残っていて、地域の支え合いが機能しています。地域でその地域の人の健康を維持管理する側面が機能しているということです。こういった部分は逆に日本においても参考になり、学んでいくべきでしょう。

2.グローバルヘルスに係る特許の国際的課題および世界の人々の健康のために知財が果たす役割

 WIPOでも、地球規模的な課題にどう貢献できるのか、その中の1つとして医薬品・パブリックヘルスに着目しています。知財制度で世の中が良くなっていくにはどうすればよいのか。昔は政府だけがかかわっていましたが、今では、民間企業、大学、患者、医者、NGO等々、利害関係者が増えています。こういった方たちに議論の早い段階からかかわってもらうことが必要で、その橋渡しとなる場がオープンイノベーションプラットホームです。
  グローバルヘルス活動と知的財産制度の関係について考えるアプローチがアメリカとヨーロッパの間でも異なります。アメリカでは当事者主義で利便性がまず考慮され、ヨーロッパでは宗教観・倫理観が優先します。たとえば受精卵の取り扱いにこの違いが表れてきます。日本では今後どちらのアプローチを進めていくのでしょうか。たぶん中庸でしょう。たとえば受精卵に関する発明については技術の発展の面から審査し特許を与え、実施の場面では別法で必要な規制を設定して対応するという方法も1つの提案です。知財制度をどこまで利用するのかというのも、その延長線上にきます。独占性、グローバルヘルスへの活動など、ケースバイケースで考えないといけないでしょう。
 最後に、特に知財に絡めて、製薬企業に期待するものは何でしょうか。研究開発で必要な医薬品を創り出す役割については疑いがなく、とても重要です。そして、供給、すなわち薬が必要なときに必要な場所にどのように届けるかという問題について、いろんなステークホルダーとよく議論を重ねることが求められています。いずれにしても、納得感のある結論を出す必要があります。ここに主体的な役割を果たすべきです。
 日本の製薬企業にとってR&Dはビジネスのコアですが、ややもするとこれまではグローバルヘルスに向いていなかったかもしれません。その成果である知財が日本の創薬の5年10年にインパクトがあることをもっと認識し、R&D活動がグローバルヘルスにより寄与できるようにしていくことが重要です。日本は世界から期待されており、グローバルヘルスにおける知財の役割を取り上げた今回のフォーラム開催は有意義であったと考えます。
 製薬協としては、グローバルヘルスの問題は、これからも避けるのではなく積極的に取り組んでいきたいと考えています。

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