製薬協について 製薬協について

Topics | トピックス

最新号目次へ 既刊号一覧2014年5月以降2014年3月以前 pdf
201405タイトル
topics
前へ1234次へ
「2014ライフサイエンス知財フォーラム」を開催
line03 line03 line03

講演3

製薬産業のグローバルヘルスへの取り組み ~国際連携、国際協力のさらなる推進~

製薬協 国際委員会 グローバルヘルス部会長 齋藤 みのり 氏

齋藤 みのり 氏

 国境を越えた保健医療課題は、製薬協としても当事者として取り組まなければいけない課題ととらえています。われわれが重要と考えるグローバルヘルスの諸課題とその取り組みについて紹介します。
 イノベーションはわれわれ研究開発型製薬産業の根幹ですが、世界第3位の新薬創出国である日本が、これからさらに世界の、発展途上国特有の疾患をも見据えてイノベーションを継続させるためには、新薬創出を加速させる環境整備と、さまざまなパートナーを巻き込み協働することが重要です。
 HIV/エイズ、結核、マラリアの3大感染症に加え、顧みられない熱帯病(NTDs)は、149の国や地域で10億人を超える患者さんがいると報告されています。疾患罹患が貧困の要因ともなっていることから、この負の連鎖を断ち切ることが重要です。製薬協会員会社も、近年これら感染症に対する新薬・ワクチンの開発、あるいは製品の無償提供などさまざまな取り組みを開始しています。また製薬協はGHITファンドとの連携も深めていきたいと考えています。
  非感染性疾患(NCDs。心血管系疾患、がん、糖尿病および慢性閉塞性肺疾患を含む)は、先進国のみでなく、すでに地球規模での課題となっています。NCDsは生活習慣の改善により、リスクコントロールがある程度可能な疾患群であることから、製薬協会員会社は、①治療薬の存在しない疾患への創薬イノベーション、②予防や早期発見のための啓発や医療従事者への教育、さらに③医薬品が入手できない課題に対する医薬品の価格設定の工夫などの点において貢献し、新たな取り組みも始めています。また、製薬協としても、タイのNCDsに関する国民意識調査に協力し、今後のNCDs対策に役立てるなど、協会として効果的な取り組みを展開しています。
 医薬品を必要な地域に展開するうえで近年問題となっているのが偽造医薬品[1] です。偽造医薬品は、そのものによる健康被害や、正規の医薬品により適切に治療されないために耐性菌が生じるなど、深刻な問題を抱えています。この課題解決には、情報共有や、税関や警察機構との連携などがよりいっそう重要と考えられます。
  医療や医薬品へのアクセスが悪い地域に対して、製薬協および会員会社がなし得る最も効果的な貢献は、自分たちのスキルの共有による現地の能力開発です。会員会社による独自のプログラム展開に加え、製薬協としても日本政府事業と協力した講師派遣などを行ってきており、各会社と協会とが国際貢献のベストミックスを提供することが望まれています。
 われわれは新薬の創製という使命に加え、その医薬品を生産し、安全を守りながら患者さんに届けるというバリューチェーン全体に対する責任も担っています。このスキームが安定継続されるためにも、知的財産が適切に保護されることが重要と考えます。

mark [1]
同一性や出所起源に関して、故意に不正に偽造表示された医薬品です。技術レベルが乏しいために品質基準を満たさない「サブスタンダード医薬品」とは分けて定義しています。





<第II部> グローバルヘルスに係る特許の国際的課題

講演4

知的財産と公共政策 国際動向と日本の課題

明治大学法科大学院 教授 高倉 成男 氏

高倉 成男 氏

 特許制度は、発明の権利の保護と制限の適切なバランスのもとで産業の発達を図ることを目的とするものです。そのバランスのあり方は国によって異なります。1980年代まで、多くの途上国は、外国企業による特許独占を懸念し、権利の制限規定(たとえば、医薬発明の除外、強制実施権の設定)を比較的広く定めていました。
 このような広い権利制限が国際貿易を歪めている(模倣品が国際的に流通することにより権利者の正当な貿易上の利益が損なわれている)と考えて、先進国は、途上国に対して特許制度の改正(権利制限規定の見直し)を求め、最終的に、1994年のGATTウルグアイラウンドの一括合意の中で知的財産に関するルール(TRIPS協定[2] )ができ上がりました。
 しかし、途上国は、TRIPS協定もGATTウルグアイラウンド合意全体も途上国にとって不利であると考えています。そこでその改正を求め続けています。特に2000年以降、エイズ医薬へのアクセスを特許制度が妨げていると主張しています。しかし、この主張には誤解があります。医薬特許のない国でも医薬アクセスが困難になっていることから明らかなように、この問題は医療システムの不十分性に起因するものです。いずれにせよ、先進国は、特許の役割と限界を国際社会に丁寧に説明していく必要があるでしょう。
  一方、知財重視を国策として進めてきたアメリカでも近年、「強過ぎる特許」の弊害の問題が議論されるようになってきました。たとえば、遺伝子の発明や、治療方法の発明についての特許が最高裁で否定される事件が相次いで起きました。また欧州では、生命倫理の観点から特許の付与を制限する立法が行われ、その規定に基づき、人の受精卵を利用する発明についてはすべて特許対象から除外されるようになりました。
  このように特許制度と公衆衛生等公共政策をめぐる国際問題は難しい展開を迎えています。この問題の背景には2つの側面があることに留意して対処する必要があります。1つの側面は、先進国と途上国の貿易上の対立です。もう1つは、異なる価値観の衝突です。前者は、基本的に国家間の経済問題ですから、理論的には経済的な利害調整(パッケージ合意)によって解決可能でしょう。
 後者の問題は、足して2で割るといった調整が不可能ですから、問題解決には新しいアプローチが必要です。「生命か特許か」といった二者択一を求めるのではなく、常に「第三の道」を模索することが必要です。たとえば、途上国の公衆衛生と特許の問題については、国際社会の共同行動による特許医薬品の買い上げ、途上国に必要な医薬の共同研究開発等といった第三の選択肢もあるはずです。第三の道の模索のためには、互いに相手の価値観に立って物事を考え、プロセスを重視しながら、みんなの納得感を高め、広く社会に受け入れられる着地点を模索するというアプローチが必要です。
 

mark [2]
知的財産権の貿易関連の側面に関する協定





前へ1234次へ
最新号目次へ 既刊号一覧2014年5月以降2014年3月以前

このページのトップへ