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臨床薬理学会海外研修を終えて
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4. Duke Clinical Research Training Program

 DCRIでの研究に並行して、Duke Clinical Research Training Program (CRTP) (http://crtp.mc.duke.edu/modules/flash_articles/)を受講しました。これは臨床研究に関する知識を学ぶことができるプログラムであり、臨床研究デザインの設計、研究管理、遺伝子学および統計解析などの講座を提供しています。指導に当たるのは多くの経験をもつ医師や生物統計家等です。DCRIに所属するフェローをはじめ、医学部生や CRA、医師、生物統計家などが受講しています。受講者の医師のバックグラウンドも、麻酔科、内科、皮膚科、産婦人科、眼科、小児科、精神科、放射線科、外科などと多彩でした。Duke大学のみならず、National Institutes of Health (NIH)、Brazil Clinical Research Institute (BCRI)からもインターネット経由で参加しています。私はPrinciples of Clinical ResearchとIntroduction to Statistical Methods、Research Managementを履修しました。各講座は90分の講義が週に2回あり、合計30回あります。プログラムのWeb上で次回までの参考文献や課題が提示され、予習に時間を要しました。
 Principles of Clinical Researchの講義では、臨床研究デザインにおける一般的原則や問題について、実際の研究や論文などを例にして体系的に学びました。通常の講義に加え、4~5名でのグループワークも行われ、試験提案書を含めたグループでのレポート提出と2回のプレゼンテーションも行いました。最初のグループワークは観察研究を計画するもので、われわれのグループには歯科医師もいたので、その方の提案で、「長期入所施設における認知症患者の口腔内衛生と行動障害」に関する発表を行いました。どの試験方法を選択するか、試験対象となる施設の選定、用いるデータ、アウトカムの評価方法、考えられる交絡因子やバイアスなどに関して発表までにミーティングを重ね、メールによるやり取りを行い、試験提案書をまとめて提出し、プレゼンテーションを行いました。この試験提案書は、研究課題、帰無仮説、対立仮説、試験背景、試験方法 (試験対象、適応基準、除外基準、データ収集方法)、アウトカム、交絡因子、バイアス、統計的解析方法で構成されます。
 介入研究を計画する最終のプレゼンテーションが最終試験として行われ、われわれのテーマは、「HIVに罹患したアフリカ系アメリカ人患者の医師に対する信頼と服薬アドヒアランス」という多民族国家であり国民皆保険をもたないアメリカならではの問題でした。HIVの抗レトロウイルス薬は、この10数年の間に飛躍的に進歩を遂げ、継続内服によりAIDSの発症を抑えることが可能になっています。しかし、さまざまな理由により全米人口の12%であるアフリカ系アメリカ人が、全米のHIV患者の約50%を占めているという人種格差を問題とし、motivational interviewingによる介入によりHIV罹患患者の医療提供者への信頼と服薬アドヒアランスを高め、解決を図るという内容でした。グループメンバーと意見交換をしながら話を進めていくのは良い経験でした。CRTPの指導教官曰く、「臨床研究はグループで行われるものであるため、グループワークの形を取り入れている」とのことでした。実際、こちらで行った臨床研究でも、医師、生物統計家、プロジェクトリーダー、CRA、データマネージャーなどとミーティングを行い、メール等で連絡を取り合って進めており、チームワークとコミュニュケーションの重要さを認識させられました。
  Introduction to Statistical Methodsの講義は、統計ソフトを用いての演習を交えながら、生物統計家の指導教官によって行われました。日本では生物統計家の数が絶対的に不足しているため、このような講義が受講できる施設が限られており、生物統計家の育成は、日本の臨床研究における1つの課題です。演習では実際の論文で用いられたデータセットを用いて、統計ソフト“R”と“Rstudio”を使った解析を行いました。
 この講座の試験は1週間以内に答案を作成しインターネットで提出するTake Home Examination形式のものでした。メインの設問として、データセットが与えられ、統計ソフトを用いて解析して、目的、方法、結果、結論からなる抄録の形に体裁を整えて解答を作成するという実用的なものであり、単に統計的に有意か否かを答えるのではなく、臨床的にどういった意味があるのかを結論として答えることが求められました。
 CRTPにはITの専門家が配属されており、Web経由で講義資料がダウンロードできるほか、録画された講義をみることができました。

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