医薬品評価委員会 2021-02 スクリーニング期間中に生じた重篤な有害事象

関連分類:副作用等報告

初回公開年月:2021年07月

質問

治験実施計画書において、実施医療機関の症例で生じた重篤な有害事象(SAE)を、治験薬投与開始後ではなく同意取得後から収集すると規定されていることがあります。
ただしスクリーニング期間中(同意取得~治験薬投与開始)に生じた事象はGCP上厳密には「有害事象」に該当しないかと思います。

この場合、治験実施計画書に則って治験依頼者にはSAEとして報告するものの、実施医療機関側が「有害事象には該当しないため、実施医療機関の長への報告や治験審査委員会(IRB)審議は不要」と判断すれば、これらの対応を不要とすることは可能なのでしょうか。

製薬協見解

有害事象は、GCP第2条第24項において「治験使用薬又は製造販売後臨床試験使用薬を投与された被験者に生じた全ての疾病又はその徴候をいう。」と定義されており、治験参加への同意の取得後から治験使用薬の投与開始前までの期間に生じた事象は、厳密にはGCP上の「有害事象」に該当しません。一方で、治験によってはこの期間にスクリーニング検査やウォッシュアウト等を実施することがあり、被験者の安全性確保のためこの期間中の事象も「有害事象」として収集・報告するよう治験実施計画書に規定する場合があります。また、国際医学団体協議会(Council for International Organization of Medical Sciences、CIOMS)ワーキング・グループⅥの報告書第4章「臨床試験における安全性データの収集と管理」(2005年公表)では、被験者が同意書に署名した時点を安全性データ収集の起点とすることで、情報収集のスタート時期が明確になり、選択バイアスを避ける一助となりうる旨の記載があり、被験者が同意書に署名した時点から有害事象の収集を開始すると規定している治験も多くなってきています。治験実施計画書に規定された定義・基準に照らして報告すべき事象が生じた場合は、GCP第31条第2項及び第48条第2項の趣旨を踏まえ、実施医療機関の長への報告及びIRBによる審査が必要になると思われます。

ご質問のように、スクリーニング期間中(同意取得~治験使用薬投与開始)に生じた事象を有害事象として収集・報告する場合は、治験開始前に治験依頼者より治験責任医師及び実施医療機関に説明し、対応方法も含めて理解を得ておくべきと考えます。

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