「第13回 アジア製薬団体連携会議」開催を受けて

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2024年04月24日
日本製薬工業協会
会長 上野裕明


2024年4月23日に、「第13回アジア製薬団体連携会議;Asia Partnership Conference of Pharmaceutical Associations(APAC)」が「革新的な医薬品をアジアの人々に速やかに届ける」というミッション実現に向け、製薬団体関係者のみならず日本を含むアジア各国/地域の規制当局関係者・アカデミアを演者や視聴者に迎えて開催されました。 

本会議は、国際製薬団体連合会(IFPMA)の新理事長挨拶とPMDA藤原康弘理事長の基調講演に続いて昨年同様に「規制・許認可」「創薬連携」「添付文書の電子化(e-labeling)」「MQS」「aUHC」の合計5つのセッションを執り行い、活発な議論や提言がなされました。その後には武見敬三厚生労働大臣より特別講演も頂戴し、大変充実したカンファランスとなりました。

本年度の合意事項を以下の通りとりまとめましたので、お知らせいたします。

日本製薬工業協会といたしましては、本合意事項に基づき、今後もアジアの製薬団体、政府機関、規制当局、アカデミア等と協力・連携し、様々な課題の解決により一層取り組んでまいります。

(略語)

IFPMA:International Federation of Pharmaceutical Manufacturers & Associations
PMDA:Pharmaceuticals and Medical Devices Agency 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
MQS:Manufacturing, Quality Control and Supply(製造、品質管理と供給)・・・APACの造語
aUHC:Asian-Universal Healthcare Coverage(アジアの国民皆医療保険制度)・・・APACの造語

第13回APAC合意事項骨子

規制・許認可(Regulations and Approvals;RA)

ASEANジョイントアセスメントによる医薬品の規制審査と承認は多国間協力による医薬品審査の効率性を示した。

ASEANジョイントアセスメントに対して、WHOは大きく寄与していることが共有された。

産業界は 自社製品を ASEANジョイントアセスメントに申請することで、複数の国に跨る効率的な審査のベネフィットを期待することができる。

創薬連携(Drug Discovery Alliances;DA)

DA-EWGは、「アジア各国の人々のために、アジアの国々が協力して、アジア発の革新的な医薬品を創出する」ことを目標に、①創薬シーズの情報共有、②創薬プラットフォームの構築、③次世代を担う研究者の育成、に取り組んできた。

本年のDA-EWGセッションでは、アジアにおけるマイクロバイオーム研究を取り上げた。

マイクロバイオームは創薬研究で注目されつつあるが、特に腸内のマイクロバイオームは健康や病気にも影響を与えていることが明らかになり、病気の発症メカニズム解明や予防・治療法の開発、ヘルスケアへの貢献が期待されている。

アジア各国でも盛んにマイクロバイオーム研究が進められている。2017年には日本とともに台湾でもマイクロバイオームコンソーシアムが立ち上がった。セッションでは、日台のマイクロバイオームコンソーシアムリーダーに登壇いただき、アジアでのマイクロバイオーム研究と創薬、さらには、その将来性について紹介いただいた。

アジア各国のアカデミア、スタートアップや製薬企業の研究者が協力することによって、マイクロバイオーム研究とその創薬応用が加速すると期待する。

添付文書の電子化(e-labeling)

アジア諸国の患者のために、より多くのマーケット、より多くの製薬企業、より多くの製品におけるe-labelingの導入推進

  • 2023年は、アジア地域の多くのマーケットでガイダンスを発出するなど、e-labelingイニシアチブに大きな進展があった。2021年設立以降、APAC e-labeling EWGにとっても素晴らしい年であったが、アジア地域のe-labelingイニシアチブは、多くのマーケットにおいて、製薬企業が自主的に実施することになっているため、今後は患者のために、より多くの製薬企業、より多くの製品におけるe-labelingの導入を推進していく。

デジタルヘルスへの利用のため、国際標準規格を用いた構造化されたe-labelingの導入についてさらに議論を進める

  • アジア地域において、国際標準規格を用いた構造化されたe-labelingの議論は、限られたマーケットで開始されたばかりである。第3回のAPAC規制当局ワークショップで 国際標準規格を用いた構造化されたe-labelingの導入について、さらに議論を進めることになった。なお、アジア地域では多くのマーケットにおいて、ヘルスケアシステムへのHL7FHIRの導入の議論が進んでおり、今後、この点も考慮していく。

患者向のe-labeling(患者のヘルスリテラシーを考慮した医薬品情報)導入推進の重要性について議論していく

  • アジア地域においては、約30%程度のマーケットでしか患者向ラベリングが作成されていない。したがって、現在のe-labelingの導入は、主に医療従事者向にとどまっており、患者向ではないため、今後は患者向のe-labelingの導入推進の重要性について議論していく。

e-labelingサーベイの実施の継続

  • e-labelingサーベイを実施し、過去3年間のアジア地域におけるe-labeling普及状況の推移を確認した。今後もサーベイを継続していく。

製造、品質管理と供給(Manufacturing, Quality Control and Supply;MQS)

COVID-19パンデミック中の医薬品供給を確保するための有益な事例の共有。

緊急事態に備えるために、安全性と品質を確保した上でセカンドサプライヤー追加プロセスの迅速化が必要。

提言された対策を、国際調和の取り組みと連携しながら、医薬品の安定したサプライチェーンの実現に向けて継続的に検討。

アジアのUniversal Health Coverage(aUHC)の構築

aUHCタスクフォースは、APAC総会で、アジア各国でのUHC構築・維持に向けた取り組みについて考える場を提供することを目的としている。

昨年度の当セッションでは、ファイナンスをテーマに、各国の現状と課題を日本、タイおよびシンガポールの立場で講演いただいた。

今年の本セッションの目的は、基本的な医療を公的保険でカバーできるようにし、さらにドラッグ・ラグとドラッグ・ロスを克服すること。

今回においては、UHC実現には公的保険の重要性とそれを補完する民間保険の活用も選択肢にすべきと結論。

  • UHCの理想と現状のギャップや地域ごとの状況の違いを理解。
  • 民間保険の役割は公的保険を補完するためのオプションであり、UHC において主要なプレーヤーではないことを確認。

お問い合わせ先

日本製薬工業協会(製薬協)広報部

電話
03-3241-0374
お問合せフォーム
www.jpma.or.jp/inquiry/

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