医薬品評価委員会 NICE TSD Evidence Synthesisシリーズの紹介:ネットワークメタアナリシスを中心として

データサイエンス部会

2020年12月

2019年4月より、既存の薬価基準制度を補完する制度として費用対効果評価の制度化が行われた。本制度化により、費用対効果を検討するにあたっては、評価対象技術の比較対照技術に対する追加的な有用性の有無をシステマティックレビューによって評価する必要がある。しかしながら、新しい医療技術(新薬など)の場合、費用対効果評価での対照技術との比較に関するエビデンスが十分に揃っていないことが多く、間接比較が必要となる場合がある。その際、単純な間接比較は推奨されず、調整された間接比較を使用することが必要とされていることから、3群以上の多群による間接比較が必要となる場合には、評価対象技術やその比較対照技術が含まれていない試験も包括的に活用できるネットワークメタアナリシス(NMA)と呼ばれる手法を検討することが可能とされている。NMAでは包括的にエビデンスを活用し、試験間に存在する交絡因子を調整できることから、単純な間接比較に比して、バイアスの減少及び推定精度の向上が期待できる。
一方で、NMAはその結果の妥当性を担保するために満たすべき仮定も存在するため、使用する際には留意すべき事項が多数ある。そのため、その方法論の理解及びNMAモデルの妥当性評価(異質性、不一致性の検討)は必須であり、結果の慎重な解釈が重要となる。
本邦では費用対効果評価に係るNMAに関する実務的な資料が極めて少ないことから、2019年度DS部会継続T5では、英国NICEが発行している Technical Support Document (TSD)のEvidence Synthesisシリーズ(TSD1~7)をもとに、NMAを中心としたエビデンス統合の方法論及び留意事項を要約し、各TSDの付録のWinBUGSの使い方と解析事例も交えて解説した報告書を作成した。
なお、本報告書の中で各TSD を引用/参考にした記載は、本タスクフォースの解釈であり、NICEには一切の責任はない。また各TSD のすべてを紹介したわけではなく、一部を抜粋し紹介している。それらの紹介にあたり、タスクフォースによる解釈や追加の説明を加えている。これらは本タスクが独自にまとめたものであり、NICEから見解を得たものではないことをご了承いただきたい。

日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 データサイエンス部会
2019年度継続タスクフォース5

NICE TSD1-7 ESG成果物(2019KT5)(2.3MB)

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