有事の危機対応

2019年末から中国武漢市で新型コロナウイルス感染症患者の報告がされはじめ、2020年3月11日にWHOによりパンデミック宣言がなされました。その後、流行地域が変遷しながら、未だ感染者数は増え続けている状況であり、日本においても第二波の様相を示しつつあります(2020年7月現在)。
2000年以降の新興感染症として、2002年にSARS(重症急性呼吸器症候群)、2009年に新型インフルエンザ、2012年にMERS(中東呼吸器症候群)の流行が世界各地で発生しています。SARSおよびMERS による感染が拡大してしまったシンガポール、韓国等においては、検査体制の強化等、流行時の教訓が活かされた体制が即応された形となり、今回の新型コロナウイルス感染症対策において、国際社会からも評価を受けています。

日本国内においては、新型コロナウイルス感染症による死亡者は、諸外国に比べ未だ低く抑えられている状況ではありますが、平時より感染症に対する国内および国際的な視点に立った準備の必要性が、浮き彫りとなってきている状況です。このような中、日本製薬工業協会(製薬協)加盟企業では、新型コロナウイルス感染症に対する治療薬、ワクチンの開発とともに、既存薬の転用・適応拡大(ドラッグ・リポジショニング)や様々な支援などをいち早く対応してきました。しかしながら上述の課題を鑑みますと、改めて、国家としての迅速で状況に呼応した意思決定を可能とするために、平時より具体的な課題を洗い出し、それらに対応した施策を立案し実行していく環境を整備することが重要であると考え、2020年6月17日に、「感染症治療薬・ワクチンの創製に向けた製薬協提言-新型コロナウイルス感染症発生を契機として-」を政府に提出しました。
本提言は、日本においても、いつ流行するか予見できない新興・再興感染症に対して、国が責任を持ちながら産官学の機動的な連携を実現することを目指し、平時の予防接種施策から有事の感染症対策までを統括する司令塔機能の設置を提案しています。また、民間企業や研究機関が、予見性の明確でない新興・再興感染症に対する治療薬・ワクチンの研究開発や生産体制構築に着手することによる経済的負担・リスクを最小限とする支援体制を速やかに整えること、さらに、安定供給に必要な取り組みとして、流通・物流、薬価制度、インセンティブ策の整備、知的財産に対する考えも提示し、日本の安全保障にもつながる新興・再興感染症対策に望まれる姿を提案しています。
製薬協加盟の研究開発型製薬企業は、今回の新型コロナウイルス感染症に対する治療薬やワクチンの創製、医薬品の安定供給という、我々の使命を強く意識し、パンデミックの収束に向けた一層の努力と将来への決意を新たにし、感染症に対する備えを整えていくために、産官学一体となり、国内のみならず国際社会に貢献するよう取り組んでいきます。

関連情報

過去の感染症における有事の危機対応に係る製薬協の提言

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