「第10回 アジア製薬団体連携会議」開催を受けて

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2021年04月14日
日本製薬工業協会
会長 中山 讓治

2021年4月13日に、「第10回アジア製薬団体連携会議;Asia Partnership Conference of Pharmaceutical Associations (APAC)」が「革新的な医薬品をアジアの人々に速やかに届ける」というミッション実現に向け、10回目の節目となる本会のテーマをCOVID-19の克服、そしてアジアにおける新たな革新への挑戦の10年に向けてと定めて、製薬団体関係者のみならず日本を含むアジア各国/地域の規制当局関係者・アカデミアが参加視聴するWEB会議が開催されました。

本会議は、国際製薬団体連合会(IFPMA)理事長挨拶と藤原康弘理事長(PMDA)の基調講演に続いて「規制・許認可」「新薬アクセス1(e-labeling)」「新薬アクセス2(BCSに基づくバイオウェーバー)」「創薬連携」「価値に基づく医療(VBH)」の合計5つのセッションを執り行い、活発な議論や提言がなされました。
本年度の合意事項を別紙の通りとりまとめましたので、お知らせいたします。

日本製薬工業協会といたしましては、本合意事項に基づき、今後もアジアの製薬団体、政府機関、規制当局、アカデミア等と協力・連携し、様々な課題の解決により一層取り組んでまいります。

略語

IFPMA: International Federation of Pharmaceutical Manufacturers & Associations
PMDA: Pharmaceuticals and Medical Devices Agency 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
BCS: Biopharmaceutics Classification System
VBH: Value-based Healthcare

第10回 APAC合意事項骨子

規制・許認可(Regulations and Approvals;RA)

  • 世界的なパンデミックだが、様々な疾病に対する治療薬のニーズは変わらず、「革新的な医薬品をアジアの人々に速やかにお届けする」ことは我々の不断のミッションである
  • 本セッションでは「COVID-19禍及び終息後におけるRegulatory Agility(機動的な薬事対応)」をテーマとして取り上げ、現在の状況下で新薬審査に対しどのような取り組みがなされているか、アジアの規制当局と製薬産業が参加したパネルディスカッションを開催した
  • ディスカッションを通して、規制当局がRegulatory Agilityを発揮して取り組んだ「薬事規制のニューノーマル」の重要性を強く認識した

    1. 二国間(日台)、多国間(ASEAN)でGood Reliance Practiceを活用した新薬審査効率化の推進
    2. 災禍における医薬品迅速審査制度の導入(マレーシア)
    3. 薬事規制当局国際連携組織 (ICMRA)による世界的なCOVID-19パンデミック対応への参加(日本)
  • COVID-19終息後も「薬事規制のニューノーマル」を規制当局が継続することをAPACとして最善を尽くして支援する

新薬アクセス-1(電子添付文書)
Access To Innovative Medicines; ATIM-1 (e-labeling)

Raise an awareness for benefits of e-labeling in Asia

アジア地域において、以下のe-labelingのベネフィットについて合意した

  • 最新の添付文書情報へのアクセス向上、フレンドリーな方法(文字の大きさを調節できるなど可読性・検索機能の向上)での活用による利便性向上
  • 最新添付文書情報へのアクセス向上に伴う医療従事者及び患者さんの製品に対する理解向上、服薬順守の強化による、よりよい治療結果・健康状態の改善の実現
  • 製品への紙の添付文書の封入廃止による紙資源の節約・エコへの貢献、上市へのリードタイムの短縮、業務削減
  • 電子化された添付文書と電子カルテ等との統合による、ヘルスケア分野でのデジタルトランスフォーメーションの一翼を担った貢献

Collaboration on e-labeling in Asian region

アジア地域において、e-labelingについて規制当局及び製薬企業団体間で今後協力していくことが重要であると合意した。

  • アジア地域におけるe-labelingのベストプラクティスのシェア
  • アジア地域共通のe-labelingのプラットフォームの確立について検討
  • アジア地域におけるe-labelingへの取り組みに関するポジションペーパーの作成の検討
  • 上記、実現に向けた取り組みとして、調査の実施、ロードマップの作成

新薬アクセス-2(BCSに基づくバイオウェーバー)
Access To Innovative Medicines; ATIM-2 (BCS-based biowaiver)

承認後の変更手順におけるBCSに基づいた生物学的同等性試験の免除

  • 科学とリスクに基づいたアプローチによる理化学試験を適用し、承認後の変更手続きにおける生物学的同等性試験の免除を促進する。
  • 生物学的同等性試験の国際的ガイドライン及びアジア諸国の国内ガイドラインが発出されている。しかしながら、それらの間にはわずかではあるが差異があることを確認した。
  • 開発段階で得られた知見を活用し、BCS(Biopharmaceutics Classification System)に基づいた生物学的同等性試験の免除(ICH M9)が促進されることにより、アジアの患者さんにより早く改善された医薬品が提供可能になることを期待する。

創薬連携(Drug Discovery Alliances;DA)

  • APAC DA-EWGは"アジアにおける創薬連携によってアジアの患者さんに革新的な医薬品を届ける"を目標として2013年に設立された。これまでの活動の成果として、2つの施策、DSANAとANPDC、を立ち上げ、(1)創薬シーズに関する情報共有、(2)創薬連携プラットフォームの構築(3)若手研究者の人材育成に取り組んできた。
    DSANA: Drug Seeds Alliance Network in Asia
    ANPDC: APAC Natural Product Drug Discovery Consortium
  • DSANAはアジアにおける創薬シーズ情報の活性化を目的とした施策である。パイロットプロジェクトとして、現在、台湾と日本間での情報共有に取り組んでいる。大阪商工会議所の協力を得て、コロナ禍にあっても2国間の情報共有を確実に進展できた。情報共有の取り組みを他のアジア諸国に広げるのが今後の目標である。
  • ANPDCは天然物の創薬活用を目標に2018年に設立され、それ以降、大きな進展を達成した。既に2名のタイ研究者が日本でのインターンシップを終了し、1名については天然物のスクリーニングを終え、ヒット化合物を見出している。実地研修に加えて、コロナ禍での人材育成のため、オンライン研修を開始する予定である。
  • 今後の創薬トレンドを考慮して、今後10年の活動戦略をアップデートする予定である。

価値に基づく医療(Value-based Healthcare;VBH)

  • VBHタスクフォースはAPAC総会においてプライマリケアの充実と持続可能なヘルスケアシステムを考える場を提供するのを目的としている。
  • デジタルがアジアのUHCを加速、タイにおけるVBHへの取り組み、アジアにおけるUHCのための価値に基づく投資、パンデミック禍データ駆動医療を考えると題して4つの講演をいただいた。
  • パネルディスカッションではアジアにおける持続可能なヘルスケアとデータ駆動医療構築の課題と将来について議論された。

    1. プライマリケアへのアクセスとコスト面での生産性向上を両立すべきとの課題を抽出された。
    2. デジタルツールへの投資がプライマリケアやUHCの充実に効果的であることを確認したうえで、データ駆動医療を実現するための制度設計、政策的後押しの重要性が議論された。
  • 製薬協では健康寿命の延伸により福祉の支え手が増加し、社会保障制度が安定化して社会の持続可能な発展に繋がるために、医薬品産業界がサイエンスの発展の担い手として好循環を生み出すことを政策提言に盛り込んでいる。ラップアップでは提言を確認し、日々進展するデータ駆動社会においてデジタルトランスフォーメーションを患者・生活者のQOL向上につなげたいこと、13のメンバーアソシエートからなるAPACが価値創造の役割を担っていかれるよう希望を述べて頂いた。

お問い合わせ先

日本製薬工業協会 広報部

電話
03-3241-0374

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