令和2年度薬価制度改革について

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2019年12月20日
日本製薬工業協会
会長 中山 讓治

平成30年度の薬価制度の抜本改革は、薬価の引き下げに偏った改革であり、製薬企業に与える影響は多大なものでした。そこで、製薬協としては、令和2年度以降の薬価制度改革においては、イノベーションが推進され、医療の質の向上に資する改革となるよう『製薬協 政策提言2019』を策定し、制度の改善に向けた活動を推進してまいりました。
今般、「令和2年度薬価制度改革の骨子」が中央社会保険医療協議会において了承されましたので、以下のとおり所感を申し上げます。

1.新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度の見直し

品目要件は、医療上の必要性の高さや革新性・有用性の評価に基づいた拡充を要望し、また企業要件については、革新的新薬の開発に取り組んでいる企業であれば、企業規模によらず対象品目の薬価が維持される仕組みを要望してまいりました。いずれの要件も改善方向への見直しとなったものの、その内容は限定的なものとなりました。本制度は真に有効な医薬品を適正に見極めてイノベーションを評価し、研究開発投資の促進を図ることが基本コンセプトになります。制度の見直しが、各企業における研究開発投資の促進に資するものかどうか、引き続き注視していく必要があると考えています。

2.治療の質向上に資する医療的価値の評価、比較薬の選定基準の見直し

製剤工夫の有無にかかわらず、治療上の負担軽減・リスク低減による治療の質向上に資する医療的価値は、有用性加算「ハ.治療方法の改善」に相当する事例として、同加算で評価され得ることが明確化され、我々の要望が一定程度認められたと認識しています。今後、治療の質向上に資する医療的価値を有する医薬品の研究開発が促進されることを期待しています。
比較薬の選定に際しては、医療実態の類似性についても総合的に勘案できる仕組みへの見直しを主張してまいりました。制度の見直しには至らなかったものの、まずは臨床的位置づけ等の医療実態が類似している事例を集積した上で検討することとなりました。薬価算定の透明性・納得性を高めるという観点から、業界としても事例集積には積極的に取り組んでまいります。

3.薬価収載後のイノベーション評価について

令和2年度の薬価制度改革においては、再算定の仕組みがさらに強化されることとなりました。このことは企業におけるビジネス全体の予見性を著しく低下させるとともに、効能追加への開発意欲低下に繋がることが懸念されます。薬価収載後に効能を追加することは、患者さんの状態に応じた薬剤治療の選択肢を増やす観点から、医療の質の向上に貢献するものであります。革新性・有用性の高い効能追加を促進していく観点からも、薬価収載後のイノベーション評価の充実については、更なる改善が必要と考えています。

製薬協といたしましては、全世代型社会保障の確立に向けて、革新的医薬品の創製のための取り組みを強化し、各ライフステージ・各疾患ステージに応じた革新的医薬品を継続して創製することで、国民の健康寿命を延伸し、社会保障における「支える側」を増やすことに貢献してまいります。そのためにも、イノベーションをより適切に評価できる仕組みの実現に向け、令和4年度の次期薬価制度改革に向けては、医薬品の多様な価値を適切に反映させるための「新薬の加算体系の再編」とともに、国民の薬価に対する納得性を高めるための「国民に分かり易い評価システムの確立」についても、検討を進めてまいる所存です。

お問い合わせ先

日本製薬工業協会 広報部

電話
03-3241-0374

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