デジタルテクノロジーの進展と医療ヘルスケアのパラダイムシフト データ駆動型ヘルスケアの実現に向けて
佐々木 隆之(医薬産業政策研究所 主任研究員)
(No.78:2021年07月発行)
IoTや人工知能をはじめとするデジタルテクノロジーの急速な進展やデータ駆動型社会の発展は、医薬品産業にもパラダイムシフトをもたらしている。
生活者や社会のデータから、くすりは何を得、どう改善されるか。患者・医療関係者のコミュニケーションにおいて、くすりはどういう役割を果たせるか。精緻な層別化を可能にするパーソナルデータの出現に対してくすりは「個」に対応できるか。患者・市民のこころや感性とどう向き合っていくか。製薬企業はデータの「ユーザー」であることを継続するのか。こうした観点に加え、予防・行動変容の重要性が増すなか、治療を担ってきた医薬品産業はどうあるべきか、産業全体で考えるべき時期に来ていると言えるであろう。
本稿では、”Pharma as a Service”の視点から、コンパニオンアプリやDigital Therapeuticsの開発・提供といった「攻めのデジタル化」の推進、そして次世代デジタルヘルスの普及やデータプロバイダーとしての貢献の必要性を論じるとともに、データ駆動型医療ヘルスケアを実現するための方策について提言する。