医薬品の社会的価値の多面的評価
中野陽介(医薬産業政策研究所 主任研究員)
廣實万里子(東京大学大学院薬学系研究科医薬政策学 研究員)
五十嵐中(横浜市立大学医学群健康社会医学ユニット 准教授、東京大学大学院薬学系研究科医薬政策学 客員准教授)
(No.76:2021年03月発行)
医薬品の持つ多様な価値を評価するには、費用対効果の視点に加え、社会的側面といったより多様な観点からの価値についても議論・検討がなされていくことが望まれる。
そこで、本稿では医薬品の多様な価値が近い将来、考慮・評価されていくことを見据えて、多様な価値の中でも、特に社会的な価値要素に着目し、それらのアウトカム指標・測定の現状および海外(主に英国等)での評価の現状について調査した。
なお、本調査における社会的な価値要素については、ISPORレポートで提唱された価値12要素の中の社会的観点の9要素をベースとしつつ、英国NICEの評価事例および新型コロナウイルス感染症を契機とした英国やカナダの評価機関の動向を踏まえ、「介護負担の軽減(主に家族介護者)」、「医療負荷の軽減(人的・物的負荷)」も重要な要素と考え、これらの2要素も検討対象に加えることとした(下図)。
さらに、本調査の中で確認することできたアウトカムの測定結果等を活用した価値の提示あるいは評価の事例についても、定量的に考慮可能な事例と定性的に考慮可能な事例に分けて紹介している。