患者視点から「医薬品の価値」をあらためて考える 創薬・育薬・活薬の好循環を目指して
田村浩司(医薬産業政策研究所 主任研究員)
(No.75:2020年06月発行)
筆者は2019年5月に公表した政策研リサーチペーパーNo.73『「医薬品の価値」をあらためて考える』のなかで、医薬品の"価値の連鎖"として「価値をつくる(創薬)」→「価値をそだてる(育薬)」→「価値をとどける/いかす(活薬)」の3つの段階を考え、「活薬」=創製された医薬品の価値を適切にお届けし適切に使用していただくことにより医薬品の効能・効果を正しく発揮させることの結果として、その価値が顕在化され最大化されると表現した(下図)。
この「活薬」のためには、製薬企業など提供者側は当該患者さんに有効・有用な「モノ(としての医薬品)」+「(必要な)情報」を適切に患者さんに届けることが、使用者側(患者さん+場合により介助者や医療従事者も)には適切な使用法を守ってお使いいただくことが、それぞれ必要となる。医学医療や診断等の技術進歩や新モダリティ等による(広義の)薬物治療法の進化などにより、"個別化医療""適正医療"への取り組みの重要性が一層増しているなかで、製薬企業でも正しい「活薬」のための活動を一層進めていく必要があるだろう。
そこで本稿では正しい「活薬」のあり方、および、その実現のための課題と解決方法等について、特に医療・医薬における患者・国民側の「情報の非対称性」に鑑み、各章においてできるだけ患者・国民側の視点に立って述べることにする。