創薬化学の側面から見た低分子医薬の将来像 低分子から中分子への広がり
戸邊 雅則(医薬産業政策研究所 元主任研究員)
(No.72:2018年05月発行)
医薬品モダリティが多様化するゲノム創薬の時代の中で、抗体医薬に代表されるバイオ医薬の市場が拡大しており、低分子医薬が中心であった医薬品モダリティの構図も変化してきている。医薬品の王道とも呼ばれてきた低分子医薬だが、近年、標的分子の枯渇や研究開発の高難易度化などから、新薬創出のハードルが益々高まっており、低分子医薬が今後どのような方向に展開するかが、広く関心を集めている。
このような背景のもと、低分子医薬の現状について、創薬化学を中心に俯瞰的に分析し、低分子医薬の将来像を探ることとした。本稿では、医薬品モダリティ、新薬創出企業、分子量、標的分子に各々視点をおいて低分子医薬の現状分析を詳細に行い、また、タンパク質間相互作用の標的分子と中分子医薬に関して新たに行った調査結果も踏まえながら、低分子医薬の将来像について論じる。