後発医薬品の使用促進と市場への影響

粕谷 英明(医薬産業政策研究所 前主任研究員)
西村 淳一(医薬産業政策研究所 客員研究員)

(No.54:2012年06月発行)

政府は2012年度の後発医薬品の数量シェア30%を目標としてさまざまな後発品浸透促進策を推進しているが、本稿では後発品の浸透促進によって、国内医薬品市場にどのような影響を与えるのか、そして製薬産業と医療消費者にとって後発品が浸透することによる影響について分析を試みた。

国内医薬品市場における後発品の浸透状況について、市場全体の視点だけでなく、薬効領域別に分けて、後発品が浸透している薬効領域と浸透していない薬効領域において、その浸透状況を比較分析することで、後発品が浸透するために重要と考えられる要因などを第一の視点として分析した。

後発品が浸透し、薬価の低い薬剤に処方が置き換わり、薬剤費が抑制されていく事で、市場成長率が鈍化していくと考えられる中、後発品の参入によって市場での競争はより厳しいものとなり、新薬創出型企業は患者ニーズに応えるために、先発医薬品の適応拡大や剤刑追加などの「改良型イノベーション」を行っていると想定される。後発品の浸透促進が、薬剤費の抑制という視点だけではなく、医療消費者にとってその他にどのような影響があるのかを第二の視点として分析した。

国内医薬品市場において後発品の浸透促進は、主に「薬価の差」という価格で促進されることで薬剤費が抑制されていく。一方で、新薬創出型企業による「改良型イノベーション」も促進させる。

後発品と長期収載品をグループに分類して浸透度の違いを分析したところ、「薬価の差」だけではなく、「剤形カバレッジ」や「安定供給」の2つの要因で、長期収載品の方が後発品より優れていることが分かった。これら2つの要因については、長期収載品の利便性を高めていると考えられる。後発品の浸透を進めるためには、「薬価の差」という価格の視点だけではなく、長期収載品と同じ水準まで「剤形カバレッジ」を拡充し、そして「安定供給」を確保していく事が、今後重要になると考えられる。

後発品の浸透促進は、医療消費者の薬剤費の負担軽減につながるばかりではなく、薬剤へのアクセスの拡大という点で大きなメリットとなる。また、後発品の浸透促進は、市場における競争を促す効果も期待され、新薬創出型企業による先発品の改良型イノベーションを促し、医療消費者により付加価値の高い薬剤を提供している。今後の後発品の浸透促進についても価格(薬剤費)という視点だけでなく、薬剤に対する「アクセス・利便性の向上」という医療消費者からの視点に立った議論が必要になるだろう。

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