製薬産業におけるR&D活動の国際化

笹林 幹生(医薬産業政策研究所 前主任研究員)
八木 崇(医薬産業政策研究所 主任研究員)

(No.41:2008年07月発行)

製薬企業が出願した特許の発明人情報を用いて、製薬産業におけるR&D活動の国際化の実態を分析した。また、大手製薬企業の研究拠点の集積が進みつつある中国上海市をケーススタディとして取り上げ、R&D拠点の立地に影響を及ぼす要因について考察した。

企業の視点で特許件数を分析した結果から、欧米製薬企業では、外国での発明が自国の発明の伸びを上回っており、国際的なR&D活動の重要性が高まってきていることが明らかとなった。一方、日本企業は、欧米製薬企業に比べて外国での発明の割合が低く、自国中心にR&D活動を行っているものと考えられる。国の視点で特許件数を分析した結果からは、米国で発明された特許件数が最も多く、自国企業である米国企業に加えて、欧州企業、日本企業が米国内でR&D活動を活発に行っており、米国が創薬研究の国際センターとなっていることが明らかとなった。一方、日本の特許件数は米国に次いで2番目に多いものの、その中心的な担い手は自国企業であり、外国企業による出願比率は10%と米国及び欧州に比べて低い結果であった。

魅力あるR&D資源を求めて進展する製薬企業のR&D活動の国際化は、企業が国を選ぶ時代に入ってきていることを意味する。このような流れの中、国際的な創薬研究センターとしての地位を目指す各国間の競争は、先進国のみならず新興国へも拡大し、激化しつつある。ケーススタディとして取り上げた中国においては、外国企業のR&D拠点開設に対する優遇制度や、海外の優れた研究者の招聘を目的とした制度及び施設等が整備されており、相次ぐ欧米製薬企業によるR&D拠点開設はその成果といえる。製薬企業によるR&D活動の"場"をめぐる国際的な競争が繰り広げられる中で、国際的な視野でR&D活動を捉えていく必要性が高まっており、日本を高い科学技術力を持つ外国企業や優れた研究者が国境を越えて集結する真に魅力ある"場"にするための環境の整備がこれまで以上に求められている。

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