国内医薬品開発における外国臨床試験の利用に関するアンケート分析
安田 邦章(医薬産業政策研究所 主任研究員)
小野 俊介(東京大学大学院薬学系研究科 医薬品評価科学講座 准教授)
木下 裕絵(東京大学薬学系研究科医薬品評価科学講座(博士前期課程))
(No.39:2008年06月発行)
国内医薬品開発における外国臨床試験の利用に係る企業側の意思決定のプロセス、及び企業が外国臨床試験を利用する際に考慮する要因と、企業が認識する規制当局が外国臨床試験を受け入れる際に考慮する要因の重要度、これらの2000年から2006年と調査時点(2008年1月)の間の変化、及び企業と規制当局の置く重要度の違い等について、アンケート調査による分析を行った。
2000年から2006年頃の企業の認識によると、企業と規制当局の外国臨床試験の利用・受け入れに係る意思決定の際には、申請医薬品の特性に加え、臨床データパッケージを構成する臨床試験の量・質、人種差や他国での承認実績等の要因が重視されていた。また、調査時点(2008年1月)の認識では、過去の承認事例・実績を重視する傾向が高まってきており、企業は他社・他剤の開発動向とともに、規制当局の行動を意識しながら外国臨床試験の利用を考慮している。回答企業全体としてみると、中長期的な経済的要因(上市後の売上見込等)はあまり重視されていない。しかし、外資系企業ではそれを踏まえた開発・申請戦略が採用される傾向が国内企業よりも高い。世界的な医薬品開発が常態化する状況において、新医薬品の臨床データパッケージの構築には、現行ガイドライン等では直接に触れられていない要因(新薬開発コストや上市後の国内マーケットなどの経済的要因等)が深く関与することを認識する必要がある。日本国民の健康への影響を十分に踏まえた国内医薬品開発の手法として、外国臨床試験の利用方法に係る検討が進展することが望まれる。