患者会比較にみる患者満足度と製薬産業のイメージ 疾患別の患者意識と医療消費者一般との違い
塚原 康博(明治大学情報コミュニケーション学部 教授)
藤澤弘美子(明治大学情報システム事務部)
岩井 高士(医薬産業政策研究所 主任研究員)
笹林 幹生(医薬産業政策研究所 主任研究員)
福原 浩行(医薬産業政策研究所 前主任研究員)
(No.36:2007年04月発行)
医療および医薬品に対する患者満足度と製薬産業に対するイメージの患者会比較から疾患ごとの患者意識を明らかにするとともに、これらと医療消費者一般の意識との違いをみるため、アレルギー、リウマチ、腎臓病、認知症、乳がんの各患者会と医療消費者一般を対象に調査・分析を行った。
その結果、医療および医薬品に対する満足度については、第一に、患者会の方が医療消費者一般に比べ、治療時および医薬品選択時に患者の意思が尊重されていると感じている傾向がみられた。また、ほとんどの患者会と医療消費者一般では、医師の治療技術とコミュニケーションに対する満足度が不可分なものとして認識され、これらは医療全般に対する満足度に影響力をもっていた。第二に、最新の医療を受けている、かつ最新の医薬品を処方されているとの満足感は全体的に強くなかった。第三に、総じて医薬品に対する満足度は医療全般に対する満足度に最も強く影響していたが、認知症と乳がんでは医薬品と医療に対する満足度がともに低かった。また、全般的に、医薬品の効果と安全性に対する満足度は結合して認識されており、医薬品の効果に対する満足度は医薬品に対する総合的な満足度に強い影響を与えていた。一方、製薬産業のイメージについては、多くの患者会と医療消費者一般で健康に貢献しているイメージが強く、健康への貢献と信頼性の高さ、親近感の強さが製薬産業の全般的イメージに影響することが分かった。
本研究の留意点として、各患者会、医療消費者一般の有効回答者数と回答者の年齢構成が異なること、認知症の患者会の回答は患者の家族によるものであること、の2点が挙げられる。また、今後の展開として、疾患の重症度などによる違いが満足度に与える影響についての新たな調査研究が必要と思われる。