公的医療保険制度が「医療アクセスの公平性」に及ぼす影響 パネル分析とカクワニ指数を用いた分析

学習院大学経済学部 教授 遠藤 久夫
医薬産業政策研究所 主任研究員 藤原 尚也
医薬産業政策研究所 主任研究員 櫛 貴仁

(No.21:2004年07月発行)

強制加入を伴う公的医療保険制度は、傷病の発生のリスクを軽減させるという保険としての機能だけでなく、低所得層やハイリスク層(高齢者等の病気を発症する確率の高い層)の医療費自己負担を軽減させることにより医療アクセスの公平を図るという機能を有すると考えられる。本研究の目的は、公的医療保険の存在が医療アクセスの公平性にどのような影響を与えるかということを明らかにすることである。具体的には医療費のGDP比と医療費自己負担の逆進性(累進性)に対して、公的医療保険制度がどのように関与しているかを分析する。

OECD諸国を対象に行った実証分析の結果、公的医療保険制度の存在は、医療費の対GDP比を引き下げる効果があることが示された。また、高所得者が公的医療保険に加入しなくてもよい、もしくは加入できないドイツとオランダを除く7カ国では、公的医療保険の存在が医療費負担の逆進性を低下させ、低所得者の医療アクセスを容易にしていることが明らかになった。

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