意識調査に基づく医療消費者のエンパワーメントのあり方

藤原 尚也(医薬産業政策研究所主任研究員)
野林 晴彦(医薬産業政策研究所主任研究員)

(No.17:2004年05月発行)

近年、患者や一般生活者(以下、医療消費者)の医療への意識は急速に高まっている。そうした中で、「患者中心の医療」を唱える動きが高まっている。それでは、医療消費者はこの「患者中心の医療」についてどのように考え、どのように行動しているのであろうか。本研究では、薬に関する医療消費者の行動モデルを構築した上で、医療消費者の病気や薬への関与と知識の現状、行動プロセス、行動プロセスに影響を与える要因について実証分析を行った。

一般生活者842名、患者会に所属する患者767名(9つの患者会)に行ったアンケート調査によると、医療消費者は「患者中心の医療」の実現を望み、医療に主体的に関与したいと考えているとともに、ある程度の知識をもっていることが分かった。また、自ら情報収集を行ったり、医師とコミュニケーションを取るなど、主体的に行動しようとする姿勢も見られた。このことから「患者中心の医療」を実現するための素地はできているといえる。しかしながら、病気の有無や世代間、あるいは患者会という準拠集団に所属しているか否かにより、医療への関与や知識、行動プロセスが大きく異なっているなど医療消費者の多様性が見出された。また、知識不足や医師への依存感、医師の診療中の対応への不満が医師との円滑なコミュニケーションの障害となっているという問題点も浮かび上がった。

また、実証研究からは関与が知識に影響を与え、知識がコミュニケーションに影響を与えると同時に、関与が直接的にもコミュニケーションに影響を与えていることが検証された。つまり、自分の健康管理や病気の治療に積極的に関与したいと考えている人ほど病気や薬の知識が高く、また、関与と知識が高い人ほど医師に対して病気や薬の質問や依頼を行っていることが明らかになった。

「患者中心の医療」を実現するための次のステップとしては、医療消費者が医療への関与と知識をさらに高め、医療に主体的に参加し、医療従事者とのコミュニケーションを促すことが求められる。つまり、医療消費者のエンパワーメントが必要となる。エンパワーメントの促進策としては、(1)医療消費者の自立、(2)医療消費者のヘルスリテラシー(医療を理解する能力)の向上、(3)医療消費者と医療従事者との情報共有と相互理解をベースにした信頼関係の構築が考えられる。

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